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世界の巨像・奈良の大仏

日本計量史学会会員 吉田和彦 

◇蜂の巣と漆

 軒先にぶら下がった大きな蜂の巣を、慌てて長い棒でつついてもなかなか落ちない経験を持った人は、意外と多いかと思います。

 蜂は巣をぶら下げるため強力な接着剤を使っているようだが、蜂の使っているのは、漆の実から作った接着のりだと聞いて、今さらながら驚いた。

 これは、漆研究家の工藤紘一氏から聞いた話であるが、それまでは漆というものは、樹液を漆器工芸に使うものという程度の知識しかなかった。

 漆の木はこの他に、実からは蝋や、びんつけ油などもとれ、また、木は水を吸わないので、漁業用の浮きにも使われ、多面性をもった原材料として、各地域の産業を支えて来たが、現在では中国産が約98%を占め、国産漆産業は大きな転機にあると言われる。

◇縄文からの漆文化

 正倉院に残された漆工芸品には、その頃すでに頂点を極めている技術があるとも言われ、漆が残した歴史は古く、そして高い技術を伴っている。

 福井県内の約5500年前の縄文時代遺跡から漆器具が出土している。

 同県は江戸時代から越前衆と呼ばれる、漆かき専門家を各地に送り、生産を支えて来たが、現在は消滅したと言われる。

◇盛岡藩漆の流通

 江戸時代、全国の半分以上を生産した盛岡藩の漆の流通を見ると、生産の半分は運上金として藩に納めさせ、後の半分を物産問屋の下で、荷造樽を馬や引き舟、河川船、渡海船などの流通ルートに乗せ、江戸や大坂などに送ったようである。

 これらの過程で、江戸着の目方が7%減の問屋の量目記録があり、厳しい計量管理の跡も残る。

◇揆籌

 盛岡藩(八戸・七戸藩含む)で使用された南部枡の規格を表す文書に、揆籌と書く、次のような枡の規格寸法がある。

 一合二勺五才

  方形 三寸二分

  深さ 一寸

 二合五勺

  方形 三寸七分

  深さ 一寸五分

 揆籌、数えて計ることを意味するこの文字の枡は、まだ見つかってない。平べったくて、容量も普通より約27%も多く入り、幕府容認の盛岡藩特有の枡である。

◇計数単位「盃」

 盛岡藩特産の漆は取引の段階では、目方だが、藩の運上金納入記録は盃(杯)が使われている。

 この地方では、霊前などに供える「一杯めし」は二合五勺で、山盛一杯の意味も含まれると言われており、これを普通の二合五勺枡に山盛一杯の精米を計ってみると、約25〜6%多くなる。

 品物や計り方で差も出るが、間違いなく南部領内の蝦夷的な民俗慣行から来た、数えて計る単位「盃」である。

 しかし、藩の取り決めとして余りにも大雑把であるので、次のように使用細目を決めている。

「生漆」計量の場合

(1)一盃の目方三二〇匁

(2)百盃の目方三二貫

(3)一駄 百盃入れ一つ

(4)一盃の値段九百文

「精製漆」計量の場合

(1)一盃の目方百六・七匁

(2)百盃の目方一〇貫六六七匁

(3)三百盃の目方三二貫

(4)一駄 百盃入れ三つ

 これらから見ると、精製漆の比重は、三分の一になり、体重は三倍になるなど、計量ばかりでなく、民俗学的にも興味深い、南部枡と関わり深い、単位、盃である。

 
昭和初期の漆荷造樽
   

(以上)

 
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