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日本計量新報 2012年3月25日 (2910号)

国内総生産と仲良く停滞する計量器産業の内実

 米国経済はいま足踏みから後退傾向にあるとはいっても国内総生産(GDP)は15兆億ドルほどあって日本の5兆億ドルに対して3倍ほどの規模がであり、これまで右肩上がりの伸びを示してきた。中国は2010年に日本を超えており、この先も多少の伸びの減少が見込まれても米国を追いかけてGDPは駆けのぼる。米国経済は増刷するというカンフル剤で誤魔化しが効くという要素があり、中国はバブル経済の様相にある。しかし日本の経済も国家財政に取り返しのつかないほどの赤字をかかえ、降って湧いたような円高に打ちのめされているから、米国や中国にたいして優位な状況はなにもない。
 日本のこの間の実質GDPの推移を振り返ると次のような状況にある(内閣府統計データ2011年より)。

1996年467兆3456億円、97年474兆8027億円、98年465兆2917億円、99年464兆3642億円、2000年474兆8472億円、01年476兆5351億円、02年477兆9149億円、03年485兆9683億円、04年497兆4407億円、05年503兆9210億円、06年512兆4519億円、07年523兆6858億円、08年518兆2309億円、09年489兆5885億円、10年511兆3016億円、11年507兆4787億円。
 計量器の生産の推移をはかりを事例に拾うと2010年の生産出荷状況は次のとおりである(日本計量機器工業連合会まとめ)。
天びん=▽生産金額92億900万円(対前年度比150・9%)増加
▽生産数量約12万8000台(同129・7%)
台はかり=▽生産金額59億8300万円(対前年度比117・8%) 増加▽生産数量約13万2000台(同102・5%)
商業用はかり=▽生産金額80億5300万円(対前年度比100・8%)横ばい▽生産数量は25万8000台(同101・7%)
家庭用はかり=▽生産金額67億8100万円(対前年度比90・0%)減少▽生産数量約242万4000台(同97・1%)
工業用はかり=▽生産金額325億4300万円(対前年度比106・4%)微増▽生産数量約4万3000台(対前年度比141・9%)
 輸出は、187億4600万円(対前年比126・6%)。

 国内におけるはかり産業の生産は、1996年から1997年ころの900億円がピークとなりそれ以後はこれを超えることがないままに推移している。この間に日本企業の韓国や中国などにおいての海外生産が進行しているので、日本のはかり産業が衰退しているということではない。
 はかり産業は計量法の規定によって取引と証明分野のはかりが2年に1度の定期検査の実施が義務づけられていたり、そうでない場合でも整備などメンテナンスを要する機械であるために、この方面の業務はハカリ企業にとって少なくない売上金額を示すことになる。自動車産業における車検などの整備事業に似た様子がある。
 日本の計量器産業は分析機器や環境関係の測定器は国内総生産(GDP)を上回る伸びで推移してきているというものの、こと国内生産に関係してはGDPと同じ動きを示している。はかり分野の体重計は、体重測定からその機能を応用して体脂肪や体組成といったことに変換表示するなどして需要を伸ばしてきたものが、足踏み状態から後退状況に変わっている。体重を計ることから健康を計ることへ、そして健康を増進する方策へと進路をとって新しい価値を提供する動きがでている。
 はかりは普通の人は体重計や商業用の料金はかりとしてい意識してしまうが、それは生産される数量として見るとその通りである反面、生産金額からとらえると、はかりの過半が生産設備としての内容をもっている。貨物輸送における荷物料金が規定はあってもその通りに実施されない不合理があるなか、荷物料金規定の荷物寸法と荷物重量(質量)を精密に測定するはかり装置が普及してきている。こうしたはかりの多くは計量法の規定では「自動はかり」に分類されるために「非自動はかり」にだけ計量法の検定と検査の規定がかけられている関係で、自動はかりは重要な料金機能を働かせていても枠の外におかれている、という状態がここには存在する。

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