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日本計量新報 2009年8月9日 (2785号)

知りたいことを知ることが計測のはじめである

数える、並べる(揃える)、比べるといったことは物事を知る方法である。計測もことの結末は物事を知ることであるから、数える、並べる、比べるといった事柄のなかには計測と同じことが含まれていると考えることができる。
 物質の状態を示す波形を比べることによって、分析機器などは計測機能を発揮する。地震予知の分野では、地殻が衝撃に対応して示す波形の変化を読み取って地震予知をしようとする真剣な試みがなされている。地震予知とは変化を読み取ることであり、それは比べるという計測であるから、地震予知とは計測によって成り立つといえる。
 複雑にみえる物事も事象を分けたり(分類したり)、ある事柄を除外して残った純粋な要素を数えたり、並べたり、比べたりすることによってその本質を突き止めることができる。
 森や林の健康度を測る要素としてそこに住む昆虫や動物の種類や数を求めることがある。禁猟したために鹿が増えて高山の花畑を食い荒らし、かつてのお花畑がクマザサで覆い尽くされたという事例もある。かつてはオオカミが鹿などを捕っていたことにより均衡を保っていた。その後、オオカミは絶滅したが、人の猟によって再び均衡を保った。禁猟になった後には鹿が高山の草花への脅威となって均衡が破れた。大菩薩峠のヤナギランなどのお花畑がクマザサに変わったのに続いて、霧ヶ峰高原のニッコウキスゲが鹿の餌食になって、いつ絶えるかという危機的状況にある。
 部品の個別重量の比例関係から計数ハカリが成立し、体に含まれた脂肪の割合が体内を通電する電気量に比例することを利用して体脂肪計ができあがっている。
 この2つの事例を通じて、計測の可能性の大きさを知ることができる。複雑な要素のなかの一部や複数を引っ張り出して比べることで、それまで計れなかった物事を計ることができるようになる。これから開発される計測機器の多くはおそらくそのようなものであろう。人の生活や産業活動、そして科学技術分野には知りたいことが沢山ある。知りたいことは計測によって実現する。知りたいことを知ることが計測のはじめである。

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