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2011現場の計量管理座談

JISQ10012の普及と不確かさの活用で計量管理を推進

    
出席者
阿久津 光 三菱重工業(株)名古屋誘導推進システム製作所 計量士
阿知波 正之 (司会)阿知波計量士事務所 計量士
伊藤 佳宏 三菱重工業(株)名古屋航空宇宙システム製作所 計量士
植手  稔 パナソニックエコシステムズ(株)品質センター計測管理担当 計量士
粂  正光 粂計量士事務所 所長
小屋松 隆一 住友軽金属工業(株) 計量士
田中 亀仁 トヨタ自動車(株)計測技術部チーフリーダー 計量士
中野 廣幸 計量士
廣瀬 幸造 (株)日本穀物検定協会中部支部 計量士
横田 俊英 (株)日本計量新報社
渡辺 雪宣 (株)イノアックコーポレーション自動車関連製造部品質保証グループ参与
    
目次
1.JISQ10012は新規格の押しつけか 2.「計量機能」とは 3.マネジメントの範囲はどこまでか
4.第3者認証方式でという要望も 5.現場での測定の管理 6.認証確認とは何か
7.不確かさの出し方簡易化して普及へ    
     
                                  
JISQ10012は新規格の押しつけか

阿知波正之(司会)生産企業の計量管理に関して自由に発言をしていただきたいと思います。特に今回は、2011年5月20日に制定されたJISQ10012(計測マネジメントシステム−測定プロセス及び測定機器に関する要求事項)と、それに関わる現場の測定における不確かさに関して、討論を進めていきたいと思います。
 本日参加されている方は、生産企業に所属している方と、計量士として生産企業の計側管理に携わっている方ですので、ものづくりに関連したお話しをお願いします。
 伊藤佳宏さん、JISQ10012規格制定の発端となったのはどういうことでしょうか。

発端はエアバス の仕様書

伊藤佳宏 私は、三菱重工(株)>名古屋航空宇宙システム製作所(名航)を定年になって10年になりますが、計量士として週1回の頻度で関わっています。
 JIS規格の基になったISO10012規格導入のきっかけは、三菱重工(株)名古屋航空宇宙システム製作所がエアバスの部品をつくることになったことです。エアバスA380という最新鋭の超大型旅客機です。その時に、エアバス社から品質保証仕様書が示されました。この仕様書の中に、JISQ9001項目7・6に相当する該当項目にISO10012を適用しろということがありました。

すでに実施している内容だった

最初は戸惑いました。私は計測管理の担当でしたから相談を受けて、いろいろ調べました。当時はまだ10012規格も1と2に分かれていました。このISO10012−1を適用しろというわけです。1は、計測器の管理です。ここにはまだマネジメントという内容は入っていません。
 しかし、実際には計測器の管理ではなくて、計測管理が要求されていました。これは大変だなということで調べていったら、全体的には当社がすでに実施している内容でした。そこで、これはやれるということで契約を締結したわけです。
 そのうちに、10012規格も−1と−2が統合されてISO10012(計測マネジメントシステム−測定プロセス及び測定機器に関する要求事項)になりました。
阿知波正之(司会) 10012は、現在は、計測器の管理だけでなく、計測マネジメントとしての規格になっているということですね。
 この規格を翻訳された中野廣幸さん。この規格の特徴はどういうところでしょうか。

松下計量自治会で学んだことと同じ

中野廣幸 翻訳をしたときに感じたのは、この規格は非常によくできた規格だなあということです。計測器の管理だけではなく、まず計測の目的をはっきり示せということを言っています。
 私は当時、現在のパナソニックエコシステムズ(株)に在籍していました。パナソニックには全社的組織である「松下計量自治会」という計測管理を推進する組織がありましたが、そこで、私が学んだ内容と同じでした。
 要求事項としてよくまとまっている点は、それを具体的に、各節にわたって書いてあるということです。
伊藤佳宏 (社)日本計量振興協会が委員会をつくって4年間にわたって内容を研究してきました。その結果、いよいよJIS規格「JISQ10012」になったわけです。
阿知波正之(司会) 計測管理というと、まだまだ計測器の管理であるという認識があって、なかなかそこから抜け出せません。

計測管理の原点に帰るもの

田中亀仁 トヨタグループには、「オールトヨタ計測連絡会」というのがあります。そこで「計測管理マニュアル」をつくっています。その中に体系図がありますが、まさに10012の体系図と同じでした。なかったのは、不確かさに関することだけです。私は10012の内容を知ったときに、「これって昔からやってきたことそのままじゃないの」という印象を受けました。私は、10012の内容は決して新しいことではなく、むしろ計測管理の原点に帰るということだと思います。

計測プロセスがあっての計測器の管理

植手稔 パナソニックエコシステムズ(株)の植手です。計測管理の実務を15年に渡って担当しています。計測管理の本来の姿は、顧客要求を計測のパラメーターに変換して、どこでどのような計測器を使ってどのような判定基準にするのかといった計測のプロセスを確立した上で、じゃあそこで使う計測器は本当に正しいのかという話がでてくるのが筋だと思います。
 ISO9001の7・6項の計測器の管理、校正、トレーサビリティというのは、このように計測のプロセスの後から出てくるべき話だと思います。
 ISO9001の監査でも、トレーサビリティとか、計測器の合格ラベルや、成績書の記載間違い探しだとばかりに重きを置いて、本来、監査するべきの計測のプロセスのところまではなかなか言及されません。
 しかし、計測管理の本質はそうではないと思います。計測のプロセスをしっかり押さえた上で、計測器の校正管理があると思います。これがまさしく10012の内容だと考えています。

適管の内容と共通するもの多い

パナソニックでは、適正計量管理事業所(適管)の取得を推奨しています。適管の内容を見ますと、10012の内容と共通するものが多くありますので、10012がまったく新しいものではないと感じています。

