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おわりに


 これまで述べてきたように、世界最高水準の知的基盤整備を達成するには、整備のダイナミズムと主導的かつ国際的な取組みを旨とし、また、供給料金、知的所有権、研究者・技術者の評価といった開発・供給における分野を超えた共通 の考え方に則り、ここに示した重点分野ごとの整備の計画を実行していかなければならない。それには産総研、NITEの中期目標・中期計謔ノ基づく整備事業が着実に実施されることが必要であるが、同時にNEDOによる高度な研究開発事業と一体的なプロジェクトや産学官連携によるプロジェクトなどを活用を図る必要がある。  

 さて、科学技術基本計画においては、知的基盤の適時かつ効果 的な整備のために、研究開発プロジェクトの中で得られた成果を有効に蓄積・整備していくべきと指摘されている。経済産業省では、平成13年度から研究開発制度にプログラム方式*81を採用し、社会二一ズヘの対応、革新的・基盤的技術の酒養、知的基盤の形成という政策目的を明確化した上で、シーズ探索の研究開発、産業技術の基盤育成の研究開発、知的基盤整備の研究開発、実用化開発を組みあわせた集中的な取組みを開始している。このプログラム方式により、研究開発プログラムの成果 を確実に知的基盤として整備していくことも求められている。

   プログラム方式は、知的基盤整備それ自体を第一目的とすることが排除されているわけではない。しかし、プログラム方式の多くの研究開発は、比較的社会二一ズ対応志向が強く、かつチャレンジングな先端研究及び、その成果 の知的基盤化を主に対象としている。したがって、研究開発要素は相対的には高くないが2010年に向けた知的基盤整備目標達成のために、着実に整備を進めていく必要があるものについて、プログラム方式ではなくて、知的基盤整備を一義的に目的としたプロジェクトを推進することが必要である。その知的基盤整備プロジェクトのあり方については、産学官の連携で智恵を結集して実施するとともに世界に通 用する高い技術力を持つような中小企業等の活用・育成も考慮すること、本委員会の示した整備目標について、量 と質の達成のみならず開発後の供給に係る資金的負担を軽減するための供給形態の高度化・効率化も考慮すること、開発後の維持・管理・供給の合理的な方策・計画が提示できること等が重要である*82。

   以上のように、独立行政法人による整備事業、NEDOによるプログラムや知的基盤整備プロジェクト等を効果 的に展開し、整備目標を達成することが求められる。

   はじめにも述べたが、知的基盤整備は政府全体で取り組むべき重要な課題である。ここに示した知的基盤整備に関する基本的な考え方は、経済産業省の行う知的基盤政策に止まらず、全省庁の知的基盤政策の指針となり得るものと考える。したがって、本委員会は、各省庁において知的基盤整備に関する政策議論が進められることを期待するものである。そしてここに示した考え方に基づき経済産業省が知的基盤整備を先導的に推進していくことが必要と認識するとともに、関係各省においても 知的基盤整備が精力的に取り組まれ、さらに総合科学技術会議の総合調整とリーダーシップの下に我が国全体としての知的基盤整備が強力に進められることを期待する。

   知的基盤は研究開発と表裏一体のものであり、かつ社会の諸活動の中に活かされるべきものである。すなわち、知的基盤は科学技術の進歩と経済社会の変化にダイレクトに結びき、科学技術、社会活動と知的基盤が相互に作用し合い好循環しながら社会全体が発展していかなければならない。本委員会は、このような日々変化を遂げる諸状況を敏感に捉え、今回の中間とりまとめに示した考え方、方針、目標・計画をこれからも適時、適確に見直し、あるいはさらに審議を深化させていくこととする。なお、国際標準化活動の支援の強化については、日本工業標準調査会の専門的な審議の場における検討を期待する。