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日本計量新報 2007年3月11日 (2667号)

計量管理の神髄と計量士の登録更新制度の新設の動向

国家資格である「計量士」制度に更新制度を設けようという経済産業省の意向に対して(社)日本計量振興協会の計量士部会(松本克一部会長・同会副会長)は、平成19年2月23日に神戸で開いた第5回全国計量士大会の席上において、この方向に基本的に合意した。
 同大会の議長の役目を担った金子一榮氏が計量士登録更新制度に関する議論のまとめとして、次の3つの内容でまとめて会場に図り満場一致で賛同があった。(1)計量士の登録更新制の導入に賛同する。(2)更新期間は、10年が適当とする意見もあったが、5年が適当であるとする意見が多数であった。(3)更新時に研修を義務付けることは適当であるが、その内容などについては、十分に検討することが必要である。
 計量士有資格者が、計量法の規定に基づいて適正計量管理指定事業所で業務を行ったり、はかり定期検査の代行検査などを実施する場合には、当該の自治体などに届け出なければならないが、こうした届け出が全国の自治体に共通してなされていないなどがあるため、実際に計量士業務を実施する計量士の実態の把握ができないという事態になっている。
 将来的に計量士制度を計量法が利用していく場合に、自治体などで関係の計量士の実態を掌握できないようでは困るので、計量士登録の更新制度によって活動する意思の明確な計量士を把握しようということである。また登録更新制度によって計量士の関連知識と技術能力の向上を図ろうということでもある。計量士制度の登録更新制度は計量法本法への書き込みは不要であり、政省令などの改正で対応できるとの見解があるので、更新と組み合わされている研修の内容が固まれば実施に移されることになりそうだ。
 計量士の登録更新制度と研修に関係しては、(社)日本計量振興協会計量士部会の「計量士の在り方調査委員会及び資質向上調査委員会」委員の横尾明幸氏は、計量士の研修はあくまでも計量士による自主的なものであることが望ましいことを強調している。
 計量士制度はハカリの定期検査や計量証明検査に関係して代行検査とその一形態として適正計量管理事業所制度に付随して規定されている。計量士の業務は計量管理であるとはいってもこれは計量法の規定上では、ハカリの定期検査の代行検査でしかない。事業所においてはハカリの管理はさまざまな計量計測機器の管理とも連動するものであるので、ハカリの管理だけをして他のものを管理しないということはあり得ないから、適正計量管理事業所は計量管理の優れた事業所であるということはできる。
 計量制度がさまざまな行政事務を民間に移管する場合に計量士をこれに絡ませることが考えられることであり、こうしたことは「計量士の職域拡大」としてとらえられている。第5回全国計量士大会の席上において、計量士登録更新制度とあわせてこのことが議論され、「計量士の資質向上及び職域拡大については、一朝一夕に解決するものではない。社会・経済情勢や技術の発展などの外的要因も大きいものがある。しかし変化に対応した自己研鑽や組織的研修を通して、また制度改正などを通して、一歩づつ息の長い取り組みを行うことが、資質向上と職域拡大に繋がっていく」ことが満場一致で確認された。
 計量管理技術者としての計量士の職務は、計量法上の規定のハカリの定期検査の代行検査やそれに付随する管理だけではなく、計量計測を広く利用活用するための活動である。計量管理という広い意味での計量計測技術の利用活用のなかにハカリの管理が含まれているという形式で計量管理を実施している計量士が大勢いるという事実を社会に周知して、計量士の地位の向上につなげていくことが望まれる。
 適正計量管理事業所制度はハカリを始め計量器の自主的な管理の実施が、計量法におけるハカリの定期検査などに匹敵するということを認めさせることによってできあがったものである。計量管理に計量法のハカリの定期検査の免除という非常に消極的な法が与える便益は大事なことではあっても、事業所の経費節約という面では取るに足らない程度のものである。計量管理はそれに勝る便益を事業所にもたらすものであり、それこそが計量管理の神髄・本質でもある。


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