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CHANGE & CHALLENGEで飛躍はかる

(株)チノー 苅谷嵩夫社長に聞く

聞き手は高松宏之編集部長

vol.1

日本計量新報 2013年2月3日 (2951号)2面掲載

震災復興で役割果たす

−−グローバル展開を進めておられますね。

海外展開を速いテンポで進めてきました。ただ、海外展開といっても国内できちんとやって、その上での海外展開ですので、まず国内関連からお話しさせていただきます。

リーマンショックが襲う

私が社長に就任したときは、事業が比較的順調に発展していたときでした。ですから事業の今後の発展を考えたときに、グローバル展開しなくてはならないと考えたわけです。
 そのためにはまず国内の体制をきちんと固めようということで、国内拠点の再構成を開始しました。ところが、その矢先にリーマンショックに襲われました。しかし、そういう状況だからこそ国内だけに留まっていてはダメだと考えました。
 リーマンショックのときに、中国は非常に大規模ですばやい対応をとりました。政治体制の問題もあるでしょうが、これは日本も見習う必要があります。
 日本では、各企業が塗炭の苦しみを味わいましたが、多くの企業は自助努力で業績を回復してきました。これは日本企業の底力だと思います。

−−東日本大震災もありました。

東日本大震災も

そうです。リーマンショックをなんとか克服して、さてこれからだというときに、今度は東日本大震災が日本を襲いました。
 チノーの場合は、幸いにして山形事業所(当時は(株)山形チノー)なども大きな被害は免れました。
 多くの被災者の方々、被災企業の事を思うと本当に恵まれています。

復興に役立ちたい

東北地方の東日本大震災からの復興があまりに遅れている事が気になっていますが、これからは進んでいくと思います。そして、復興ということになれば、港湾、道路、電気、ガス、水道などインフラの作り直しになります。これは日本がかつて戦後の荒廃したなかから復興したのと同じです。
 そうすると、これに関連した企業に動きが出てきます。その基礎インフラのための素材産業には温度計測は必須ですから、我々の最大の活動フィールドです。ですから、こういう分野で、チノーは10年、20年の先を見据えて、復興のお役に立てるし、ぜひとも役割を果たしていきたいと考えています。仙台営業所もリニューアルして増員強化しました。

植物工場の研究も

基礎インフラ以外でも、たとえば個人農家レベルでの水耕栽培の植物工場などで使用する機器やセンサ、及びシステムを提供することなどの支援ができるのではと考えています。
 まずは自分たちで実証してみようということで、山形事業所内に実証研究用の植物工場を建設しました。そこに機材を持ち込んで機器の改良をしていきます。
 同じく山形事業所に設置するメガソーラーも活用しながら、小規模でもペイできる新しい植物工場を運営できないか、専任者も配置して研究を進めていきます。それに我々の新しいセンサや計測制御技術及び新エネルギーを応用していくということです。これにより日本の農業の力をつけ、震災による塩害からの立ち直りや来るべきTPPへの備えなど、農業の新しい方向性を示せたらと考えています。
 これはすぐに効果が出るものではありませんが、当社事業の将来を見据えて研究していきます。

自然エネルギーの活用にも役割果たす

エネルギー分野は重要です。原発政策をどうするかはこれからよく考えていかなければならないと思いますが、いずれにしても、これまでは補助的に考えられてきた自然エネルギーの活用が重要になってきます。再生可能な新エネルギーの研究分野にも計測技術で役に立てるので、積極的に力を入れていきたいと考えています。

基本に戻り、現場を重視する(1)

経済状況のせいにしてはいけない

新政権になって日本経済の先行きに大きな期待が膨らんでいますが、もう少し様子を見る必要があると思います。現実には日本経済を取り巻く状況は依然厳しいものがあります。
 しかし、そのなかで私が社員に言っていることは、そのことだけを、今の業績の理由にしてしまったら何もできないということです。そういう経済状況のなかで、国内の企業はみな同じ条件に置かれているわけですから。

動き出すことが重要

あまりにも異常だった円高が改善されてきたのはよいことですが、日本の場合は、中国と違って方針の決定までの議論が長すぎます。どこかで結論を出して素早く動いていくということが大事です。そうでなければなかなか結果は見えませんね。

強みと弱みを見極めて差別化できる力をつける

このような状況のなかで企業が生き残るためには、差別化できる力をつけることが必要です。国内では、もう一度自分たちが得意としている分野で、きちんとやっていくことです。基本に戻る必要があります。

スピード競争に負けた不況

1社あたりのパテントの数を見ても、日本はアメリカに次いで多いのです。つまり、日本企業は基礎技術は持っています。しかし、それをいち早く商売につなげていくことが弱いのではないかと思います。そこが日本企業が現在苦境に陥っている原因です。
 かつては日本企業も猛烈に、しゃにむにやってきました。その迫力、ハングリー精神といってよいと思いますが、それがなくなっていると思います。それで、新興のマーケットの需要に日本企業が応えられていないのです。現在の不況は、ある意味、スピード競争に負けたことによる不況です。大企業の何千人、何万人という規模のリストラや、工場の閉鎖が、日本経済に連鎖的に影響を与えています。
 そこから抜け出すには、自分たちが得意としていることで差別化すること、そして、しゃにむにやっていくバイタリティーをもう一度身につけないといけません。

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