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グローバル展開で国際競争に勝つ

長野計器(株)依田 恵夫 社長インタビュー

聞き手は高松宏之編集部長

vol.2

日本計量新報 2014年1月1日 (2993号)第1部4-5面掲載

センサのグローバル展開進める

長野計器は、センサのグローバル展開を進めています。当社の、アメリカ、日本、ヨーロッパの3拠点を軸に展開させます。

独エルモス社、米SMI社と業務提携

当社は、2013年11月に、ドイツのドルトムントにあるアナログ・デジタル混合信号半導体メーカーの大手であるElmos Semiconductor AG(エルモス社)と、その100%出資子会社で、アメリカのカリフォルニア州ミルピタスにあるMEMS型圧力センサ素子の製造メーカーであるSilicon icrostructures Inc.(SMI社)との間で、ASICおよびMEMS型圧力センサ素子などの共同開発・供給における業務提携を締結しました。
 エルモス社は、従業員数が約1000名、2012年実績の総売上は1億8000万ユーロ(約234億円、SMI社との連結)で、車載用途向けに半導体を開発・設計し、自社生産ができる優位性を背景に、世界の自動車メーカー、Tier1サプライヤーと取引があります。同社は年間2億チップを超える半導体を生産しています。
 SMI社はエルモス社の子会社であり、車載用途(タイヤ圧モニター用センサではトップ)を中心に、医療機器、空調の分野までの幅広い市場で実績があります。

ASICと低圧領域の圧力センサ素子でシェア拡大を

今回の提携で長野計器は、重要な2つのコア技術である、ASICと低圧領域の圧力センサ素子を補完できることになります。これにより、新たなシェア獲得に向けたアプローチが可能になるとともに、両社から戦略価格で製品調達が可能となることから、車載事業などの収益構造の改善にもつながります。
 また、車載用途で世界の自動車メーカーと取引があるエルモス社を通じて、新規案件などの獲得率が向上することに期待しています。
 エルモス社側にとっても、当社の圧力センサメーカーとしての実績や、完成品の設計力、生産力を得ることで、同社の中長期のビジネスポートフォリオに大きく寄与できると期待しています。
 今回の提携で、長野計器のグローバル戦略は大きく前進することになります。

ヨーロッパ市場、アメリカ市場に供給

センサには調整(トリミング)という作業が必要ですが、その作業が提携することによってばらばらではなく同じ1つの作業になってきます。また同じ部品を使いますからつくりかたも同じになってきます。日本、ドイツ、アメリカで同じ工程でつくれるようになります。集約できますのでコストが下がります。このセンサを、ヨーロッパ市場やアメリカ市場に供給していきます。このセンサは自動車以外にも使えます。

コアの部分は長野計器から発信

コアの部分、コア部品については長野計器から発信します。アッセンブリに関してはどこでもできるようになります。ヨーロッパはヨーロッパの、アメリカはアメリカのお客様のニーズに合った形に仕上げるのは、それぞれの拠点でおこないます。

新しい分野に事業展開

成長戦略を構築

当社は、20年程前に、会社をどう伸ばすかということで「革新プロジェクト」をつくって、事業展開の計画を立て、それに基づいて事業を推進してきました。
 しかし、ここにきて、世の中の動きが相当変わってきました。日本企業の生産の海外移転、為替の変動による不安定化、異常気象による災害の勃発など、さまざまな変化が起きています。
 こういう状況の変化に耐えられる企業を構築していく必要があります。当社は「成長戦略プロジェクト」を立ち上げ分析していましたが、その結果が出ました。長野計器はこれをもとに、来期からの計画を組んでいきます。
 世の中には医療関係、ロボットの分野、食品関連、燃料電池などの水素エネルギー、光ファイバーなどによるインフラ整備、安心・安全関連の産業など、伸びている業種が数多くあります。こういった業種が今後どのくらい伸張するのか、またそれに対して長野計器がどのくらい参入できるのかということを検討しています。そして、これに対してタイムリーな製品を供給していきます。

開発費を削らない

長野計器の開発費は年間8億円ほどです。毎年これだけの開発費を投入しているからこそ現在の長野計器がありますし、今後ともこれ以上の開発投資が必要であると考えています。
 開発が止まってしまえば商品は陳腐化してしまいます。常に開発を続けるということが大切ですので、開発費は削ることができません。
 開発には時間がかかりますが、製造業にとってはこれが基本ですので、きちんとやっていきたいと思います。

