計量新報記事計量計測データバンク会社概要出版図書案内
2009年12月  6日(2800号)  13日(2801号)  20日(2802号) 
社説TOP

日本計量新報 2009年12月20日 (2802号)

計量行政職員の身分と協会検査職員の身分

地方の計量協会に勤務し、指定定期検査機関の業務に従事してハカリの定期検査および計量証明検査をしている人の心に、計量の世界はどのようなに映るのだろうか。ハカリの検査の仕事は嫌いではないけれど、この先ずっとこの仕事だけをしなければならないとなれば、男の生き甲斐としては十分ではないと思う人がいるかもしれない。
 ハカリは検査しなければ機能しているかどうかわからない。管理されないハカリの不合格率は高い。そのハカリで計量された商品の値段は、決して適正ではない。正しいハカリで正しく計量することが、世の中の平和につながる。多くの場合、ハカリは定期検査を受検する前に事前の調整をしていて合格の条件を確保しているから、定期検査で不合格になる割合は微少である。事前の調整が計量法の規定でどのように取り扱われるのかは別にして、これがなされなければハカリの定期検査の不合格率が現在の10倍になることは間違いない。
 ハカリの定期検査は、所在場所検査と、学校講堂や公民館などに持ち込んで検査する集合検査があり、いずれにしてもハカリを検査して定期検査の規定に適合しているか、合否の判定をする。検定公差の2倍の器差が定期検査の公差であり、これを基準にしてその他の合格用件を確認し、合否の判定をする。
 同じ業務を地方公共団体の計量行政職員も行っている。彼らの目に映る計量の景色は、基本的に指定定期検査機関の職員と同じである。同じ仕事をしていても、地方公務員という身分に守られている人々と、行政費用削減を目的にして業務を指定定期検査機関に移したその場所で業務に従事する者の身分の不確かさは、比較にならないほど違う。
 税収入が減った分、指定定期検査機関に割り当てられる費用も削減するといったことがなされれば、同じ業務を検査職員は時間当たり安い賃金で実施しなければならなくなる。時間当たりの賃金を同一にして定期検査機関のハカリの定期検査を実施するとなると、検査個数を減らすことになる。こうなるとハカリの定期検査漏れが生じることになる。
 こうしたことがすぐに現れるのではないにしても、長期に及んでハカリの定期検査を実施する指定定期検査機関に割り当てられる費用が削減されれば、検査員の状況が極度に悪化するか、あるいは定期検査の実施漏れとなり、実施率が低下するのは間違いないだろう。
 指定定期検査機関職員の賃金と労働環境などの処遇は、同じ業務を行う地方公共団体の職員と同一化、さもなくば1割ほど低い状態にとどめることが至当である。そうでなければ、指定定期検査機関のハカリの定期検査実施に対する意欲が落ち、検査の質も劣化する。
 指定定期検査機関に所属してハカリの定期検査を実施している若い職員としては、経験を積んで計量の知識を身につけ、技術を錬磨した後にはそうした能力を活かすための道筋がつけられていればいいと思う。どんなに努力しても検査実施という業務の枠から抜け出すことができないのであれば、これは組織・構造の欠陥である。

※日本計量新報の購読、見本誌の請求はこちら


記事目次本文一覧
HOME
Copyright (C)2006 株式会社日本計量新報社. All rights reserved.