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差異が生じている。
修習技術者  田中 晶

 むかし昔の大昔、はかる道具がない時代は、王様の身体の手や足を利用して「長さ」を測り、それを「長さの基準」としていました。時は流れ、手や足の長さをそれぞれの王様が「長さの基準」だと言い張っていたので、自分の国と隣の国では基準の長さが異なり、争いの原因になっていました。そこで・・・

  計量教室の始まりの話です。

 地球の大きさを測り、メートルを決めて、決めた長さから作られた容器に水を入れ、その水の重さからキログラムが導き出されたはなしです。

 時間は天体の動きを元に定義されてきました。

 地球が太陽の周りを一回まわる時間を年、地球が一回りする時間を日、までは太陽が基本でわかりやすいのですが、1日が24時間なのは何故かと調べてみたら、エジプトの人たちが、月の満ち欠けが約30日で、この周期を12回繰り返すと1年になることを知っていた。それで、1日をいくつに分けるか、つまり、時刻を決めるときに、この12という数字を使い、1日を昼の12と夜の12に分け、合計で1日は24時間になったわけなのです。現在も1日が24時間となっているのはこの方法がずっと使われてきたとのことです。

 では、1時間が60分となったのは、60進法を用いたからとのことです。60は2から6の数字で割り切れる最小の数であり、割り算に非常に都合がよかったことなどが理由とのことです。ようやく1分が決まり、1分を60等分したことで秒が決まりました。

 蛇足ですが、分と秒は角度から始まったそうで、16世紀ごろに機械式時計が登場するまでは意味をほとんど持たなかったそうです。時代劇でも時は干支で表現されています。当時は、1時間の単位で十分用が足りていたのでしょう。

 国際単位系(SI)にはアンペア(A)、ケルビン(K)、モル(mol)、カンデラ(cd)を含めた七つが定められていますが、実際には長さと重さと時間が身近ではないでしょうか。

 もう一つ、身近に使用されている単位に、温度があります。単位は℃(摂氏度C)。これも昔から熱い、暑い、冷たい、寒い、凍る、沸騰などのほか、ぬるい、暖かい、人肌、冷や水などで表現していたと考えられます。単位の話では、温度の元々の定義は水の凝固点を0度、沸点を100度とするものであったが、物理化学では絶対温度が使われて、単位はケルビン(K)で、絶対零度(-273.15℃)で0Kで1Kは1℃の幅は同じで0℃は273.15Kとなります。

 温度は、体感として感じることと、温度計の表示を見て認識する2面がありそうです。今年は梅雨が短く、夏の訪れが早く、猛暑の夏となりました。今日はとっても暑いと思っていたら、テレビで37℃の体温越えの気温となりました。とのニュースで改めて、暑さを確信することもあるようです。真夏日を超える猛暑日の記録を更新し、40℃越えの地域もあり、温度表示に一喜一憂する報道もありました。

 


 新聞のコラムに「常温飲料を扱う販売機」の記事がでていました。

 「常温飲料を扱う自販機がある」と聞き、飲料メーカーに取材したり、ネット検索したりしたが、どれも空振り。仕方なく、最高気温35度を超える猛暑日が続いた7月上旬、都内を何日も歩き回った。JR東日本が首都圏の駅構内を中心に約120台を設置しているとのこと。

 若い女性や高齢者から「水滴でかばんがぬれるのが嫌だ」「体が冷えすぎる」などの声から設置に至ったようです。

 自販機の一般的な基準では、「常温」は約20℃で、「冷たい」は約5℃、「温かい」は約50℃とのこと。20℃は「ぬるさを感じない温度」という。「多様なニーズに応える中で、常温飲料には一定の需要がある」と話す。他方、コンビニの常温飲料は、室温のまま売られることが普通だという内容です。

 自販機で常温で販売する。確かに省エネには違いないが、温度コントロールは冷却も加温もしていないのかと思いきや、約20度にしているようです。
 また、常温で思い出されるのは、日本酒ではないでしょうか。

 冷やして(5〜10℃)少し冷やして(10〜15℃)常温 ぬる燗(40〜45℃)上燗(45〜50℃)熱燗(50〜55℃)と細かくパッケージに記載されています。
 冷蔵庫の温度は、2〜5℃ 野菜室は3〜7℃ チルド室は0〜3℃だそうです。冷蔵庫といえば、ビールが一番おいしい温度は、夏は4〜6℃、冬は6〜8℃がおすすめで、家庭の冷蔵庫で4時間ほど冷やせば飲み頃の温度になると解説されています。

 夏ですが、温かな温度についても、お茶は高級な玉露などは50〜70℃で、煎茶はもう少し高くて、70〜80℃、番茶は80〜90℃がお勧めとのことです。さらにお茶ごとの適したお湯を作る方法は簡単!