10012の普及掲げる

パナソニックでは全社計測計量委員会に「適正計量部会」があります。パナソニックには全部で16のドメインがあり、そのドメインの代表計量士が集まる部会で、全社の適正計量管理の推進を行っています。
 部会の2011年度の活動計画の中に、計測プロセスの重視ということで、10012の普及を掲げています。今までの計測器の管理だけでは顧客重視の観点より、それでは不足であるということに気づいて、やり始めたところです。

計測プロセスに取り組む

植手稔 全社の品質方針があり、品質ロスを2分の1にするということを掲げています、計測部門がそれに真に貢献するためには、計測器の校正だけをやっていたのではダメで、計測プロセスの改善に取り組んでいく必要があると考えています。

プロセスをよく見ろ

中野廣幸 パナソニックの創始者の松下幸之助さんが、リーダーになる人のためにこんなことを言っています。「データで物事を判断するだけではダメだ。自分で現場へ行って現場を見て判断しろ」ということです。これは私はプロセスをよく見ておけ、ということだと思います。データを見ただけでは、そのデータが正しく出されたものかどうかはわかりませんね。現場に行ってみるとわかります。

「現場へ行け」は鉄則

渡辺雪宣 「現場へ行け」というのはトヨタでは鉄則です。「データを現場で確認してこい」ということです。たとえば、報告書に、ブロー成形(中空成形)などはゼロと書いてあります。本当はゼロではないですよ。それでは何にもなりません。
 VA(価値分析、Value Analysis)で厚みを調節して質量を減らすことになりました。ある部品の質量を120gから95gにしようというのです。検査法には質量が変更になっていますと書いてあります。現場に行ったら不良品が出ていました。なぜかというと、カットしたら厚みが1・4しかないのです。元々の規格は2・0になっています。質量を減らせば、ブロー成形品は必ず厚みが薄くなるのです。厚みの代表特性が質量なのです。こういうことが現場では起こっています。

計測の目的を忘れている

中野廣幸 計測の目的を忘れてしまっていることが多いですね。
 設定温度と実際の温度との関係で、実際の温度をチェックしなければいけないのに、報告書には設定温度を書いていたという笑えない話があります。
 温度が、よくばらつきなく管理されているなと思っていたら、現場に行ってみるとそうではなかったのですね。
 どう測っているのか、大事なのはそこですね。

「計量機能」とは

阿知波正之(司会) JISQ10012の用語で「計量機能」というのがあります。その範囲はどこまでですか。これには現場の測定者も含まれるのですか。

計量に関わるすべての人

中野廣幸 翻訳したときに、私も始めは何のことだかわかりませんでした。結局、人のことなのです。JISをつくるときにも「職能」という用語にしたらどうか、という意見も出ました。計量に関わるすべての人、というふうに捉えたらよいのではと思います。

すべての職務にわたる

植手稔 「計量機能」は、ものづくりの研究開発から設計技術、生産技術、それから計測管理、品質管理など、すべての職能にわたる計量に関わる人です。パナソニックエコシステムズでは全ての職能に渡り、部門毎に計測計量委員を置いていますが、その計測計量委員が自部門の計測器の管理はもちろん、計測プロセスもその人たちの役割としていく必要があるのではないかと考えています。
阿知波正之(司会) (社)日本計量振興協会(日計振)の『ISO/JISQ10012計測管理規格調査報告書』(2011年)には、「計量機能は組織の中の、一つの専門部門が担当してもよいし、組織全体に配置されてもよい」と書いてあります。ということは、計測に関わる人は全部「計量機能」だと捉えてよいのですね。
植手稔 計測管理部門が全ての部門の計測に関われる場合はよいのですが、そうでない場合は、それぞれの職能(機能)に、ものづくりを計測視点で見ることができる計測のセンスがある人を置くべきだと考えています。
中野廣幸 今までは、計測管理は計測管理部門がやるという概念がありましたが、この規格では、それでは通じません。製品実現のプロセスの中で計測をどう働かせるかという視点で考えると、一部門だけでできるものではないと思います。
阿知波正之(司会) 現場でデータに関わる人はすべて計量機能だということになりますね。
伊藤佳宏 適正計量管理事業所でいうと計量管理組織に関わる人が当てはまりますね。
 ISO9001では、適管の位置づけに対応するのは計量器の管理をする人ですね。7・6項を守る人です。位置づけが異なります。10012の場合は、適管と同じ機能の位置づけになっています。
 計量管理全体をマネジメントする人です。私はこれが計量機能だと思います。計量に関するすべてのものに関係してきます。ですから、製品の品質を保証する人たちも含まれていることになります。
 計量機能に関してもう一つ言っていることは、顧客満足のための要求事項を社内の計量要求事項に変換することは、計量機能がやるということです。
 計測マネジメントをする計測技術部などがあれば、そこで標準などをつくって責任を持つことになります。

集中しても、分散してもよい

阿知波正之(司会) 私は、権限を集中させる部署をつくってやる必要は、必ずしもないと思っています。
 昔、私がデンソーで計測管理を担当していた時、トヨタ自動車では計測管理は集中管理されていました。
 しかし、われわれの職場では、全員参加でやろうということで取り組んでいました。分散化のシステムをつくろうとしていたわけです。10012は、両方のことを言っているわけです。集中してやってもよいし、組織全体に分散してやってもよいのだと言えます。

顧客重視という観点

田中亀仁 元々、ものをつくるということは、組織がそういう仕事を担っているので、計量管理はある一部の人がやる仕事ではなくて、全社で全員が取り組んで始めて計量管理ができるのです。ですから、一部の人だけにやらせる必要はないと思います。
 ただ、10012では何がこれまでの計量管理と違うかといえば、今まで、顧客重視という考えはあまり表立っていなかったのです。この計量器はいったい何のために使うのかという点に、これまで視点がいっていなかったのです。
植手稔 統括する部門は必要だと思いますが、職能のすべてにわたってそういう機能があれば、どちらでもいいわけです。

