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日本計量新報 2010年8月8日 (2833号)

計量思想の普及とは、計量計測の最新知識を提供すること

数多くの計量協会は、その定款に、協会の目的と使命として「計量思想の普及啓発」を掲げている。「計量思想の普及啓発」とは、どのようなものをいうのか。
 かつて、計量行政に関係する人の多くは、「計量思想の普及」を「計量法を国民に知らせること」と理解していた。「計量思想」を「正しく計ること」であると考える人も数多くいた。これは、戦前の、物をごまかして計ることが横行していていた時代ならではの考え方である。街頭のゴム紐売りが、モノサシに当てて何回と数える際に、ゴム紐を繰り出さないでごまかしていたのは有名な話である。他にも、枡に入れたお米をすくいだして規定量を計らないなど、計量のごまかしが頻繁に行われていたから、「計量思想」とは「正しく計ること」であると考えてもおかしくはなかった。
 しかし、現代では、計量する際に計り方等をごまかさないことは、当然のこととされるほど社会通念となっている。
 一言に「計量思想の普及啓発」といっても、社会に必要とされる事柄は時代と共に変化する。臨機応変に対応し、適切な内容をとらえなければならない。


 「計量思想の普及啓発」のための活動方法も、変化している。
 「計量思想」と「メートル法の推進」が一体となっていた時代には、計量協会が、街頭宣伝に、当時はまだ珍しかった自動車を何台も連ね、<RUBY CHAR="幟","のぼり">などを掲げて盛大に繰り出した。
 保守層の頑固な反対をものともせずにメートル法の普及宣伝に果敢に取り組んだエネルギーは大したものであった。こうした運動の結果として、戦後の日本に急速な産業発展がもたらされた。 現在は、計量記念日に駅頭などで計量のパンフレットを配布するのが一般的になっているようだ。

 それでは、現在、本当に必要とされている「計量思想の普及啓発」活動とは何か。基本となるのは、「計る」ことに関係する最新の情報や知識を、広く人々に提供することだ。
  例えば、計量計測業界の現況として、「不確かさ」という概念が、国際度量衡委員会(CIMP)の主導で、計測値の信頼性の表現法や算出法の統一が推進されるなかで登場し、校正や製造の現場で使われるようになってきた。こうした情報に触れて、人々が計量について考えることができるようになるとよい。
 「計量の知識」と「計量の技術」と「計量器そのものの情報」そして「計量の社会的な仕組みに関する情報」をくまなく提供することで、計量に関するより高い知識と教養を身につけるように仕向けることである。
 計量への知識と教養は「計量の知恵」を生み出す。国民が、計量計測の知識を手軽に入手できる状況をつくることが、計量思想の普及啓発の前提になる。

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