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日本計量新報 2014年2月9日 (2998号)

計測は人の生活とモノの製造などすべてにかかわる

 製造業といってもその範囲は広い。農産物や魚介類の加工業も製造業である。計量計測機器を製造する工業も製造業である。日本の製造業は国内総生産であるGDPの2割程度である。製造業は2次産業といわれてきた。3次産業の商業などサービス業のGDPに占める割合が2次産業を追いこしてから日が経ち、この勢いは衰えない。サービス化する経済のなかにあって工業がどのように機能していくのか、これを問うことを怠ってはならない。
 2次産業の全盛期の1970年代におけるこの分野の輸出比率は2割程度であり、この割合はいまでも2割程度である。日本から海外に輸出しないで現地で生産し現地も含めて全世界に販売する状態が伸展している。ある計測機器の専門メーカーの国内従業員は500名程度であるが、中国にある工場は1000人規模であり、韓国などでも工場を運営していて、海外の従業員は国内の2倍以上に達する。生産規模ということでも国内の開発や研究体制に対して海外の生産規模ははるかに多い。日本で研究開発をして海外で生産する方式が一般になっていて、ある分野では国内企業が現地で研究開発して現地で生産する方式になっているところもある。
 日本の人口は現在の1億2000万人ほどから次第に減る。第2次世界大戦が終わったころには7000万人ほどであった。江戸時代から明治時代に移行する時期には3000万人ほどであった。人口がどの要素で決定付けられるかというと社会の総生産による。江戸期は食糧生産が人口を規定した。食糧と他の生産物とを交易によって交換することができ、日本は食糧のエネルギー総量の5割を海外から輸入している。この状態はこれからもすすむことになりそうだ。エネルギー総量という捉え方ではなく生産総量の輸入総量の金額の比率とするとこれは違う数字になり、日本の農業は頑張っていると思わせる。日本の人口は漸減して30年か50年ほど先には7000万人ほどになっても不思議ではない。
 人口が減ると人の口が減るから、消費する食糧の総カロリーは減る。国民消費は米国の場合にはGDPの6割ほどの割合である。日本はこれに近いが、中国はまだ4割ほどであり、経済を賑わしてきた欧州などはこの割合が日本と同じように5割ほどになっている。豊かになると個人消費が高まることになっている。
 日本は海外からの安い輸入品に対抗するために同じ商品をつくる製造業では人件費を含めて諸経費を削る。人件費が抑えられると個人消費は盛り上がらない。日本の20年もつづいたデフレの要因に、海外からの安い輸入商品の流入ということがあり、この要因はすぐにはなくならないのでデフレ解消は別の事柄によってなされることになる。
 海外に設置した工場で、人と産業と社会に必要なモノが安く、そしてしっかりとつくられる。壊れない良いモノ必要なモノを安くつくるとそれは売れる。商品とはそのようなモノであろう。人が必要とするモノを考え出していくこと、それを壊れないように、安くつくること、そして上手に売ること、によって商売が成立する。人が必要とするモノを考え出していくことと上手に売ることは図りごとである。壊れないようにまた安くつくることは製造技術である。図りごとと製造技術のなかに計測技術や意図に沿って動く計測機器がおりこまれ、所期の性能を実現することを何と表現するのが適当であろう。計測は人々の生活の場面にもかかわり、モノの製造の場面にもかかわり、科学や学芸の分野にもかかわり、広くこれが機能する状態にあるのが望ましい。7000万人の人口でもその規模は小さくはない。十分すぎるほど大きい。問題なのは急激に人口が減ることによって発生する社会と経済と文化などの諸問題である。

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