全員が取り組むことが大事

田中亀仁 サービスとか営業の部門の人たちに、顧客のニーズを聞いてこいというだけでは無理ですから、そういう視点で全員が仕事をすることが大事になります。
阿知波正之(司会) 実際にそういう活動はなされているのでしょうか。そういう事例はありますか。

新入社員に教育

小屋松隆一 住友軽金属工業(株)の小屋松です。当社の現場の方が使用する計測器は長さ計が多いので、新入社員に対して配属前の教育期間中にマイクロメータ、ノギスなどの長さ計について使用方法や注意点などの一般教育をおこなっています。新入社員は計測器の取り扱い方や重要性に関する知識が殆どありません。そこで、計測に携わるものが代表し人材開発センター(新人の教育場所)で教えることにより、現場の意識と品質管理を向上させるための活動をしています。

「何のために測るのか」から始める

中野廣幸 どこでもそうではないでしょうか。先輩から後輩へと伝えられてきた技術や方法は、会社の中でいえば、時系列的に縦に伝えられてきています。これを横へ押し広げて、システムとして考えているのは、この10012規格が初めてではないでしょうか。
 現場では、測る方法は教えてもらえますが、これを何のために測るのかということに関してはあまり教えてもらえません。10012はそこからやっていこうという規格です。

顧客重視の考え方が必要

田中亀仁 そのよい例がリコールですね。設計屋さんは正しい図面をつくっている。製造のほうは図面通りにつくっています。ですから図面をもとに考えると変なものはつくっていないことになります。しかし、現実にはリコールが出てきます。それはなぜかというと、顧客の嗜好が変わっているから、顧客の嗜好を満足させるような商品をつくらないと、顧客にとってよい商品はできないからです。

自社の規格に合っているだけではダメ

渡辺雪宣 部品の製造に関しても、自社の規格通りにつくっても、相手もあることですから、自分のところの規格にあっているからということだけではものになりません。特に車などは建て付けの問題がありますから。今、このような問題が、現場ではしょっちゅう起きています。

心が抜けている

植手稔 計測技術、計測器の校正技術などに関しては、それなりの教育制度があって、それにしたがって教育を受けた人がやっていけばきちんとできます。しかし、顧客の要求を満足するような計測をしているかとか、そもそも何のための計測なのかということを考える事を教育する事が重要ではないかと思います。
 先日、ある自動車メーカーと交流会を開いた際に、そのメーカーの方は計測に関して「最近、心が抜けているのではないか」と話していました。同感できるものがあります。

計測マネジメントの必要性を認識してもらえる規格だ

粂正光 私は名古屋市内の化学会社を定年になってから15年経ちました。最近の10年は適正計量管理事業所の派遣計量士として活動をしています。
 JISQ10012ですが、解説に良いことが書いてあるなと感じました。特に解説図1〜4は参考になります。私の場合、事業所から計測器の管理、校正を主に依頼されています。私は「そうではありません。計測計量の全般の管理です。例えば何の目的で計測器を買うのか、要求精度や環境条件など買う前によく検討し、買った計測器をどう使うかです。検査するだけではダメです」と言ってきています。
 しかし、購入側へはなかなか波及していきません。計測器の検査の段取りをする計量管理主任者との接触はありますが、計測器を実際に買う人は設計技術者であり、製造担当者です。この人達との接点はありません。事業所全体でもっと計量士を活用し、計量管理主任者を増やし、計測の教育訓練をしなければなりません。とりあえず計測器を買うときには何のために、何をどのように測定しようとしているか、明確にすべき運動を始めました。
 10012を推進するには、事業所を巻き込まなくてはなりません。しかし現状は、計量士には合否の判定のみを要求されるのです。しかし合否のほか使用の条件を付ける場合もあります。これがあまり歓迎されません。それでも検査の都度、計測器の使い方に関する意見とか、計測器の使用環境の改善への意見などを連絡します。
 10012はこういったことを会社にきちんと認識してもらうために役立てることができます。よい規格ができたと思いました。

全社的でないと不都合が

廣瀬幸造 最近、国内の一流メーカーといわれる会社の方と話をする機会がありました。私どもが不合格判定をして、「計量器を買い換えてくださいね」と言うと、買い換えてくださるのですが、計量に対する考え方が全社的に普及していませんから、計量器を実際に買うのは計量器のことは何も知らない購買部の方です。そうすると、経費のことだけ考えて、取引に使うはかりなのに、検定が付いていないものを買ってしまったりということがあります。
 また、「このはかりは不合格ではないですけれど、こういう使い方はしないでください」と言うと、「それは合格なのですか、不合格なのですか」というようなことで、単純にジャッジだけを求められることが生じたりします。

計量士の立場ではやりにくいことも

中野廣幸 取引に検定が付いていないはかりを使うというのは論外ですが、検定が付いているはかりであっても、プラスチックでできているはかりを肉屋さんで使っている例があります。そうすると使っているうちに割れてくるのですよ。使い道を考えると、こういう使い方は、はかりの適切な使い方ではないわけです。業種やはかりが使われる環境などを考えて、適切なはかりを導入するアドバイスを、計量士としてできばよいのですが、私はそこまではやれていないですね。
 生産事業所に所属していたときには、製品開発にも関わり、提案などもしていたのですが。計量士としての仕事の中では、さまざまな関係などもあって言いにくい場合もありますね。そういうところも、考える必要がありますね。

買うべき計測器を先にアドバイス

阿知波正之(司会) 私も企業にいましたから、その経験から言うと、計測器の選定でいえば、PDCAサイクル(事業活動における生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手法の一つ)の活動が計測管理において活用されていない気がします。
 私はこのサイクルの妥当性の確認のチェックの部分(点検・評価)で、計測診断という活動を盛んにやっていました。現場へ行って点検して、まずいところがあれば指摘して、改善に結びつけていました。
 そういう活動の中で、計測器を購入する場合に、すでに計測器を買ってしまってから、それに対して「この計測器ではダメですよ」と言っても、まったく歓迎されません。マネジメントとして最低です。
 そうではなくて、現場で一番喜ばれるのは、「こういう用途にはこういう計測器を推奨します」というのを、先に早く提示することです。

