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計量新報 2006年 8月6日発行 /2640号 5面


 資料

計量標準の供給開始と校正範囲の拡大(4)
計量行政審議会平成17年度第1回計量標準部会資料より

参考資料3
特定標準器の指定及び校正等の実施について(光減衰量)

(2638号のつづき)
 しかしながら、それらの標準は不確かさが大きく、校正に長時間を必要とするなどの問題があり、また国際的な信頼を確保するため、計量法に基づくトレーサビリティ制度(JCSS)の確立を望む声が産業界より高まってきたところである。
 産業技術総合研究所は、広ダイナミックレンジ、高精度の光減衰量標準の研究開発を行い、産業界のニーズに十分応えることができると共に、国際レベルからみても遜色ない標準供給が可能となった。

2.指定予定の特定標準器

 光減衰量測定装置

3.特定標準器の概要

(1)特定標準器の構成(図1参照)
 特定標準器は、レーザ光源、レベルシフト用光減衰器、ステップ光減衰器および標準光電検出器などから構成される。
(2)特定標準器による校正の方法(図1参照)
 特定二次標準器への校正は、標準光電検出器を用いた増分減衰量法により行う。まず、標準光電検出器を用いてステップ光減衰器の減衰量ステップの値を決定する。次に標準光電検出器を特定二次標準器に置き換える。レベルシフト用光減衰器により減衰量のレベルを変えながら、各レベルで減衰量ステップに対応する特定二次標準器の出力を測定することにより、広ダイナミックレンジにわたる減衰量の値付けを行う。

図1
(注)点線部分を特定標準器として指定
図1 特定標準器の構成と特定二次標準器の校正

4.計量法135条第1項に基づく校正実施機関

 独立行政法人産業技術総合研究所

5.特定二次標準器

(1)光ファイバ用の光電検出器であってデジタル出力機能を有するもの。
(2)特定二次標準器の具備条件
 (a)適合ファイバ
 シングルモードファイバ
 (b)適合コネクタ型
 FC/PC型
 (c)光入力範囲
 許容範囲の上限が1mW以上。
 (d)直線性
 0.03dBより良いこと。
 (e)表示分解能
 0.001dBより良いこと。
(3)特定標準器による校正等の期間(校正等の周期)
 1年

6.トレーサビリティの体系図及び測定の不確かさ

(1)トレーサビリティの体系図

(図2参照)
図2 トレーサビリティ体系図

(2)測定の不確かさ
1)特定標準器による校正等における測定の相対拡張不確かさ(k=2)は、9dBステップの場合において5×10−4dB(9dB)〜4.5×10−3dB(90dB)、
10dBステップの場合において6×10−4dB(10dB)〜5.6×10−3dB(90dB)
を予定している。
2)登録事業者が行う校正における測定の相対拡張不確かさ(k=2)は、9dBステップの場合において8×10−4dB(9dB)〜7×10−3dB(90dB)、
10dBステップの場合において9×10−4dB(10dB)〜8×10−3dB(90dB)

を想定している。


参考資料4
校正等の実施について(硬さ)

 硬さ試験は機械部品等の強度特性を簡便に評価できる工業試験法であり、鉄鋼・自動車・航空を始め、幅広い産業分野で利用されている。
 産総研は平成10年にロックウエル硬さの特定標準器を、平成12年にビッカース硬さの特定標準器を指定し、硬さの標準供給を開始した。硬さの供給には一般的に硬さ基準機による場合と硬さ標準片による場合の2つの方法があるが、特定二次標準器を硬さ基準機と定め、出張校正により供給することとした。
 近年、事業者の校正技術が向上したことに伴い、簡便な供給形態である硬さ標準片の供給によって、従来と同等若しくはより小さな不確かさで、エンドユーザまで標準供給できることが明らかとなった。また、諸外国においても、硬さ標準片による供給が主要な供給方法として位置づけられている。以上のことから、硬さ基準機による供給に加え、ロックウエル硬さ標準片及びビッカース硬さ標準片による標準供給を開始する。


参考資料4−1
校正等の実施について(ロックウエル硬さ)

1.背景

 ロックウエル硬さ試験は当初ベアリングの検査用に開発されたものが、その後測定の簡便性が認められ鉄鋼材料を中心とした製品の品質管理やプロセス管理の手段として産業界で最も多く利用されている。

2.特定標準器

 ロックウエル硬さ標準機(既存)

3.特定標準器の概要

(1)特定標準器の構成(図3 特定標準器の構成 参照


 ロックウエル硬さ標準機は、試料台にのせられた硬さ標準片に対し、錘と梃子(てこ)により発生される安定した試験力を、先端半径200μm、円錐角120°に加工されたダイヤモンド圧子を介して負荷し、硬さ標準片の表面にくぼみ(圧痕)を作成する。試験力を98.07Nの初試験力を負荷して深さ原点を測定。その後1471Nの全試験力を負荷、再び98.07Nの初試験力に戻し、深さを測定する。この2つの深さの差は0.01μmの分解能で測定され、ロックウエルCスケール硬さの場合には深さの差2μmが硬さ値1HRCを与える。硬さ値(単位HRC)は深さの差から得られるが、本装置ではこれが自動計算されるようになっている。
(2)特定標準器による校正の方法
 ロックウエル硬さ標準片の校正は、ロックウエル硬さ標準機を用いて行う。特定標準器により測定面の数か所の硬さを測定し、その平均値を校正値とする。

4.計量法135条第1項に基づく校正実施機関

 独立行政法人産業技術総合研究所

5.特定二次標準器

(1)ロックウエル硬さ標準片であって、硬さの範囲が20HRC以上65HRC以下のもの。
(2)特定二次標準器の具備条件
 (a)形状および寸法が以下の条件を満たすこと。
 厚さ:6mm以上
 使用面の平面度:10μm以下
 裏面に対する平行度:20μm以下/50mm
 表面粗さ:使用面0.3μmRa以下、裏面0.8μmRa以下
 (b)硬さの均一性が以下の条件を満たすこと。
 0.4HRC、又は0.01(100−H)HRCのいずれか大きい値以下(ただし、Hは硬さの平均値)
(3)特定標準器による校正等の期間(校正等の周期)
 5年
〈編集部注:文中の「予定」はすべて昨年12月に告示済みです〉

(次号以下につづく)
 
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