IT改革を進める

新しい成長戦略を推進するためには、組織改革や教育の推進も重要です。

新しい基幹システムを開発

IT改革を進めています。効果的効率的に事業を推進するために、クラウドの活用も含めて新しい基幹システムを開発しています。現時点で8、9割稼働していますが、まだきちんとした運用体制として構築されていませんので、早く運用体制に移行できるようにしていきたいと考えています。
 こういったシステムをきちんと活用すれば、仕事のスピードが飛躍的に上がり、仕事の幅も広がりますから、全社員が自分の手足の延長としての道具として活用できるようにしていきたいと思います。

私はiPadの愛用者

私自身は、タブレット端末のiPadを発売当初から使っています。出先にいても自分のオフィスにいるのと同等に仕事をすることができます。電子メールを迅速に処理し、必要な資料をあらかじめインストールしておくなり、通信で呼び出すことができれば、その場で仕事を前に進めることができます。プレゼンテーションにも重宝しています。お客様に直接画面を見ていただくことができます。
 会社全体をみてみると、まだまだITシステムやタブレット端末を活用しよう、使いこなすということにはなっていません。現場ではまだ発想がそこまでいっていないと感じています。

効率的に仕事を進められる

たとえば動画をタブレット端末に入れておいてお客様に見せれば、お客様はすぐに理解してくれます。これは一例ですが、教えるとそうかと納得するのですが、自らの発想で使うというところまではなかなかいかないですね。
 バレーボールの試合をテレビで見ていましたら、監督がリアルタイムでタブレット端末を操作して状況を分析し、作戦に活かしていました。ああいうことができるんです。これを活かさない手はありません。
 これは工場でも同じです。データを共有して利用できれば、たとえば、ああこの部分がボトルネックになっているので、これを解決すれば仕事が前に進むなということがすぐにつかめます。
 これまでは情報をメールで配信したりしていましたが、今度は、自ら情報を見にいくということになります。したがって自発的な意志・意欲が必要になります。
 今回のグローバルな技術協力の推進も、こういう形で進めていくことになると思います。
 ITシステムはうまく使えば、仕事が増えれば人も増えるという事態を避け、効率的に仕事を進めることができます。

仕事のやり方が変わる

仕事のやり方が変わってきます。従来は仕事のノウハウは先輩から盗めというようなところがありましたが、今後は情報の共有化、共通化が重要になってきます。
 製造現場での改善というのはたくさん出てきます。ところがデスクワークの改善というのはなかなか出てきません。それは仕事のノウハウを個人がもっているからです。こういうノウハウを共有化していかなくてはなりません。

自ら考える能力を身につける

人材教育にも力を入れていきます。ITシステムはあくまで仕事を効率的に進めるための道具ですから、分析能力など、使う人の能力を高めていかなくてはならないのは当然です。
 今までのやり方を分析して、自分はどのように仕事を進めていくのか、そのためには組織はどうあらねばならないのかということを、自らの頭で考える能力を身につけていく必要があります。

技を磨け

−−国際競争力を高めるためにはどうすればよいでしょうか。

研究機関との共同も進める

現在は、研究機関や大学とのコラボレーションも増えています。社員を研究機関に派遣し、日本の最先端技術を取り入れて、研究開発を進めていきます。今後も強化していくつもりです。

中国に勝てる体質にする

競争力の強化ということでは、ドイツに学ぶ必要があります。ドイツは世界で一番、時間単位の賃金が高い国です。ワークシェアリングしていますから、労働時間は短いですが、労働単価は高いんです。しかし、これで中国に勝てる体質を構築しています。日本もこうなってくれば強くなります。
 円安になってきましたから、再び日本国内に工場がもどる動きが出てきています。基幹産業が国内に戻ってくる可能性もあります。

技を磨け

また、現在は円安ですが、先ほども言いましたように、再び円高になっても国際的な競争に勝てるように、技術を磨いていく必要があります。私は「技」と言っているのですが、2014年は、各部門に対して「技を磨け」ということを言っていこうと思っています。

個人のノウハウを共有化

現場に技はあります。人から人へ継承されています。これもできるだけ個人のノウハウではなく共有化し、なかなか難しいんですが機械でやれるものは機械による作業に移していこうとしています。ただ現在はまだ微妙なノウハウがデータ化できないですね。
 機械化し自動化すれば技術流失の防止にもなります。操作方法を模倣することができても、中身はわからないわけですから。

効率もアップ

圧力計の自動調整機があります。人が調整をしていたときには、1人の人が調整できる圧力計の数は、1日に約100個ぐらいでした。これが自動調整機だと、1日に300個ぐらい調整できます。
 先ほども言いましたが、どんな仕事にも改善の余地はまだまだあります。こういうことを常に進めていかなければ、世界市場のなかで勝っていくことはできません。

−−ありがとうございました。

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