マネジメントの範囲はどこまでか

どの範囲までマネジメント必要か

阿久津光 三菱重工業(株)名古屋誘導推進システム製作所(名誘)には3万点くらいの校正対象計測器があります。その中の300から400点くらいを特別に計測器メーカーへ校正に出すことになりました。私は計量管理部門なので、校正の記録などを確認したのですが、そうすると、「このメーカーのこの機種は壊れやすい」「この機種は1年で不合格になる」などという傾向がわかります。
 そこで、交換が必要な計測器を購入する際に、「このメーカーのこの機種は買わない方がよい」というアドバイスをする活動をしました。これは現場で非常に喜ばれましたので、活動として継続していきたいと思っています。
 先ほど「何のために測っているのか」をきちんとやる必要があるという話がありました。10012を導入していく上で、今の話は大きく2つのことを含んでいると思います。
 1つ目は、なぜこの計測器を使わなければならないのか、たとえば、なぜノギスではなくマイクロメータでなければならないのか、ということです。これが現場ではだんだんわからなくなってきていると思います。2つ目は、なぜここを測らなければならないのか、ということです。
 つまり、計測技術の話なのか、設計技術の話なのか、ということです。そのあたりが難しいなと思っています。たとえば、この部分は5回計測しなければならないとすると、現場の工作部門の人全員が、5回計測しなければならない理由を知っていなければならないのか、ということです。そのあたりを、どこまで普及させるべきなのかということが悩みどころです。作業をする全員が理由を知っている状況がよいのはもちろんですが、そういう知識を全員が持つことは不可能なので、どこまでマネージメントすべきかということです。
 計測の際には、計測する人の個人差による誤差があります。これもどこまで管理していくべきなのか。実際問題として、千人以上の作業員全員の計測技術における個人差を把握してしっかり管理できるものなのか、というマネジメントの問題があります。
 10012の規定を忠実に守ろうとすると、一人一人の計測能力を管理するところまで考えなくてはならないのかな、という感じがあるので、そのあたりを皆さんがどう考えているのか、伺えればと思います。
植手稔 昨今、国内の工場でも社員ではない人が大勢生産に携わっています。検査も請負などでやっている場合があります。その人たちにまで、計測する意義の理解や計測の心を持ってもらうことが必要なのかというところです。
 製品の機能を計測のパラメータに変換するのは、研究開発や技術部門がやりますし、どういう規格にするかなども技術部門などの上流のところで決まります。つまり、プロセスはこれらのところでほとんど決まってしまいますから、ここの部門では計測に関してきちんと理解されている必要がありますが、上流がしっかりしていれば、必ずしも現場の作業者に、計測の心まで教える事は必要ないかなという気がします。

自行程完結でやっている

田中亀仁 当社では、「自行程完結」ということでやっています。少なくとも自分の仕事は自分で完結しましょうということです。「あなたのお客さんは誰ですか」という問いかけをしています。製造の人にとっては、次の行程(後工程)の人がお客さんですね。ですから、「後工程の人にはちゃんとしたものを渡しましょう。そのために必要な管理はきちんとやりましょう」ということになります。これを順に遡っていけば設計に行き着き、最終的には顧客に行き着きます。
 私もすべての人に計測の思想を持ってもらうことは無理だと思います。しかし、少なくとも会社のトップの人たちには、「顧客のために計測するのだ」という考えを持っていて欲しいですね。
阿久津光 計量機能によるマネジメントをどの層にまで適用するのか、その線引きですよね。そのあたりが自分でもわからないですね。

作業者に適合したシステムをつくる

阿知波正之(司会) それぞれの行程の中でどういう人が携わるのかということですね。その人(作業者)に適合したシステムを導入していくということです。たとえば、未習熟な人が従事する行程ではその人がその行程にパッと入ってきても計測できるようなシステムをつくることです。そういう環境をつくるというか、広い意味でのマネジメントがしっかりしていればよいと思います。なかなか、心まで伝えるというのは難しい。

顧客に迷惑をかけないシステムを

植手稔 結果として計測計量が悪くて、顧客に絶対に迷惑をかけてはいけないので、そうならないための計測マネジメントシステムに変えないといけません。

第3者認証方式でという要望も

欧州では計測器メーカーが取得

中野廣幸 ヨーロッパなどの状況を見ると、ISO10012は計測器メーカーが取得しています。それは、製造メーカーに対して、計測器メーカーがISO10012を使ったソリューションとして提案するということです。その能力を製造メーカーに対して誇示するためにISO10012を使っているのです。この規格は、そういう使い方もあるのです。
渡辺雪宣 日本ではどうですか。

第3者認証はないのか

中野廣幸 遅れています。私も(社)本計量機器工業連合会や同会が開いた展示会などで説明をしましたが、「興味がある」という反応はあります。しかし、一方で「第3者認証は取れないのか」という声があります。
植手稔 まだ、10012は認証システムはできていません。ですから、日本の企業はどこも取得していません。

アメリカは独自規格

伊藤佳宏 先ほど阿久津さんが、たくさんの計測器を計測器メーカーに校正に出したという話をしましたが、その経緯をお話ししておきます。
 三菱重工業_竃シ航・名誘では、90数%の計測器を自社で校正しています。しかし、アメリカの連邦航空局(FAA)によるサーベイランスで、JIS等に準拠して作成した自社校正マニュアルではダメだと言われました。アメリカの計測器の校正規格(ASME等の工業規格)に則っているか、計測器メーカーによる校正もしくは計測器メーカが承認した手順に基づいた校正でないとダメだというのです。FAR(Federal Aviation Regulations:米国連邦航空法)にそのように書いてあるのです。それで外部へ校正に出したわけです。
 かつて計測器のトレーサビリティでやはりNISTトレーサブルでなくてはならないといわれたことがありました。しかし、MRA(相互承認協定)により(独)産業技術総合研究所の計量標準にトレーサブルであればよいということになりました。
 しかし、今度はプロシディア(手順)のことを言い出したのです。JIS規格もISO規格でもダメだというのです。
 ヨーロッパはそうではありません。ものをつくるための計側管理であるISO10012ですね。これはグローバル規格です。ところがアメリカは今でもZ540-3という独自規格です。10012ではありません。
 Z540-3は計測器の管理に関する規格です。10012より後に改訂されていますから、アメリカは10012を使わないということでしょう。FARも、あくまでもマネジメントではなく、計測器の管理です。

