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 計量計測データバンク「日本計量新報」特集記事寄稿・エッセー>松本栄寿

日本計量新報 2011年2月13日 (2857号)掲載

歴史の窓「マイルストントリップ・ニューファンドランド」 

JCHC幹事 松本栄寿

太平洋海底ケーブルの陸揚げ地3000キロメートルの海底電線が北米と欧州を結んだのは、1866(慶応元)年、江戸時代である。私はその証をマイルストンに求めた。
ニューファンドランドへの道
 カナダのオタワから4時間。私は9月初め、ニューファンドランドを訪れ、この地を北米と欧州を結ぶ通信の要にした2つのIEEEマイルストン(注)を目の当たりにした。「大西洋横断ケーブル陸揚げ地」と「大西洋横断無線受信地」である。
2つのマイルストン
 当時の電信機器ニューファンドランドはカナダの東北部に位置する世界第16位の大きな島である。かつてはタラの好漁場であった。州都セントジョーンズは人口10万弱の都市で、現在でも欧州行きの主要航空会社の中継寄港地である。2つのマイルストンは、新世界と旧世界を結ぶ人間の手になる新技術の象徴である。
 マイルストンプレークに刻まれた文字は、
「大西洋横断ケーブル陸揚げ地、1866年ハートコンテンツ、ニューファンドランド」贈呈、1985年12月15日ニューファンドランド・ラブラドル支部
 海底ケーブルが完成したのは、1866年である。1857年から4度の失敗を乗りこえて完成した。陸揚げ地、ハートコンテンツはセントジョンーンズから車で2・5時間の地にある。この地からNYへは地上線である。記念館ではかつての電信機器が見られる。
「大西洋横断無線受信地、1901年ニューファンドランド・シグナルヒル」贈呈、1985年10月4日、ニューファンドランド・ラブラドル支部
 1901年マルコーニの実験地、シグナルヒルは町の中心から30分の地である。寸前にスコットランドのポルデュの送信アンテナが壊れ、暴風のためセントジョーンズのアンテナも破壊され、臨時のバルーンであげたアンテナで、12月12日、短点Sの受信に成功する。
有線か無線か
マルコーニの実験地  有線通信から無線通信の実用化まで、電気通信技術の発展は、ニューファンドランドを要として北米と欧州を結んだ。
海底電線:海底電線のプロジェクト推進者はアメリカ人、サイラス・フィールドであったが、技術を指導したケルビン卿(当時のトムソン)ほか、技術者も電線メーカーも資金もイギリスが担った。北米・欧州間3000キロメートルを結ぶ海底ケーブルの開通は、長距離有線通信時代の幕開けである。しかし、それまでに幾つもの技術的な難関に遭遇する。
 1857年の第一回敷設は失敗し、一旦開通した第3回目の1858年も、陸上と違い、予想もしない難関に遭遇する。中継器もない長距離のため信号レベルが低下するほかに、受信信号が極端にひずむ現象である。現代で言えば過渡現象論、分布常数回路の問題でもある。結局サイフォンレコーダーで弱い信号を記録して解決するが、この間、南北戦争もあったし、海底電線の計画者は何度も破産した。ようやく5度目の1866年に成功する。
(注)IEEEマイルストン:米国電気電子学会の制度で、25年を経過した技術的な一里塚を顕彰する。IEEEは会員36万人の世界一の学会で、日本人の会員も1万人をこえる。これまで全世界で約100件のマイルストン、日本でも八木宇田アンテナ、新幹線など14件が顕彰された。45×30×3cmのプレーク(銘板が贈られる。
マイルストンプレーク d無線通信:1901年12月12日、英国ポルデューからの電信を受信したマルコーニの大西洋横断無線も、英国電気学会会長は認めなかった。電離層は知られていなかったから、光と同じく直進する電磁波は地球の反対側には届かないと信じられていた。しかし、マルコーニはやってのけた。ただ、いまでもマルコーニの受信は、長波でなく高調波の短波ではないかとの疑いもある。
 それに加えて、海底電信会社は無線通信の差し止め訴訟をおこした。意外な横槍である、自分たちの既得権が崩されたくないとの思いからか。人間は新しい技術を必ずしも受け入れないことがある。それまでの受益者の反発やとまどいからである。
e地域:タラの好漁場であるニューファンドランドは、コロンブスのアメリカ発見以来ポルトガル語で「テラ・ノバ」と呼ばれ、英語で「ニューファンドランド」と訳された。1497年にイギリスの植民地となるが、自治をもとめる住民の意向から、1854年自治領になり1907年には一旦独立国になる。
  その後もカナダに帰属するか米国へかの議論が高まり1949年の住民投票の結果カナダ連邦政府の10番目の州になった。やがて対欧州のノンストップ航空機の発着場となる。第二次大戦中はここからアイスランドまで、大西洋の北部を占める重要地域として米軍が管轄し基地もおかれていた。
ニューファンドランド 無線通信:1901年12月12日、英国ポルデューからの電信を受信したマルコーニの大西洋横断無線も、英国電気学会会長は認めなかった。電離層は知られていなかったから、光と同じく直進する電磁波は地球の反対側には届かないと信じられていた。しかし、マルコーニはやってのけた。ただ、いまでもマルコーニの受信は、長波でなく高調波の短波ではないかとの疑いもある。
 それに加えて、海底電信会社は無線通信の差し止め訴訟をおこした。意外な横槍である。自分たちの既得権が崩されたくないとの思いからか。人間は新しい技術を必ずしも受け入れないことがある。それまでの受益者の反発やとまどいからである。
地域:タラの好漁場であるニューファンドランドは、コロンブスのアメリカ発見以来ポルトガル語で「テラ・ノバ」と呼ばれ、英語で「ニューファンドランド」と訳された。1497年にイギリスの植民地となるが、自治をもとめる住民の意向から、1854年自治領になり1907年には一旦独立国になる。
 その後もカナダに帰属するか米国へかの議論が高まり、1949年の住民投票の結果カナダ連邦政府の10番目の州になった。やがて対欧州のノンストップ航空機の発着場となる。
 第二次世界大戦中はここからアイスランドまで、大西洋の北部を占める重要地域として米軍が管轄し基地もおかれていた。(日本計量史学会副会長)

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