What's New計量新報記事計量計測データバンクOther Data会社概要出版図書案内リンク
2007年8月  5日(2686号)  12日(2687号)  26日(2688号)
社説TOP

日本計量新報 2007年8月5日 (2686号)

物象の状態の量をあらわすには「量=数×単位」でなければならない

物象の状態の量とは、長さ、質量、時間、電流、熱力学温度、物質量、光度などのほかに、面積、体積、速さ、加速度、密度、周波数、力、圧力、熱量、仕事率、湿度、電流、電圧、抵抗などさまざまであり、現在規定されている単位では用が足りない分野も無限に広がってきている。
 計測とは物象の状態を計ることである。それは科学技術と一体であり、科学技術を支える技術である。計測は物象の状態の量をあらわすことであり、そのためには数と単位を用いなければならない。
すなわち、量=数×単位、という関係を何時でも備えていなければならない。
 ある計量人は、このことがニュートンの第2法則である「物体に作用する合力は物体の質量と物体の加速度の積に等しい F=ma」に形が似ているとして「測定の第2法則」と命名して、量は数と単位によってできあがっており、計測に関する定義や公理にも通じることを強調している。
 単位は人間が決めている物事である。長さの単位のメートルの定義は、科学性を強調するために地球の子午線の長さから割り出されていたこともある。その昔、王様の身体の部位の長さによって決めていた国もある。地球の自転によって1年を決め、その割合から時間の単位としての1秒を決めていた時代もあった。現在は原子時計によって時間の定義をしており、原子時計の精度が地球の自転の周期換算の時間の定義よりはるかに優れている。このため単純に時間の進行を地球の自転に伴う年の計算や気象に当てはめると夏至や冬至や春分の日がずれてしまうために、地球の自転にはゆらぎを観測して何年かに1度の割合で時刻に1秒を加算したり減算したりして調整することが行われている。これが「うるう秒」であり、似たようなことで暦(こよみ)では4年に1度、2月に1日を追加して調整している。
 計量の単位を単純に「単位」と呼び、国際的な取り決めとして国際単位系(SI)があり、世界の主要各国がこの計量単位を用いるように努めている。国際単位系(SI)は科学技術の基礎である計量のその単位の国際的な取り決めであり、メートル法の精神を体現してより良い単位に発展させるべく地道な努力がつづけられている。科学の基礎の計量のその単位は、科学の共通語である。単位をあらわす名称とその記号には規定があり、どの国でもそれに従うと科学の世界はもとより生活の分野でも計量の単位や記号の表記によって意味を理解することができる。国際単位系(SI)は世界の計量の単位の共通語である。そのような中アメリカ合衆国では長さの単位にヤードを用い、質量の単位にポンドを用いる習慣が残っているので、速さがマイルで表示されるという状態にある。
 日本では質量の表現に100キロ、速さの表現に100キロということが多い。この表現は「量=数×単位」という「測定の第2法則」に反しているから、うっかりすると速さ(メートル毎秒 m/s)を質量(キログラム kg)と取り違えてしまう。日本語あるいは日本人の言語表現は何でも縮めてしまう傾向が強いので、計測科学の視点からは具合が悪い。困ったことである。
 計量単位(単位)の接頭語と接頭語が表す乗数は次の通りである(計量法別表第4(第4条関係))。
 ヨタ(10の24乗)、ゼタ(10の21乗)、エクサ(10の18乗)、ペタ(10の15乗)、テラ(10の12乗)、ギガ(10の9条)、メガ(10の6条)、キロ(10の3乗)、ヘクト(10の2乗)、デカ(10)、デシ(10分の1)、センチ(10の2乗分の1)、ミリ(10の3乗分の1)、マイクロ(10の6乗分の1)、ナノ(10の9乗分の1)、ピコ(10の12乗分の1)、フェムト(10の15乗分の1)、アト(10の18乗分の1)、ゼプト(10の21乗分の1)、ヨクト(10の24乗分の1)
 ともあれ物象の状態の量を表現するときには数量のあとになからず単位を付加しなければならない。


記事目次本文一覧
HOME
Copyright (C)2006 株式会社日本計量新報社. All rights reserved.