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日本計量新報 2016年7月17日 (3111号)

増えない国内市場と計量計測機器産業の行き方

ハカリを含めて計量計測機器の多くは電子センサーと電気による演算処理がおこなわれるようになった。1965(昭和40)年に存在したハカリの製造事業登録事業者は、2016(平成28)年現在では当時の100分の1ほどにまで減っている。かつて通産省が製造事業登録事業者を公開していた内容と現在の事業者の実際を比較するとそのようになっている。

 地域の有力なハカリの事業者はユーザーニーズにあわせた一品物の製造などをおこなうことがある。既成の製品では用途に応じることができない分野への対応力と地域密着を強みとして確かな足場を築いている。用途への対応は質量センサーと架台そして電装関連の部品の組み合わせによってなされている。ハカリが電気システムになっていることによって対応がしやすい。

ハカリ製造の事業者が大きく減った主な要因はハカリが機械式の装置から電気式の装置に変容したことによる。大きな質量を精密かつ微細に測定できるようになった電気装置としてのハカリは、同じことをするのに機械式のハカリの100分の1ほどの製造費で済ますことができるようになった。ハカリの需要を10倍に増やしたときに100分の1の生産費で対応するとここに矛盾が生じる。製造登録しているハカリ事業者が減ったのはこのためである。

不思議な話をする。1999427日にだされたG7共同声明は「日本経済に改善の兆しはあるものの短期的な見通しは不透明。成長回復まであらゆる景気刺激策が必要」とある。2016年夏の時点はこの状態にある。大量の資金を投入して景気を刺激しても日本のGDPは増えない。上場企業と優良企業の業績が良いために正規の社員の賃金は増えている。そうした企業に非正規として勤務する人々あるいは普通の企業の勤務者の賃金は下落している。400万円の年収があればよいほうでウッカリすると200万円程度になってしまう。GDP6割を消費が占めるのが日本などである。日本ではその消費が弱含みで推移しているために経済が低迷を脱することができない。

計量計測機器産業に目を転ずると、新機軸の需要創造型の商品が登場しないと市場は横ばいか後退を示す。日本にはあって海外にはない商品によって海外市場を掘り起こすことが企業業績の拡張につながる。あるいはこれまでにない生産費によって商品をつくってこれを日本と世界市場に売り込むことである。企業はそれぞれに構想をもって活動している。

 

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