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新しい技術で新しい需要を

(株)チノー 苅谷嵩夫社長に聞く

聞き手は高松宏之編集部長

vol.2

日本計量新報 2015年5月3日(3055号)2面掲載

サービスと営業を再編成(2)

現場主義で(2)

しかし現実には、われわれのつくった計測器は現場で使われているわけですから、サービスや技術的なフォローがどうしても必要になってきます。したがって、ここをきちっとしていくことで、そのなかから新しい提案や新商品のヒントをいただいたりすることが可能になります。このあたりが最近弱くなっています。従来、サービスもビジネスだからということで、独立して稼げるように別会社にしてきた経緯があります。これはこれでよいのですが、われわれの場合、新製品をつくって販売したり新技術を投入して、現場のお客様とコミュニケーションを持ち、適確な情報をフィードバックすることが重要です。サービス会社は規模が小さいですから、そのなかですべての技術をフォローしていく、あるいはお客様の困りごと、問題点をサービス会社だけで把握していくとなると難しい面が出てきます。

サービス会社を合併

どうしても、サービス、技術と営業を一体にして進めないとお客様のご要望を満たし、お客様が抱える問題を本当に解決する営業活動ができません。
 そこで、もう一段上の活動をめざすために、サービスと営業をあらためて再編成して、2015年1月にサービス会社を本社と合併しました。

あらゆる工程を自分たちでやってみる

本当の需要を見極める

新しい技術と新しい製品を開発するためには、お客様がもっている本当の需要を見極める必要があります。われわれの仕事は、お客様が何かをしようとしたときに、それを実現するための計測としてのインフラをきちっとそろえて、結果を出していくことです。
 そのターゲットの中心は、当社の場合は得意としている「温度」です。温度に関しては、センシング、コントローラーやサイリスタ、レコーダ、コンピュータシステム、ソフトウェアなど、お客様の需要をかなえる手段を全部もっています。

ソフトウェアは社内資産

このソフトに関しては、当社が必要とするソフトはグループ会社「チノーソフテックス」がすべて開発しています。これからはますます重要さがましているソフトウェアは基本の資産として社内に残していくという方針からです。従来は外注でしたが、そのために専門のソフト会社をつくりました。これもうまくいっています。

丸投げ外注はまかりならん

藤岡の計装工場では、シャーリング(せん断加工)で大きな板金を切り出して、それをフレームにして溶接することから、その先には塗装もあります。そして、配線、配管をする。これを全部自前でやっています。「外注しないんですか」とよく聞かれますが、「あらゆる工程を一度はすべて自分たちでやってみる」というのがチノーのこだわりでありポリシーです。
 外注すればたしかに効率はよいし、見かけ上コストも下がりますが、外注すると基本的な技術がブラックボックスになってしまい、次のステップのときにかゆいところに手が届かなくなります。なにより、コア技術が自分たちのところに残らなくなってしまいます。また、海外展開の際に、装置として海外に出た際に、何かの問題が起こったときに、中身の細部がわからないではどうにもなりません。
 技術というものは、どこにでもさらにアップさせる、改善していくということがあります。ですから、ものづくりの神髄は自分たちで一度は経験してみて、そのコア技術を確実にとらえていく必要があります。ここがきちんとできて量産できる目処がつけば、あとは外注してもいいのです。なんでも外注を止めるということではありません。「丸投げの外注はまかりならん」ということはここ数年来、社内で徹底してきています。これはチノーの伝統だと言ってよいでしょう。
 これをやりますと、たとえば、板金の曲げ方ひとつから盤内の合理的な配置などにもいろいろな工夫がありますし、メンテナンスがしやすい構造にはどうするか、耐久性を上げるにはどうしたらよいかなどを現場の人が自分で考えるようになります。丸投げでブラックボックス化したのでは、本当の競争力はつきません。

ループソリューションを提案

システムとして提案

たとえば記録計やコントローラなどの従来の製品を単体で売るだけで、売上を伸ばしていくことは今後は難しいでしょう。製品が浸透していけばいくほど、競争は激しくなりますから価格は下がらざるを得ません。ですから、販売量を増やしてもそれだけで大きな利益をあげていくというのは、至難の業です。
 しかし、お客様のところにあるわれわれの製品は単体で機能しているのではなく、全部つながって初めて意味をもつものです。われわれは温度に関する技術と製品を全部もっているわけですから、個々の単体としての製品ではなく、最終的にお客様が実現したいループとしての提案、ループソリューションを提供していく必要があります。
 チノーは、温度をはじめとする計測・制御・監視機器すべてを研究・開発・製造している国内でユニークなメーカーであり、各種センサから調節計・記録計・操作端・収録・監視パッケージソフトなど入口から出口まですべての商品レパートリーをそろえているという強みを活かせるわけです。

新分野にアプローチできる

お客様のやりたい用途に応じたシステムを全部つくりあげて提案すれば、これは当社の特長になりますし、お客様も喜ばれる話ですから、付加価値がついてきます。
 これは用途に応じた装置計装ですね。新しい提案をするのに適していますから、新分野にアプローチできるということです。そこからもう一段の深みをつけていきます。たとえば水素社会のインフラ構築の分野への拡大を考えています。

チノーマインドで海外展開(1)

−−貴社のグローバル展開についてお聞かせください。

「新常態」に移行する中国もわれわれのチャンス

グローバルに展開するということで海外事業に積極的に取り組んでいます。2006(平成18)年、07(平成19)年は比較的うまくいっていたのですが、やはりリーマンショックで相当苦労しました。
 ただ、中国は国家政策もあり回復が早く進みましたね。中国と日本の関係では、尖閣列島を巡る領土問題があって大変ですが、われわれがやることは基幹になるインフラの重要な部分ですから、これは伸びていきます。
 中国の経済成長率が10%台のときは、とにかく大量に早く、安くということでした。このような環境でのローカル企業との競争は不利でした。
 しかし、これが7%位に収斂されてくると、中国も、品質をよくしていかなくてはならないとか、PM2・5に代表される環境問題を無視するわけにはいかなくなってきました。
 今後は品質、安全、環境にかかわるインフラをきちんとしなくてはなりません。こうなってくるとむしろわれわれのチャンスです。ここで日本の技術が役に立つわけです。
 たとえば温度センサも中国では極端に安いものがあふれていました。しかし、われわれがつくるセンサとは精度や耐久性など品質に差があります。それがこの数年、中国での当社の温度センサの売れ行きは2倍、3倍に伸びています。価格にかかわらず品質のよいものが売れ出しているのです。
 中国もやはり、基本インフラ、そして基本の計測をきちんとやらないと生き延びていけない時代になってきています。

合弁会社の契約を延長

われわれはどんな場合にもしっかりとしたものづくりをやっていきます。チノーは中国の企業との合弁会社を20年やってきています。この契約が切れるので、どうするか決める必要がありました。独資にするという選択肢もありました。たしかに、独資にすると自分たちで自由に経営ができますが、逆に、状況が激変したときに、これに外国資本が独自に対応するというのは大変です。
 20年間互いによい関係の合弁でしたから、互いに積極的に活用してもう一段飛躍することも可能です。そこで、この関係をさらに積極的に強化していこうという判断で、昆山の生産会社「千野測控設備(昆山)有限公司」、上海の販売会社「上海大華−千野儀表有限公司」を共に10年、契約を延長しました。

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