計量新報記事計量計測データバンク今日の計量計測情報ニュース会社概要出版図書案内リンク

安全・安心と持続可能な社会づくりに貢献

鎌長製衡(株) 鎌田長明社長インタビュー

聞き手は高松宏之編集部長

vol.3

日本計量新報 2012年8月5日 (2928号)4-5面掲載

海外はタイと韓国で生産

昔の設計図が参考になる

ーー海外生産についてはどう考えられていますか。

海外生産においては、日本のやり方やレベルをそのまま持ち込むのではなく、現地の需要にあわせて、現地で設計して生産するというやり方が必要になってきます。
 それとの関連で、最近、当社の昔の設計図が非常に参考になるので、勉強をしています。かつての日本の技術レベルや社会環境は現代の東アジアと通じるものがあるので、当時、非常に苦労して作成した設計図がとても役に立っています。したがって、倉庫いっぱいにある昔の設計図は当社の重要な資産なのです。これを5年がかりで全部スキャンして電子化しました。重要なノウハウの蓄積ですから。
 昔の製品は丈夫で壊れないのですよ。30年前、40年前に生産したトラックスケールがまだ稼働しています。

海外の日系企業に提供

当社は現在、タイと韓国で生産しています。韓国は、電気・電子に関する技術が優れていますので、高い技術の製品を低価格で生産することができます。タイは、加工技術が非常に向上していますので。これらの工場で生産した商品は、主に海外の日系企業に提供しています。

正しい計量の構築は使命

ーー現在の社会に関してお考えになっていることをお聞かせください。

時代に合った事業を進める

国内市場は今後縮小していきますので、今までと同じことをやっていたのでは、売上も下がってきます。したがって、時代に合った事業を進めていく必要があります。
 日本の産業環境を考えると、先ほども申しましたが、質の高い協力会社が数多くあることから、この高い技術力を活かした製品をつくっていく必要があります。
 また、円高は逆にいうと、海外へ行けば円が強いということでもありますから、グローバル化を進展させ、韓国で生産した製品を、東南アジア市場に投入するなど、三国間取引の活発化をはかっていく必要があります。
 そういう意味では、経済発展が著しい東アジア、東南アジア市場に、高い技術力を持った日本が位置しているということは幸運であるともいえます。

人材の育成が大事

そのなかで必要なことは人材を磨いていくことです。いかに質が高い人材を集めて、日本ならびにアジア、そして世界へ、よいサービスを提供していくかということです。そこを追求できれば、明るい展望が見えてくるのではないかと思います。

規制緩和のもと、違法行為が

憂慮しなければならないこともあります。自由化の方針の下で規制緩和が進み、プラス面がある一方で、計量の関係では違法行為も起きていることです。
 共存関係という意味での自由化はよいことですが、そのことは違法行為をやってよいということではありません。取引の安全・安心という面でみると、計量というのはお金を計っているのと同じです。したがって、適正な計量が実施されないと、日本全体がおかしくなってしまいます。

日本の計量機関には司法警察権がない

日本の計量検定所には司法警察権がありません。一方、韓国や中国の計量当局は司法警察権を持っています。ドイツの計量当局にも同様の権限があります。たとえば、バイエルン州では年間100件以上の違法計量に対する摘発があり、罰金を徴収しています。一方、日本ではどうでしょうか。摘発や刑罰を科した事例があるでしょうか。
 最近の貿易統計で、ひょう量が5t以上のはかりが526台(2011年)輸入されています。われわれの経験からいえば、これらの多くは取引に使用されていると思われますので、推測ですが、そのなかの8割くらいは違法に使用されているのではないかと思っています。こういうことを放置していてよいのでしょうか。

是正の声上げることが大事

メーカーや販売店が協力して、違法行為の是正の声を上げていくことが重要であると考えます。それが日本の計量のレベルアップにも繋がりますし、消費者からの信頼も厚くなり、ひいては国際的な地位の向上にも繋がってきます。
 正しい計量がおこなわれる世の中をつくっていくことは、われわれの使命であると思っています。

−−ありがとうございました。

<<前へ[1 2 3]


記事目次/インタビューTOP
HOME
Copyright (C)2006 株式会社日本計量新報社. All rights reserved.