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2008年・関係団体の行動の基本

標準物質を取り巻く最近の動き

(財)化学物質評価研究機構理事長 近藤雅臣 


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 明けましておめでとうございます。謹んで新春のお慶びを申し上げます。

 我が国における標準物質の歴史は、戦前から供給されている日本鉄鋼協会の鉄鋼標準試料、大阪工業試験所の化学標準物質などに遡ることができます。しかし、その種類は限られたものであり、十分とはいえないものでした。その後、経済の発展、分析機器の普及に伴い、アルミニウム分析用標準試料、セメント標準試料、石油標準試料など各産業や技術分野ごとにそれぞれのニーズに応じて個別に発展してきました。

 当機構におきましても計量行政審議会の答申を受け、昭和50年2月に標準ガス、昭和62年2月に金属標準液及びpH標準液の検査制度をそれぞれ開始し、計量標準供給の一翼を担うことになりました。その後、平成5年11月に新計量法が施行され、当機構は、標準物質(濃度)に係る指定校正機関として通商産業大臣(現経済産業大臣)から指定を受け、計量法計量標準供給制度(JCSS制度)に基づく標準物質の供給を行ってまいりました。

 現在、指定校正機関として一酸化窒素標準ガス、一酸化炭素標準ガスなどの無機標準ガス、ジクロロメタン標準ガス、ベンゼン標準ガスなどの有機標準ガス、pH標準液、亜鉛標準液、カドミウム標準液などの金属標準液、ふっ化物イオン標準液、硝酸イオン標準液などの陰イオン標準液及びトルエン標準液、ビスフェノール標準液などの有機標準液を含め113物質の特定標準物質を製造し、これを用いて登録事業者の依頼により特定二次標準物質の濃度値を校正(値付け)しております。さらには登録事業者の担い手がなく供給できない物質については、当機構から直接ユーザーに供給しております。

 また、当機構では平成17年度から2年計画で経済産業省からの委託事業として「中小企業知的基盤整備事業(環境分野における標準物質の実態調査及び開発研究)」を実施いたしました。これは、環境計測において必要とされる標準物質を調査し、我が国の環境保全政策の動向、安全・安心な国民生活の構築など総合的な観点並びに社会的ニーズを勘案し、国家標準物質として開発が急務な標準物質を選定し、開発するというものでした。選定した標準物質は、有機混合標準ガス、陰イオン混合標準液、金属混合標準液及びホルムアルデヒド標準液であります。これらの物質について調整方法、測定方法、保存安定性の評価並びに校正の不確かさの評価について研究を進めました。その成果として土壌汚染対策法対応有機12種混合標準ガス、室内空気汚染対応有機7種混合標準ガス、陰イオン7種混合標準液、金属元素15種混合標準液及びホルムアルデヒド標準液の5つの標準物質を開発しました。現在、これらの標準物質について計量行政審議会標準部会において特定標準物質としての指定を受けるための準備を進めているところです。指定の後、JCSS制度に基づく供給を予定しております。

 近年、国民の安全・安心に関する意識の高まりから環境分野はもとより、食品分野、臨床分野における標準物質の開発・供給が強く求められるようになりました。しかしながら、これらの分野においては標準化(標準物質の開発及び標準測定法の開発)への活動がようやく始まったばかりといえます。そこで、経済産業省では、計量行政審議会の下に計量制度検討小委員会を設け、さらにその下に検定・検査制度のあり方等を検討する第1ワーキンググループ(以下WGと記す)、量目制度のあり方等を検討する第2WG及び計量標準・標準物質の供給等を検討する第3WGを設置し、新しい計量行政の方向について検討してまいりました。

 私どもの業務に密接に関係する第3WGでは、計量標準の開発・供給体制、JCSS制度、計量証明事業の改善、特定計量証明事業の改善などについて検討を重ねてきました。

 とくに、計量標準の供給体制については、先に述べた臨床分野の標準物質のように未だ国家計量標準が開発・整備されていない場合に海外の計量標準や民間の計量標準を用いることにより迅速に計量標準を供給する枠組みを創設するということが盛り込まれました。これを「国家計量標準の指定の範囲の拡大」といい、SI(国際単位系)にトレーサブルかそれと同等な計量標準あるいはSIにトレーサブルでなくとも整備が必要な計量標準を経済産業大臣が指定する制度です。これは、校正品目が十分ではないといわれているJCSS制度を拡充する制度として有効に活用され、国民の利益につながることを期待するものです。

 当機構は、ISO/IEC17025及びISO Guide34に基づく運営、新たな標準物質の開発等を通して高品質なJCSS標準物質の供給に努めてまいります。

 終りにあたり、本年もご期待に沿えますよう精進、努力いたしますので、変わらぬご指導とご支援をお願い申し上げますとともに、皆様のますますのご繁栄を祈念して年頭の挨拶といたします。

(以上)

 
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