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日本計量新報 2015年4月12日 (3052号)

美味いモノがわかっているデパ地下の食品感覚

魚の美味しさを測定する器械が開発された。長崎大学の研究者と大和製衡が共同開発したその測定は、体脂肪計に似た原理によって魚の脂肪の量を求める。現在の販売価格は数十万円であるからスーパーや鮮魚店が使う状況にはないが、漁協関係者、養殖事業者などが餌やりのための指標として使うことができる。マグロ、ヒラメ、ブリ、鯛、鰻などは養殖事業が盛んであり、出荷時はもとより、それを育てる途中でも良い餌やりなどのために、このような測定器を利用する場面はある。
 モノの内容を測定するためにはさまざまな手段や方法がある。魚の場合には、美味しさと連動するのが身の堅さ、身体や眼の色や艶(つや)、臭い、ピー・エイチ値などがあり、長崎大学の研究者は実際の方法として脂肪の在り方を選んでいる。これは美味しさの表示ということよりも養殖事業のための管理機器としての実用が期待されるということだろう。美味しさを1つの測定対象から求めることができればよいのだが簡単なことではない。魚市場や鮮魚店の目利きは長年の経験と磨き上げた官能によって検査に代わる行動をしている。
 果物、野菜ほか食品の味や鮮度の品定めは、計測の側からはこれから取り組むべき対象である。果物の美味しさは糖度計を用いて表示するようになっているが、本当の美味さの要件となる酸味や渋みなどを総合したものにはなっていない。果物の熟れ具合を色で見ることもなされている。表面のデコボコや、空洞や、色むらも同じようにして測定し選別している。直径などの大きさ、目方や重さとしての質量、ほかの測定がなされ、この分野における計測器と計測装置、選別装置、それと組み合わされる包装装置は規模の大きな産業になっている。
 ここではそこら辺のスーパーマーケットの食品売り場で買い物をして騙(だま)されたと思うことがたまにあるのに対して、デパ地下にはそれがない。京都市の食料品市場の錦では出店する店舗がよく変わる。錦の近くにある百貨店の地下の食品売り場には錦市場に出店している店舗も入居しているという事情があるとはいえ、買って損したと思わせるようなモノは置いていない。京都市の多くの人々は地元の商店街に行かないでデパ地下で買い物をする。デパ地下の食品売り場は美味いモノの品質を確保するしくみを宿しているといってよい。美味いモノということは曖昧(あいまい)であり、これを定義することは簡単ではないにしても、デパ地下はこのことがわかっており、ある水準を超えて美味いモノを提供する場になっている。

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