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日本計量新報 2007年9月9日 (2690号)

知識経済社会では人の知恵の発揮の度合いこそがコストである

情報社会の到来にともなって知識経済社会になったことをアルビン・トフラーが説いており、日本でも早くから堺屋太一氏が知恵のもつ価値の大きいことを評して「知価革命」などと述べている。大前研一氏は人の能力として現代社会に求めれらるのは「構想力」であると言い、それは企画し説明し人を納得させ行動させて企画を実現する能力であると説く。限りなく大きな構想力なり知恵は人の能力であり、この能力が大きいことは非常な価値をもち、それは物事を成就させる費用を極限に小さくする。すなわち能力はコストである。コストとは日本語では費用であり、人や企業の生産や取引などの経済活動にともなって発生する金銭である。千人力とは千人の力が集まったほどの強い力のことや、千人の助けを得たくらいに力強いことであるが、「知価社会」では知恵ある人は千人の力に軽々と相当する。
 マーケティング(marketing)とは、顧客ニーズを的確につかんで製品計画を立て、最も有利な販売経路を選ぶとともに、販売促進努力により、需要の増加と新たな市場開発を図る企業の諸活動のことであり、やられて当たり前のこのことが実際には行われなかったり、したつもりで機能しないことが少なくない。企業活動とはマーケティングであり、マーケティングができないところは滅ぶ。
 自動車はその需要層が大衆化されてから感性の商品でありつづけている。機能あるいは性能としての差は日本の自動車メーカーの間に大きな差はないといえる状況にあっても外観が与える印象の心地よさを含めてわずかの差が売れる車と売れない車となり、メーカーの業績を決める。
 計量計測機器産業においてもマーケティングは企業の生き死ににかかわる。どんなに高性能であったり多機能であっても需要が小さすぎるマーケットに対して開発と製造・販売の費用がかかりすぎれば、たとえその商品がある程度売れたとしても企業は採算割れを起こしてしまう。費用の掛かり方に関しては、技術能力があまりにも乏しい人員が開発を担当すると何年経っても商品は完成しない。技術のセンスが優れた人は凡人が1年かけてやる仕事を1カ月で仕上げてしまうことなどざらにある。10人力、100人力、1000人力というのは知識経済社会においてこそ実際にあり得ることであり、人の能力こそ最大のコスト(費用)である。的外れでない商品を手際よく開発し流通の仕組みをよく考えて手際よく売る能力がマーケティング能力である。こうした能力に秀でているか劣っているかということが企業にとっての最大のコスト(費用)である。情報社会と連動する知識経済社会にあっては、人そのものがコストであるのではなく、その人が知恵を発揮できるかどうかということ、すなわちその人の能力こそがコストであるのだ。


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