第3者認定なら認める

阿久津光 ここで第3者認定が絡んでくるのですが、10012が第3者認定で取れるようになれば、認められる可能性があると思います。自己宣言ではダメだと思います。
 今回のFARの問題でも、当社の校正周期の決め方などを説明したのですが、「では、その周期を決めた根拠は何なのだ」と言ってきます。しっかり根拠を示しなさいということです。では、根拠を示すものがどこかに書いてあるかというと、これがないのです。国際試験所認定協力機構(ILAC)の指針がありますが、これにも自分たちで決めなさいとなっています。根拠が示せないなら、その計測器をつくったメーカーが一番それをよく知っているのだから、計測器メーカーに校正に出しなさいということになったのです。
伊藤佳宏 社内校正できないと、相当な出費になります。10012では、「必要なことだけやりなさい」となっていますね。FAAを外せば、10012でやれるかなあと思っています。

米国内工場と同じ基準でやらせる

阿久津光 今までは、それほど厳しい要求はありませんでした。アメリカの景気の問題もあるのでしょうが、FAAは、アメリカの国内工場と同じ基準でやらせるようになってきました。アメリカの航空法規がそういう内容になっているのです。

ぜひ第3者認証方式で

当社の場合、エンジン関係製品をつくっているので、顧客のほうから10012に準拠してやってくれという要求も出始めています。  ロールスロイスとかプラット・アンド・ホイットニーなどのエンジンメーカーとの契約も、修理をするのか新規に製造するのかで違ってきますが、FAAとの関連もあり、要求が厳しくなってきています。それに対していちいち10012のやり方はこうですよ、と説明するのも大変です。したがって、第3者認証があれば、「これでちゃんと公的に保証されています」と一言で言えます。10012規格はぜひ第3者認証の方式にしてもらいたいと思います。

当初は自己認証の要望強かった

中野廣幸 これに関しては、最初2007年にヒアリングをしたときに、第3者認証は煩わしいという声が多く出ました。そこで、普及させるためにも自己認証というアイデアが出てきました。

第3者認証には問題も

最近になって、逆に第3者認証方式でやって欲しいという意見が出てきています。ただ難しいのは第3者認証は計測のプロがやらなければならないので、これを誰がやるのかということです。
 それとデータだけ見ていたのだけではダメで、プロセスを見なくてはならないので現場に行かなくてはなりません。そうすると、審査に時間がかかってしまうという問題があります。

韓国の仕組みが参考になる

田中亀仁 私は「(社)日本計量振興協会が認証機関になればよい」とずっと言っているのです。ただ、現場のことをどれだけ知っているかという点は弱点だと思うので、そこは計量士をうまく活用したらよいと思っています。
 韓国では、ISO17025を導入する時に、韓国計量測定協会(KASTO)がシステムの審査をして、技術関係の審査は企業の社員を登録してやるようにしました。この仕組みが参考になるのではないかと思います。

現場での測定管理

阿知波正之(司会) 現場の測定の状況を審査されている方はいらっしゃいますか。
田中亀仁 自社で、監査の前に事前監査するくらいです。

必ず現場で

渡辺雪宣 ものづくりでの品質管理ということで、現場が顧客満足を実現させることをやっているかということは、判断しています。書類中心ではなく、必ず現場に行ってやっています。

測定結果から改善点を指導

廣瀬幸造 質量の量目検査をやっています。私が行っているところでは、粉体なり流体ですね。パッカースケールやホッパースケールで計量します。実際に計量してみて、量目公差の範囲内で正しく計れているかどうかを見ます。そして、計量結果に基づいて、落差、集塵、水分、などを調査し、計量方法や環境などで改善点があれば指導をしています。
阿知波正之(司会) 量目検査の結果から、計った結果が信頼できるのか、どこに問題があるのか、問題点の原因がどこにあるか、を明らかにして指導されているわけですね。これは品質に関しても同じことですね。

測定結果の信頼性を毎日チェック

小松屋隆一 当社は素材メーカーなので、アルミニウムの塊はいくらでもあります。秤量器によっては、積載位置が固定されているため意図する位置に分銅が載せられない物もあります。その場合、生産形状と同等のアルミニウムの塊(予め質量を求めておいたもの)を近くに置いておき、毎日秤量させています。それで計測の結果が正しいことを確認しています。ゼロ点確認だけではダメなのです。そのような指導は、常日頃からおこなっています。
 さらに、分社化によりグループ会社が所持している秤量器の管理方法についても、今後の課題となっています。また、最近はグループ会社から、要求精度に合わせた秤量器の購入について相談を受けるようになり、良い傾向だと思っております。

現場へ出る機会が減っている

阿知波正之(司会) 私の経験からも、現場へ出て、どういう目的で、どういう測定をしているのかを知ることが、非常に役に立っています。しかし、そういう機会が最近は少なくなっている気がします。
阿久津光 現場の人と仲良くなれば、計測に関していろいろと相談を受けるようになります。しかし、組織だってはやっていないですね。
中野廣幸 新製品などを製造するときは、計測方法などの手順や注意点などを知らせていましたが、その内容がなかなか徹底されません。始めに何を測るのか、ということがわかっていないということがありましたね。
阿知波正之(司会) 一般的には工程表に、どういう計測器を使って、どういう項目を測れ、というようなことが書いてあります。