 沸騰直後(100℃)のお湯を茶碗に入れ、さらに別の茶碗に移し入れると90℃前後になります。その後、90℃前後のお湯が入った茶碗を別の茶碗に移すと5℃〜10℃下がって80℃前後に。50℃前後のお湯を作るには、3?5回茶碗に移し替えれば作ることができます。温度を計らずともその温度にできるのです。

 オマケに、天ぷらの油の温度も見てわかるのです。主婦の方はご存知のように乾いた菜箸を油に入れたときに立ち上がる細かい泡の違いや、素材を揚げているときの細かな泡の違いで150℃〜190℃の油の温度を見分けているのです。温度計をわざわざ準備しておられる方は少ないのではないでしょうか。

 常温の話に戻りますが、食品会社のホームページで常温を参照すれば、G社では、一般的に常温とは「熱したり冷やしたりしない自然な温度」と理解されており、厚生労働省の「常温保存可能品に関する運用上の注意」においても「常温とは、外気温を超えない温度」とされています。当社では常温保存品は15℃〜30℃で保存されることを想定して商品設計を行っています。

 K社では、当社では、JIS規格を参考に、常温の設定温度を28℃としています。

 I社では、「常温」は、常に一定した温度のことで、食品における常温は、人が一般的に生活する温度と思っていただければよいです。夏は外気温を超えない温度で、直射日光の当たらない、きわだって高温にならない場所で保存してください、でした。

 食品衛生法やJAS法でも特に定義はありません。目安としては夏季において外気温を超えない温度、つまり25℃くらいと想定するのが適当と思われます。常温はおおむね25℃くらいです。日本の湿度が一年で50〜75%と考えると、高温多湿の目安は25℃、75%以上と考えると良いでしょう。これがよく纏められています。

 やはり、食品会社でも、具体的な温度にこだわるよりも、商品にとって、消費者目線の取り扱いをしているようで、安全サイドに設定しているようです。
 参考までに、現行の医薬品の規格を定めた公定書である「第十七改正日本薬局方」(平成28年3月7日厚生労働省告示第64号)では、室温1〜30°C、常温15〜25°C、冷所は1〜15°Cと定義されています。

 即ち、室温は冷所+常温ということになります。さらに、常温とは、寒くもなく、暑くもない気持ちの良い温度帯のようです。室温は字の通り、部屋の温度で夏も冬の温度や冷暖房を使わない温度も含まれるのかもしれませんが特に意識して使い分けてはいないように感じています。

 温度を細かく、記したのは、うん蓄であって、誰も温度計を見ていないことを伝えたかったのです。しかしながら、関東平野の井戸の温度は年間を通じて16〜18℃にたもたれているとのことで、冷蔵庫が無かったころは、井戸水で冷やせば果物は、冷たくておいしかったはずなのだが。

 


 話は変わって、差異という数字のマジックを解説されている話です。

 省エネ法と東京都等の環境条例との総熱量を一致させるには、とのテーマで技術者の方が解説している一部です。

 総熱量(GJ)は、単位発熱量とガス使用量を掛けることで求めます。先ず、単位発熱量ですが、東京ガスでは、「都市ガスの熱量を『摂氏0度および圧力101.325キロパスカルの状態(標準状態)のもとにおいて乾燥したガス1立方メートルの総熱量』と定義」し、(45MJ/Nm3,45GJ/千Nm3)表示しています。そして、単位発熱量の単位として、東京都等の環境条例では(GJ/Nm3(立法メートル))と表示されています。

 次に、都市ガスの計量単位はm3(立法メートル)であり、容積流量と呼ばれるものです。検針票に記載されたガス使用量は標準状態での容積流量ではなく、都市ガスメータの種類(低圧用が15℃、103.325kPa)ごとに決められた温度・圧力での容積流量(m3)を表示しています。以上から、総熱量を求める際には検針票に記載されたガス使用量(m3)とそのままでは掛け合わせることができず、ガス使用量(m3)を標準状態でのガス使用量(Nm3)に換算することが必要となります。このため、東京都等の環境条例では都市ガスが低圧用か中圧用かを記入する欄があり、検針票に記載されたガス使用量(m3)を標準状態でのガス使用量(Nm3)に係数を掛けて自動換算しています。その係数は低圧用で0.9667Nm3(立法メートル)/m3(立法メートル)です。

 他方、省エネ法では、該当箇所の換算係数は(GJ/千m3)であり検針票に記載されたガス使用量(m3)をそのまま使用できそうですが、換算係数の数値は東京都等の環境条例の数値と同じです。つまり、係数分だけの誤差が生じることとなります。との内容です。

 温室効果ガス(エネルギー起源CO2)削減による地球温暖化対策、仕事の効率化やデジタル化が求められ、推進に苦慮されている皆さんも多いことと思われます。

東京都環境局のよくある質問・回答集には、

Q:BEMSのデータを使用しての報告は可能ですか。ガス等の検針においては検針時刻の差異により検針値に誤差を生じます。電力、熱エネルギー値に同様な問題が生じています。

A:購買伝票等(領収書、検針票、納品書等)を御用意いただく必要があります。これらと報告値が一致していることを確認します。エネルギー供給会社の検針値と値の異なるBEMSのデータを報告値として御利用いただくことはできません。

Q:計測を自動で集計できるシステムの導入を検討しているのですが、パルス信号をデジタルで集計するため、実際の請求書の情報と微量ながら差異が出てしまうということを提供事業者から言われています。

