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日本計量新報 2016年6月19日 (3108号)

計測し予測しても対応が困難な現在の都市構造

 東電福島第一原発事故による放射線被害を恐れて東京都から熊本市に乳飲み子を連れて移住した人がいた。知人のつてを頼っての熊本市移住であり20113月のことである。

 20164月に発生した熊本地震はその人が暮らす借家を住めないほどに破壊した。新たな住まいを借りる資金を親が出した。東京に住む人がこのように放射線を恐れるなら福島に住む人は恐怖のあまりに死んでしまう。

 福島第一原発から遠く離れれば安心だと思う心理はよいとしても放射線への知識の足りなさを笑ってみていたら、移住した先で地震に遭遇して死にかけた。的外れだが夏目漱石は『草枕』で「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい」と書いた。智が足りなくて熊本へ移住して心は平穏であったがこの地が活断層であると判ったら何処へ逃げればいいのか。「人の世は住みにくい」と思うのだろうが、熊本市へ移住した意地があるから窮屈でもここで暮らさなくてはならない。

 震度7の地震が熊本県益城町を20164142126分と416125分と2度襲った。熊本市では震度6弱と震度6であった。熊本地震による直接の死者は49人ほどである。

  1999924日早朝、熊本県北部に上陸した台風18号によって発生した高波は、熊本県不知火町の松合地区で満潮時の水面からの高さが2m(干潮時は5m)の堤防を越えて12名の死者を出した。

 接近した台風18号により付近の気圧が下がった結果、大潮の満潮に重なったこともあり、海面が大きく持ち上げられて高波が発生し、堤防を越えて民家を襲った。気圧から計算される高波は50<CODE NUMTYPE=SG NUM=5516>から60<CODE NUMTYPE=SG NUM=5516>程度であるものの、不知火町松合地区が湾奥部にあること、台風の進路の関係で風が沖合から海岸に向かって吹いたことによる吹き寄せ効果が重なったため、堤防を越える高波が発生した。

 死者数を単純に比較して自然災害の規模を推し測ってはならないが、熊本県ではこのような被害があった。

 日本の国土に人が住むとなると条件の良いところにだけ家屋を建てることはできない。海辺に、崖下に、崖の上に、川べりに、風の通り道の丘の上にと悪条件下にある住居は少なくない。悪条件下にあって自然災害から逃れることは難しい。

 雪が降れば遭難し足を滑らせれば転落死する山に人は登る。冬のマッキンリーは気圧が低下してヒマラヤの7000m峰に匹敵する環境になる。最大瞬間風速845mの記録が日本山岳会科学研究委員会の大蔵善福氏が設置した気象観測機器に残っている。高所登山は常に危険と背中合わせだ。山で死ぬ人の数を海水浴で死ぬ人の数が数倍上回る。交通事故死者は10年で30万人の都市が消えるほどであった。年々減ってきているが、それでも年間約4000人を上回る死者をだす現象が続いている。危険とはなんであるのかわからなくなる。

 観測・解析することで地震などの災害の予測ができるかもしれない。しかし、大きな地震に耐える構造の建物をつくれるとしても、それ以上の地震が襲うかもしれない。建物が密集し人が集まって住む都市では災害が大きくなる。計測し予測しても現在の都市構造では対応が困難な状況が広がっている。

 

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