計量新報記事計量計測データバンク会社概要出版図書案内
2014年12月  7日(3036号)  14日(3037号)  21日(3038号)
社説TOP

日本計量新報 2014年12月21日 (3038号)

ロードセルと制御技術の発達とイノベーション

ノーベル賞が産業の実用領域での発明をも「人類に最大の利益をもたらす発明」とするようになったようであり、青色の発光ダイオードの開発で功績のあった赤崎勇(名城大教授)、天野浩(名古屋大学教授)、中村修二(米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授)の3氏の日本人が同時にこの賞を受けた。発光ダイオードによって、長寿命で効率的な代替光源が実現。青色光は既存の赤と緑のダイオードと混合して白色を産業的に手に入れ、同時に小さな電力によって人は必要な光を得ることができたのであり、このことはボタン電池を使っても超寿命な「懐中電灯」が実感させる。
 力と質量測定の分野におけるストレーンゲージ式のロードセルの普及は著しい。これまではこの分野の測定と縁がなかった分野が測定の領域として広がっている。ロードセルがこの分野に占める割合つまり占有率は9割に達する。箔を折り曲げるなどしたときに抵抗値が変わって、流れる電流量も同時に変化するので、これをとらえて折り曲げるなどの作用としての力を測定するのがストレーンゲージであり、これを延び、圧縮、曲げなど要素として機構にしたのがロードセルである。
 ストレーンゲージとロードセルを発明したのは米国人である。この技術が日本に入って測定器として産業になったのは1960年代の後半から1970年代である。力の測定、これを質量に置き換えて測定する方式の、精密度は100分の1程度から始まり、これが500分の1ほどになり、やがて1000分の1になり、これがさらに3000分の1になって、その先に進んでいる。抵抗箔の改良、これを貼り付けるなどして構成される起歪体の構造の工夫などに負う。ここで聞こえないようにそっと言えばストレーンゲージとロードセルの発明と改良はノーベル賞に値する。そうした事実はこの委員会が知らないか、知っていても認識が十分でないか、あるいは一般向けでないということから、これにノーベル賞が与えられないのであろう。
 力の測定分野における最近の技術開発の重点は、力と連動するさまざまな量の計測のための応用演算と制御そして表示の領域にあるようだ。ロードセルによって力を計測してトルクの値を求める機器の開発がされている。測定にあたって間違った指示が与えられないようなしくみを組み込んだ質量測定器も同様だ。液体の高速かつ精密で確実な充填機器はロードセルとすぐれた制御機構によって実現している。はた目には変哲のない機器であってもそこでは計測と制御分野の発展によって、次世代の技術領域に突き進んでいる。イノベーションはさまざまな概念によって語られているが、小さなイノベーションは計量計測分野で確実に進行している。これらのことが基礎となり集積して大規模で全世界を巻き込むような技術革新としてのイノベーションがおこる。

※日本計量新報の購読、見本誌の請求はこちら


記事目次社説TOP
HOME
Copyright (C)2006 株式会社日本計量新報社. All rights reserved.