計測の視点から見ることが仕事

植手稔 現場へ行ったら、極力、計測の視点から見ることが私の仕事だと思っています。そして、そのような計測視点で見ることができる仲間を増やすことが、一番大事だと思っています。

現場で計量技術向上させた

伊藤佳宏 現場とのコミュニケーションは大事ですね。  私の経験では、1960年代年から1980年代くらいまで、精密計測を一所懸命に追求しなくてはならない時代でした。計測器の精度もあまりよくありませんでしたから、相当苦労しました。ところが、現代では計測器の進歩も著しいですし、加工技術も当時に比べて数段向上しています。
 その頃から当社では、精度比10対1というのをかたくなに守っています。これはアメリカの計量管理の仕様書から求められたものでした。そして、標準器と計測器の精度比は4対1です。
 当時はこれを実現するのは相当大変でしたが、今はそれほどコストをかけなくても、10対1の比率を守ることができます。計測器にコストがかかるということは、今はあまり感じなくなってきました。
 例をあげると、油を切り替えるサーボバルブのスリーブとスプールのクリアランス(隙間)の公差が、2μmから4μmを要求されるのでその公差は2μmでした。クリアランスが小さいとバルブがスティック(固着)しますし、大きすぎると油の内部漏れをが起こしコントロールがルーズになります。さらに部品の表面粗さと円筒度が問題ですが、これを0.01μmとか0.1μmで管理しなければなりません。
 したがって、新しい加工機械が入ると、加工品を外国製の高価な真円度測定器とか真直度測定器だとかで検査しました。それぞれの現場と計量技術を高めるために技術交流も盛んにやったものです。現場の計量技術は相当に上がりました。

計量確認とは何か

阿知波正之(司会) JISQ10012の要求事項には「計量確認」というのがあります。計量確認とはなんぞやという問題です。
伊藤佳宏 JIAQ10012の神髄ですね。

計量確認の内容は、校正と検証

中野廣幸 計量確認には2つのステップがあります。1つ目は校正です。2つ目は検証です。計測器の計量特性が使用目的に合致しているか確認しなさいということです。校正と検証をやりなさいというのが、10012の計量確認の内容です。
 ISO9001の場合は、校正「または」検証となっています。
伊藤佳宏 これまでの計測管理では、検証というのはほとんどやっていませんでした。ただ、ものづくりにおいて、量産品では必ず「初品検査」を、計測器を使ってやります。製品規格を満足しているかという検査を徹底してやります。その中で、計測器もこれが使えるものであるかどうか試されるわけですから、これが計量確認かなと思います。そういうシステムはあります。
粂正光 私は、現場での計量確認を次のように考えています。前回まで検査校正結果と今回の校正結果に差があれば、その間の測定が間違でないかを疑い、連絡書を発行し測定の目的、必要精度、それを外れた時の処置を次回までに調査して貰い、今後の参考にしています。ズレが大きい計測器は使用現場の人に、周期を定めてダミーの分銅を載せたり、キャリブレーションをお願いし傾向管理をしているケースもあります。

検証とは具体的には何をするのか

廣瀬幸造 計測器、はかりでいうと、壊れやすさ、感度、ばらつきには、メーカーによる特性、傾向があります。今までの適正計量管理事業所であれば、はかりの定期検査は、使用公差内にあれば合格ですね。
 10012では、どのような検証が要求されていますか?
伊藤佳宏 計量法では量目検査で始めて、検証の概念が入ってきますかね。
粂正光 現場ではどのように計量確認をするのかといったら、はかりなら、ダミーの分銅を載せるという方法もありますね。私は、次の校正周期がきたときに校正結果がずれていれば、報告書にコメントを入れます。
伊藤佳宏 10012でいう計量確認を、はかりを例にとって考えてみます。まず取引・証明で使うはかりは定期検査をしますね。この場合は、取引・証明の目的に適した計量器かどうかということが検証ですから、検定証印が貼付してあり、定期検査に合格すれば、検証はできたと考えます。
田中亀仁 私は、同じ特定計量器であっても、肉を計る場合と、ダイヤモンドを計る場合は、必要とされる計量器の能力が違いますから、その計量目的に合ったはかりを使っているかどうかの検証が、計量確認だと思います。
伊藤佳宏 そうですね。意図される用途に、使用される計量器が合っているかどうかですね。
中野廣幸 一つ例をあげます。茶屋でひょう量6kgのはかりで、20gのお茶を計っているのです。こういう例はいくらでもあります。
伊藤佳宏 製薬会社が使っている天びんは精密なもので、ほとんどが特定計量器ではありません。定期的に校正をしていると、大抵1年経つとスパンがずれてきます。しかし、使い方を見ると、差を求めるだけですから、スパンが少々ずれていても問題ないわけです。ですから、これは計量確認ではOKなわけです。取引証明に使うはかりだったらダメということになります。
廣瀬幸造 分析用の天びんは、ほとんど自動キャリブレーションが付いています。しかし、私も検査をやっていますが、やはりスパンがずれてきます。ですから、私は必ず天びんの使い道、計量目的を聞くようにしています。それをもとに指導をするようにしています。
阿知波正之(司会) 計量確認とは、計量器の校正だけではなくて、計量目的に対して適切な計量器であるかどうかを検証しなさいとなっていますからね。

使ってもらえる規格を

田中亀仁 計量確認もそうですが、規格の本文だけを見てもよくわからない点がありますね。実は、実際に使ってもらえる規格をつくりたいということで、JIS規格原案の作成委員会は2つに分かれて作業をしました。1つ目は、原文を日本語にきちんと翻訳をするグループです。2つ目は、ガイドをつくるグループです。私はガイドをつくるグループに所属して作業をしました。よい経験になりました。
中野廣幸 私は翻訳グループだったのですが、非常に縛りが厳しかったですね。わかりやすく訳そうとすると、「原文に忠実に」と言われるのです。

