ホーム計量関係機関および団体の行動の基本2011年・関係団体の行動の基本(2011年一覧)>日本計量振興協会

2011年・関係団体の行動の基本

計量計測にもイノベーションを

(社)日本計量振興協会会長 飯塚幸三 


  新年にあたり謹んで新春のご挨拶を申し上げます。
 昨年の年頭ご挨拶でも申し上げましたが、わが国の社会・経済は政権交代以降の混乱状況から未だ抜けきらず、世界的な景気後退からの回復が見通せないこともあって、引き続き先行きへの不安が解消しないまま推移しています。その上、昨年後半には近隣諸国との緊張した事件が続発し、政府の対外政策への不信感も一挙に増大してしまいました。これまでに指摘されてきた少子高齢化と地球環境問題に加えて、緊張する国際関係が新たな影を落とし、国民全体の閉塞感はますます増してきているように思われます。

 社会にも、経済にも、そして技術にも何らかのブレークスルーが求められています。そのために自民党政権時代からイノベーションの促進を図るための種々の政策が採られてきましたが、いまだに目に見える成果を挙げるまでに至っていません。新政権による事業仕分けが一時人気を集めましたが、私見かもしれませんが所詮過去の失敗捜しであって、それだけでは未来を切り開く政策は生まれないでしょう。
 ではどうしたらよいかといえば、やはり何らかのイノベーションを追求し実現していくほかないのではないか、そしてそれは日本の現在と将来の姿、立ち位置に沿っており、かつ我が国の特性が十分に発揮できるイノベーションでなければならないでしょう。「日本は資源がないので、モノづくりで生きていくほかない」は定説になっていますが、製造業では既に近隣諸国との住み分けが進行しており、単なる「高品質」だけでは勝者となれず、日本でしかできない素材、モジュール、デザイン、そしてシステムだけがグローバル市場で主役になり、あるいはこれからの主役として期待されています。そのような視点で計量計測分野を眺めますと、我が国独自のモジュールやシステムの開発への努力が、全体としてはほかの製造業分野と比べて弱いのではないかと懸念されます。知的基盤の整備が重点施策となった90年代後半には計測機器産業の競争力強化も重視され、この分野の研究開発が重要なプロジェクトとして採り上げられた時期もありましたが、その後景気の波に揉まれて忘れ去られたような感があり、この分野での我が国の研究開発力の低下が懸念されます。社会の高齢化、地球温暖化などへの対策に関わる新たな計量技術については今後多くの機会があると思われますので、新たな研究開発の展開を期待したいと思います。

 一方では、長期的な景気低迷により各分野でコストの削減が優先課題となっており、社会的インフラなどの保全・維持に必要な地道な活動は軽視される傾向にあります。そのため日常的な計量のような、安心安定な社会を支えるシステムへの投資は低減の一途をたどり、最低の限界をも越しているのではないかと危惧されます。私ども協会の会員が関係する計量法に基づく規制の実施システムはそのような傾向の典型的な事例であり、社会システムとしての必要性の視点から抜本的に見直していくことが望まれます。

 以上に年頭に当たっての一般的な所感を述べましたが、このような情勢の中でこそ、社会経済と産業活動の基盤としての正確な計量の役割について国民全体の認識を高め、適正な計量がいつでもどこでも維持されるよう啓発活動を充実することが大切であり、私ども計量関係団体の責務は以前に比べて大きくなっているものと自覚しております。私どもの日本計量振興協会について申せば、設立以来、伝統的な計量に関わる活動を主体に、一貫して計量・計測の意義の理解と啓発、計量標準とそのトレーサビリティならびに計量法に関わる人材育成と情報交流などに関わる事業を進めてまいりました。今後も引き続き上記の啓発・研修活動のほか、計量管理業務の受託、JCSSに基づく校正業務を着実に実施するほか、関係方面のご支援・ご協力により、計量の新たな展開に向けた課題に取り組んでまいりたいと考えております。本年も役職員一同、一層充実した活動をしてまいる所存でございますので、引き続きご指導・ご鞭撻のほどをお願い申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。

 
↑ページtopへ
ホーム計量関係機関および団体の行動の基本2011年・関係団体の行動の基本(2011年一覧)>日本計量振興協会