A:購買伝票等(領収書、検針票、納品書等)を御用意いただく必要があります。これらと報告値が一致していることを確認します。エネルギー供給会社の検針値と値の異なる集計データを報告値として御利用いただくことはできません。

 環境局のQ&Aは、ガス会社や電力会社の検針票の数字を100%求めています。

 ここで仕事の効率化やデジタル化を求める観点だけに限りポイントを整理しましょう。

 東京ガスは、単位発熱量を、標準状態で定義しているが、検針票に記載されたガス使用量は標準状態での容積流量ではなく、都市ガスメータの種類ごとに決められた温度・圧力での容積流量(m3)を表示しているので、標準状態でのガス使用量(Nm3)に換算することが必要です。さらに、厳密には実在ガスによるずれ、圧縮係数を考慮する必要があり、13Aの場合一般的にノルマル条件(0℃、1気圧)では圧縮係数が0.99程度になって、ボイルシャルルの式に対して1%ほど体積が小さく(=熱量が大きく)なとのことです。

 余談として、ガスの使用量は低圧用が15℃、103.325kPaで計測をしているので、気体は夏場は温度が高くなると容積が増え、冬場は容積が減少します。ボイル・シャルルの法則により、圧力が高くなれば容積は減りますが圧力はコントロールされているのでガスメーターが正しく計測してもガスの実量は変わります。15℃の設定は夏冬の中間でしょうか。ガス代金の損得計算を気にしている人はまず、いないでしょう。

 東京都は、検針票の数字を使うために係数を掛けて、Nm3に自動換算を算用しているのですが、係数を用いること自体が誤差を発生させます。東京ガスの検針価は15℃で設定された数字で標準状態の温度は0℃なのです。夏冬での実量を表していない数字に対しても誤差が生じています。省エネ法で必要な数字と、標準状態への換算が誤差を生じる数字の扱いは、基準や標準からすると少しやり過ぎとも言えます。仕事の効率化の設備に費やした時間や費用はもっと有効に活用しても良さそうです。実際の請求書と計測した情報と実量とには差異が発生する事は避けられないのが現状です。

 先にも紹介したように、気体は温度と圧力によりその体積を変化させるものであることから、ガスメータで計測した計測値は(低圧用が15℃、103.325kPa)の条件で計測した測定値をすると決めています。温度補正や圧力調整等の進歩はありますが、残念ながら差異は無くなっていないと思われます。また、計量器についても、電力計の誤差の許容限度がJISで設定している。同様にガスメータにあっては温度範囲の条件がついての許容誤差が%オーダーで設定されているのです。

 


 何が正しくて何を根拠にすれば正しい正確な情報が得られるのでしょうか。

 先の例ではエネルギー供給会社の情報が本当に正しいのでしょうか。いや、省エネ法と東京都等の環境条例で必要な情報はどこまで必要なのでしょうか。
 まずは、前提となる基準、標準を考えてみましょう。

 基準は「基礎にする標準」英語ではスタンダード

 標準は「よりどころとなる目あて」英語ではスタンダード

 物理量を測るには摂氏0℃および圧力101.325キロパスカルの状態(標準状態)。熱力学の場合は定義が異なり、摂氏25℃を標準状態とするとの記事があり、25℃は実験をする室温としていると聞いたことがあります。基準とする温度には25℃?か0℃?が選ばれることが多い。東京ガスが標準状態の0℃でもなく、熱力学の25℃でもない、東京ガスが設定している15℃を選択されているのは夏冬の実際の数字を最も実際の使用量に近いと考えられで採用されているように感じています。

 省エネの報告に報告する各社が削減で来ているように数字を操作することは問題がありますが、エネルギー供給会社の検針値と同等程度で集計されている数字であれば、BEMSのデータでも自動で集計ができるシステムのデータでも使用できるのではないでしょうか。

 測定値と真実の値(真値)との間にはどうしても一定の誤差が生じます。ここで重要なことは、許容される誤差の範囲を明らかにすることです。測定の分野では、許容誤差の最大寸法と最小寸法の差を「公差」もしくは「許し代(ゆるししろ)」と呼んでいます。また、産業規格などの法律が認める誤差の範囲についても公差と呼ぶことがあります。と商品量目制度に関するよくある質問と答えの中の一文です。

 五捨切り捨てあるいは千未満切り捨てなどで、許し代を設ければ、BEMSのデータや消費電力量の計測を自動で集計できるシステムも採用できるのではないでしょうか。

 省エネを推進するためにエネルギーの使用量を把握しなければならないことと、省略できることを見直して実務の担当者の作業を軽減するため方策を行政にも考えてもらえばと感じる解説であった。

 単位の中には、数字を使わずに感覚を説明するように使う話の例として、温度を取り上げました。逆に、0.9667と係数を使用する対象が許容誤差が認められている計量器で測定し、計量する対象は温度や圧力でその量が大きく変化するものであることを考えたとき、許し代という言葉を見つけてどうすれば労力を地球温暖化の対策に使えるのかと考える次第です。

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