ガイドを本にしてもらいたい

粂正光 分10012は30Pの比較的薄い規格です。原案作成にあたって(社)日本計量振興協会の委員会で分厚いガイドを作られたようですが、全部は載っていませんね。ぜひ、JISZ9090(測定−校正方式通則)のように、副読本(JIS使い方シリーズ「校正方式マニュアル」田口玄一編)の形にして出して欲しいですね。

『ISO/JISQ10012計測管理規格調査報告書』

阿知波正之(司会) 日計振の報告書『ISO/JISQ10012計測管理規格調査報告書』がそれに該当すると思います。

実際の運用をどうするか

伊藤佳宏 計量確認したものは別のデカルをつくる、そういう計量器をどうマネジメントするか。たとえば、試験装置などで使われる計測器は専用の計測装置です。これは計量確認しますから、そういう計量器と、一般の汎用計量器は別のマネジメントをせざるを得ないのではないかと思います。
植手稔 計量確認の検証のとらえ方ですが、これは、使用している計測器が、計量目的に適したものかどうかを検証することです。汎用の計測器であっても同じで、これは汎用で使用する目的だから、その汎用で使用目的に合致しているかどうかの検証になります。
伊藤佳宏 現場の汎用計測器は、これがどういう目的で使われるかということはよく分からないですよ。貸し出して使っていますから。
植手稔 私は、計量確認はその工程で使用しているすべての計測器に関して必要だと思います。歴史的にどういう経緯で導入したか、誰が使っているのか、どういう作業で使っているのか、ということは管理帳簿などからそれなりにわかると思いますが。
伊藤佳宏 運用は簡単ではありません。専用の計測器と、貸し出しして誰が使うかわからない計測器は区別する必要があります。
 ボーイングでは、識別した管理をしています。インパクトレンチの校正は、専用の機材を使って、手順も決めて現場で自主校正をやっています。
阿知波正之(司会) たしかに、運用は難しいですね。
阿久津光 汎用の計測器は計測部門が一括管理しないと、誰が何の目的で使ったのかということは、管理できないですね。それを、何千点、何万点という計測器でやっていくのは、あまりに煩雑すぎる気がします。
阿知波正之(司会) PDCAのチェックでは、製造工程を定期的に監査すればよいというものです。
伊藤佳宏 私は、実際の運用では、分けてやるほかないと思います。
廣瀬幸造 最初に、10012的に管理している計測器と、そうでない計測器に分けておいて管理すれば、それぞれ要求される目的にかなった管理をしているということで、問題はないのではないかと思います。

全部やれとは言っていない

田中亀仁 10012では、全部の計測器に関してやれとは言っていないのですよ。「必要な計測器に関してきちんとやりなさい」といっています。

生産管理用と品質保証用に分けて管理

小松屋隆一 当社は、生産管理用と品質保証用に分けて管理しています。品質保証用の計測器に関しては、必ず記録簿に校正結果を記録することを条件付けとし、管理しています。そういう意味では、計量確認は出来ているのではないかと思っています。
伊藤佳宏 実際にはやっているのですよ。

不確かさの出し方を簡易化して普及へ

阿知波正之(司会) 測定の不確かさの、現場での活用に関してお話しいただきたいと思います。

アレルギーがある

廣瀬幸造 不確かさに関してはよくわからないので、不確かさという言葉を聞いただけでアレルギーがあります。

概念がはっきりしなくては意思疎通ができない

横田俊英 「不確かさ」(uncertainty)というのは、わかりやすく言うと何のことですか。
 どうしてこういう質問をしたかというと、現場へ行って直接「不確かさ」ということを言っても、受け取る側のイメージがバラバラでは、同じ話をしているように見えて、実際には違う話をしているということが起こりうるからです。

不確かさとは

阿知波正之(司会) 一言で言うと「誤差の大きさ」でしょう。それが一番わかりやすいと思うのですが、誤差が測定値と真の値との差という定義であるため、真の値というのはわかりませんから使えなくて、難しくなったと思います。
田中亀仁 「測定値の確からしさ」でしょう。
伊藤佳宏 「測定値のばらつき」に近いのではないですか。
田中亀仁 昔は、誤差の内容にばらつきも入っていました。
植手稔 「精密さ」とか「正確さ」ですかね。
伊藤佳宏 「測定値の偏り」と「測定値のばらつき」を含めた概念だと思います。
阿知波正之(司会) JISZ8404-2:2008では「測定の不確かさ」(uncertainty of measurement)について、「測定の結果に伴う、合理的に測定される量に結びつけられ得る値のばらつきを特徴付けるパラメータ又はパラメータの推定値。これは測定結果に付記される」と定義しています。
 JISZ9090では、「不確かさ」という言葉は使わずに、「使用における誤差の大きさ」と言っています。一般的には、このような言い方のほうがわかりやすいでしょうね。
粂正光 私はこれを不確かさのことだと理解しています。
伊藤佳宏 偶然誤差であるばらつきと、補正できない系統誤差を合成したものです。それを国際的な考え方でまとめたものであると考えています。
中野廣幸 この言葉の受け取り手が、不確かさがわからないというのは、受け取り手の中に不確かさの概念がないからです。長さの測定結果が5cmと出ても、それは正しく5cmであるとは限らないということを、考えたことがないのです。なぜか、学校の教育で教えないからです。ですから、一般の人に分からせるというのは至難の業です。
横田俊英 公差の半分くらいと考えれば、そう間違いではないでしょう。
阿知波正之(司会) 現場では、「ばらつき」といったほうが通じます。逆に、計測の専門家のほうがばらつきを認めたがりませんね。測定の不確かさを認めたくないのです。

