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日本計量新報 2015年6月7日 (3059号)

迂闊な計量法の変更がもたらした計量行政の実施の萎縮

大阪府と大阪市の計量行政組織はそのままに継続する。大阪の都構想は大阪市民の住民投票の結果、否認されたからである。提案した元大阪府知事で現大阪市長が登場したときにその物言いに選挙民は支持を与えると予測され、大阪都構想が否決されるまではこの人に勢いがあり、国会でもこの人を代表とする政治団体が勢力を大きく伸ばした時期があった。民主党の大失敗からこの政党を支持した人々はこの先、行き場を探さなくてはならない。二人代表制の二人とも大阪都構想が崩れた途端に辞任し、民主党から鞍替えした人が代表になった。
 自衛隊の軍事行動を拡大することを審議する国会の代表質問があって安倍晋三内閣総理大臣は、先の戦争は正しかったかどうかと問われて、はぐらかすばかりで答えなかった。勝てば官軍であり連合国の言い分がそのまま通るのが戦争終結の覚え書きではあっても、日本軍が中国、台湾、朝鮮ほか南方の国々を占拠してここに行政権を敷いていたことは事実である。連合軍の名の下に日本の都市を焼き尽くし、東京では木造住宅が密集する下町のぐるりと巻くように焼夷弾を投下して非戦闘員である一般の人々、婦女子、騒人を焼き殺したことは正義ではない。原爆の投下による殺傷のどこにも正義はない。この原爆投下がその後の対ソビエトのための牽制の意味を含んでいた。その米国は都市爆撃と原爆投下の不正義を認めさせなければならないが、安倍首相が日本軍のアジアへの進行を正義であると言ってはならない。間違っていたのだ。
 中国と韓国の首脳の日本への悪意の行動をどのように理解し、対応したらよいのだろう。ともに政府への不満を日本非難によってかわす意図は十分であり、中国にあっては覇権主義がこれに重なる。韓国の経済は中国への依存が大きい。とはいえ現在の韓国政府の行動は子供じみている。従軍慰安婦の問題で大阪市長は失言をし、風船が萎むようにその勢いを減じた。関係する政党も現在は国会議員数が残っていても、衆参両院の選挙があれば数は現在の半分になる。
 朝日新聞の従軍慰安婦問題のねつ造記事は日本の国益を大きく損ない、新聞への信頼を揺るがした。このねつ造と誤報を利用して日本攻撃したのが韓国であり、その片棒を担ぐのが中国である。先の戦争における日本の侵略行動は明白であり、そこにいくつかの理屈をつけ、理由があったとしても他国の主権を侵す侵略行動であり、間違った行動と戦争であった。中国と韓国には戦争の責任を認め、謝りもし償いをしてきた。だからこのことの蒸し返しには応じることなく、毅然とした態度でそのことを述べ、これからどのような協力体制を築いていくのかを協議しようと言えばよい。
 ねっちり型は政治家に向かない。大阪市長も安倍晋三総理大臣もその心理状況を表現すると軽い躁の状態にある。安倍首相が野次に対して強い言葉でこれを制し、批判には声高に反撃する。それは良いとしても聞かれたことに答えないのは困る。この二人のテンションの高さ、そして言葉の使い方は明らかに軽い躁の状態である。安倍首相は自衛隊の軍事行動の仕方を大きく変え、米軍がしていたことと同じことができるようにするのだろう。米軍はもはや世界の憲兵の役割を担うだけのお金がないと述べているから、日本の自衛隊の行動様式がこれを補うために変更されると思うのが普通である。
 気分がいつでも高まっている軽い躁の状態では自分が考えていることは正しい、そしてその思いは実現されるはずだと思う。これが安倍晋三首相と大阪市長の状態であった。現政権は小選挙区制の特性によって、2割に満たない人の投票によって実質3分の2を超える国会議員を当選させた。安倍首相は数の力に慢心して行動する。第1次安倍政権を投げ出したときの安倍首相の今にも消えてなくなりそうなその様子は、軽い鬱(うつ)の状態を超えていた。腸疾患があったためだ。鬱になると何もしたくなくなる。そして意思を貫くことも、計画を実行することもできなくなる。今の安倍首相の自衛隊の軍事行動への思いは、元気活発な軽い躁状態が繰り出すことことがその特質といってよく、何でもできるということが妄想されているのだろう。
 初めに述べたように大阪府と大阪市の計量行政の体制の変更は基本的にはなかった。計量行政が計量器の指定製造事業者制度を取り入れたために、メーカーによる自己検定方式が広く普及している。行政機関の主たる行政事務がハカリの定期検査の実施になっているために、大阪府の中に大きな部分を占める大阪市が実施するこの事務は規模が大きい。東京都の場合には、かつては300人規模の人員で計量器の検定とハカリの定期検査ほかを実施していて、この人員規模は旧計量研究所(現在は産業技術総合研究所の一部門)の人員規模に匹敵した。
 その東京都の計量検定所の人員は80名ほどであり、ハカリの定期検査の多くを東京都計量協会を指定定期検査機関に指定して、実施している。軽い躁の状態にあり、言語単純にして明瞭である場合には選挙民の支持を得て、物事を変えてしまうことができるのが、日本の選挙の状態である。その日本の計量行政は機関委任事務を自治事務に変更するという計量法の迂闊(うかつ)な変更によって、ハカリの定期検査の実施を主な内容として計量行政の実務の実行が大きく後退している。社会の基礎となり基盤となる計量行政の実施の大きな後退はそのまま社会の安定と平和をじわじわと揺るがす。

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