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流れに価値を加える

(株)オーバル 谷本淳社長に聞く

聞き手は高松宏之編集部長

vol.3

日本計量新報 2014年1月12日 (2994号)7面掲載

校正ビジネスを拡大したい

ーーサービス分野の展望はどうでしょうか。

修理ビジネスは減ってきている

先ほども申しましたが、機器の構造の変化や技術の進展で、修理ビジネスは減少傾向にあります。しかしながら、30年前、40年前に製造した流量計が今でも現役で稼働していますので、しばらくは現状のまま推移すると見込んでいます。

計測器の校正は正確計量の前提

そこで、われわれは、校正ビジネスを発展させたいと考えています。計測器の校正は、正確計量、そして製造の不良を少なくしたり、公正取引の基礎、前提となる重要なものです。ぜひ、この分野を伸ばしていきたいと思います。

JCSS校正ビジネスも伸ばしたい

JCSS校正ビジネスも伸ばしていきたいと考えています。水などへ校正分野を拡大したりすることも検討しています。
 現状は、校正ビジネスの売上は平行線で、伸びていません。

法的な位置づけが必要

計量計測は安心安全の基礎ですから、政府などが法的な整備のなかで、きちんと位置づけていただかないとなかなか進展しないと思います。
 日本の計量法は、消費者の関連ではいろいろ規制をしていますが、いわゆる企業間取引(BtoB)に関しては、ほとんど制限をかけていませんから。

4社協同プロジェクトでシナジー効果

−−計測器メーカー4社が共同で「BLUEDGE(ブルーエッジ)」というプロジェクトを進められていますが。

「BLUEDGE」は、それぞれ得意分野が異なる計測器メーカーである東京計器(株)、長野計器(株)、(株)チノー、そしてオーバルの4社が協業し、海外の水市場の開拓を主な目的として業務提携を進めるというものです。2011年7月に合意して以来、やれるとことから提携を進めています。最終的には、4社の力を合わせたトータルシステムのパッケージができればよいと思っています。
 現状は、お互いの製品を補完しあうとか、お互いの営業拠点を相互利用するなどのシナジー効果がでています。

水素ガス流量計を世界で初めて開発

−−将来を見据えた新事業ではどのようなものがありますか。

燃料電池の水素ガスの流量計測

新エネルギーとして燃料電池があります。この燃料電池へ水素ガスを充填する際の流量の計測が重要です。
 燃料電池自動車は、圧力70MPaで充填された水素ガスで動きます。この水素ガスを車に充填する際に使用する水素ガス流量計を、オーバルは世界で初めて開発しました。

2015年までに100カ所の水素ステーション

日本が燃料電池の開発では先端をいっていまして、経済産業省は2015年までに100カ所の水素ステーションを設置する目標を定めています。それにあわせて自動車会社も廉価な燃料電池車を開発します。
 現在、水素ステーションは24カ所あって、そのうち17カ所が稼働していますが、そのなかの8カ所のステーションで使用している流量計は当社の製品です。
 オーバルは、石油用の流量計から出発して、現在は天然ガス用の流量計が伸びています。そして将来は水素ガスの流量計測を見据えています。

コリオリ流量計が適する超高圧型コリオリ流量計

オーバルが世界で初めて開発した超高圧水素ガス用の流量計はコリオリ流量計です。先ほども申しましたが気体は圧力や温度の変化で体積が変化しますので、圧力補正、温度補正が必要になりますが、質量で測定するコリオリ流量計では補正の必要がありません。ですから質量で直接測れるコリオリ流量計が超高圧の水素ガスを測定するのに適しているわけです。
 オーバルの横浜事業所は高圧ガスの認定工場で、高圧ガス用の機器の製造は得意としています。

水素ステーションの普及には問題も

水素ガスの場合、まだ問題があります。高炭素鋼や特殊鋼の一部(炭素含有量の多い材質)のものは、水素を素材中に吸蔵して素材がもろくなるということが起きます。この現象を水素脆性といい、水素脆性を起こした素材は割れやすくなります。ですから、使える素材が制限されるわけです。水素ステーションの普及にはまだまだ解決しなくてはならない問題があります。安全性の基準を低くする規制緩和には問題もあります。

大型の燃料電池が普及するのでは

私はむしろ、大型の燃料電池が先に普及するのではないかと思っています。現在の発電手段としての風力や太陽光発電は、発電量が天候に左右されて安定しませんね。また火力発電も電気を貯めることはできません。このような状態を補完し、電力の供給量を安定させる手段として燃料電池は適していると思います。

−−ありがとうございました。

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