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日本計量新報 2011年4月17日 (2866号)2面掲載

解説 環境放射線測定器の校正

東日本大震災とそれに伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、全国で環境中の放射線量が測定されている(関連記事2864号2面)。

製造メーカーや校正事業者などは、急ピッチで放射線測定器の生産、校正を進めている。

あるメーカーでは震災以降、個人線量計、環境放射線測定器を合わせた生産能力を、通常の4〜5倍に上げて対応。特に増加しているのは原子力施設などで着用される個人線量計だが、環境放射線測定器に関しても、自治体、病院、電力関連会社などから問い合わせが相次いでいる。

一方、校正事業者の中にも、急増した校正業務を通常の納期で実施するため、24時間体制をとっているところが出ている。現在のところ、校正業務が遅延する例は確認されていない。

私たちが安心して生活するためには、放射線測定の値が信頼できることが前提となる。日本では、以下のような方法で測定器が校正されている。

校正方法はJIS Z 4511で規定

放射線測定器の校正についての規格としては、JIS Z 4511:2005「照射線量測定器、空気カーマ測定器、空気吸収線量測定器及び線量当量測定器の校正方法」がある。国家標準から一次、二次および実用照射線量(率)または空気カーマ(率)基準へと移行する校正の体系である。

2005年に同JISが改定された際、「附属書2(規定)実用測定器の確認校正」が追加された。校正定数が確定した実用測定器について、定期的な性能の維持を確認するため、実用線源による簡易的な校正(確認校正)を実施するよう規定するもの。これにより、初回校正以降は、各ユーザーでの校正が可能となった。ただし、実際には、確認校正を実施しているユーザーと、定期的に(1年に1回など)校正事業者の校正に出しているユーザーがある。

JCSS登録は8事業者

計量法に基づく国家的な計量のトレーサビリティは、校正事業者登録制度(JCSS)で保証されている。放射線測定に使用する計測器の測定結果が、不確かさの表記された切れ目のない校正を通じて国家計量標準に関連づけられることにより、計量のトレーサビリティが確保される。「放射線・放射能・中性子」の区分では、経済産業大臣に委託された(独)産業技術総合研究所が、国家計量標準である特定標準器(放射能絶対測定装置群)を所有している。

ISO/IEC 17025の要求事項に適合することを認められた校正事業者は、JCSSの標章が入った校正証明書を発行できる。現在登録されている「放射線・放射能・中性子」区分の登録事業者は、以下の通り(計量器等の区分や校正範囲は事業者によって異なる)。

▽(財)日本品質保証機構計量計測センター▽(株)千代田テクノル大洗研究所▽(社)日本アイソトープ協会▽(財)放射線計測協会▽原電事業(株)東海支社▽(財)医用原子力技術研究振興財団線量校正センター▽(財)日本分析センター▽ポニー工業(株)放射線計測センター

このうち、茨城県の東海村に位置する(財)放射線計測協会は、震災の被害を受けて校正業務を一時停止中。(株)千代田テクノル大洗研究所は、震災の大きな被害はなく通常通り校正業務可能である。

(財)日本分析センターは、2011年3月25日に線量測定器(電離箱)のJCSS登録を追加したばかり。都道府県に設置されたモニタリングポストの校正などを視野に入れている。


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