不要な要因が入っている

田中亀仁 JCSS(計量法登録校正事業者制度)の校正における不確かさは、入れなくてもよい要因まで入れて、計算させているのが実態だと思います。標準不確かさだったら、10分の1以下でしたらほとんど寄与しません。一番大きいものが1%ぐらいで、下が0・1%だったら、それは無視してもよいのです。しかし、JCSSの場合は、この要因は絶対に入れなさいということでマニュアルにしてしまっているので、その項目がないとダメなのです。
阿知波正之(司会) 最近は「有効自由度」の話が出てきて、標準不確かさの信頼性は、その中で寄与率が75%に達すれば自由度の評価はしなくてもよいとも言われているようですが。
田中亀仁 電圧などを校正する場合に、熱起電力というものがあります。「プラスとマイナスを入れ替えて熱起電力を総和しなさい」とされていますが、現実問題としては、1mVの電圧を測る場合などでは、熱起電力はコンマ数μV程度しかありません。しかし、その項目を入れないとダメなのです。

不確かさの2つの活用法

阿知波正之(司会) 昨年、不確かさの活用に関する委員会を(社)日本計量振興協会(日計振)が設置して検討をしました。

ガードバンドへの活用

 不確かさの活用の方法としては、1つ目はガードバンドへの活用です。ガードバンドというのは、規格に対してばらつきの部分が判定に影響しないように、ばらつきの幅に相当する部分を内側に設定して、適合性を判定するというものです。

製品のばらつきを減らせる

 2つ目は、測定のばらつき自体が、製品のばらつきに影響するだろうということです。二乗で効いてきます。不確かさはばらつきが要素ですから、工程における測定の不確かさを改善すれば、必ず製品のばらつきを減らす成果が得られる、ということです。
 不確かさの活用として、こういうことを進めています。不確かさを調べて改善すれば、必ず効果があります。

なかなか活用が進まないのが現実

 ところが、先ほど話に出たように、不確かさというとそれだけでアレルギーがあって、なかなか進まないというのが現実です。
 不確かさは、ISO17025に見られるように、校正の不確かさから入ってきていますので、校正では不確かさは活用されています。しかし、現場における実際の測定に活かしてこそ、本当の不確かさの活用であると思っていますが、なかなかそこまで入っていません。

計量のトレーサビリティが取れていない

中野廣幸 計量のトレーサビリティというのは不確かさの連鎖だと言っているのに、一番肝心な現場の不確かさがわからないですね。上へは繋がっているが、下へは繋がっていないということになります。つまり、これでは計量のトレーサビリティは取れていないということになります。

バジェットシートで「見える化」

阿知波正之(司会) 現場の測定の不確かさが、実際に大きな問題です。つごうがよいことには、バジェットシート(不確かさの推定値を計算するための計算シート)を書くと、何が不確かさを大きくしている要因なのかということが、ある程度わかることです。「見える化」ですね。ばらつきの要因としては、測定方法とか測定対象などのものに起因することも多いですね。
 不確かさを調べる方法をより簡易化して、普及を図っていかなければと思っています。
伊藤佳宏 JISQ10012では、不確かさの扱いはどうなっていますか。

問題はデータを信用してしまうこと

中野廣幸 「推定をしなさい」ということです。それ以上でも以下でもありません。問題は、みんなが不確かさを推定しないで、測定したデータをそのまま信用してしまう点です。測定データには、必ず不確かさがあります。
 私の経験では、不確かさが大きい測定をすればデータがばらつきますので手を打つのですが、これを製品に対して打つのですね。そうすると、手を打ったつもりが、また不確かさが大きい測定をしてしまうので、レスポンスとして返ってこないことになります。ですから、どんどん袋小路へ入っていくことになってしまい、慢性不良としてずっと残ってしまうことになります。
 ですから、自分の測定が適切な不確かさであるのか、確かめる必要があります。

データの信頼性をあらわす尺度

廣瀬幸造 不確かさというのは、測定したデータが確かですか、信頼できますか、という理解でよいですか。
阿知波正之(司会) そうです。測定結果の信頼性をあらわす尺度が不確かさです。
阿久津光 JCSS校正であらわされるのは測定器の不確かさで、実際に工程で使われる不確かさは、測定者の能力も含めた工程での測定能力の不確かさになると思うのですが、JISQ10012ではどちらの不確かさを調べなさいといっているのですか。

測定能力の不確かさを推定

阿知波正之(司会) 測定能力の不確かさを推定するということです。それを今、進めていこうとしているわけです。現場で実際の製品をノギスで測定したらどのくらいの不確かさがあるのかを推定しなさいということです。
阿久津光 一般人の測定の不確かさを調べて、測定器の不確かさにそれを上乗せすることになりますね。
粂正光 現場での測定の不確かさを求めるのは、なかなか大変です。JISZ9090(測定−校正方式通則)という規格は、制定が1991年ですから、もう20年になります。これの附属書2を適用すると使用における誤差が出ます。私の使い始めは1994でした、当初は計測器の使用における誤差を求めていましたが、最近では不確かさとして取り扱っています。
現場で使用されているすべての計測器の不確かさを求めてはいません。購入した計測器が不安定とか、定期検査の校正ズレなど問題がありそうなものを対象にします。誤差因子の割り付けにより不確かさの大きさや、傾向が数値化されます。それをベースに改善をしていきます。正しい測定が出来ることにより、最終的には製品のバラツキを少なくすることを目標にしています。
廣瀬幸造 そうすると、もとは校正の不確かさで、不確かさがきちんと表示された校正をされた計測器で測っているというのが前提で、それで測定結果に大きな不確かさがある場合には、測定の不確かさが大きいですねという話になるのでしょうか。

10012は不確かさを活用する

伊藤佳宏 JISQ10012では「不確かさを推定しなければならない」と言っていますが、ここには「不確かさを活用するのだ」という考え方があると思うのですよ。17025で計測器の不確かさは押さえていますね。その時には、環境条件を含めて測定条件をきちんと示して不確かさを出しています。たとえば長さ計ですと、温度特性や熱膨張係数ですね。その計測器を使って現場で測定をする場合には、同じような条件です。ですからそこで不確かさは十分にクリアされています。
 計量確認には不確かさ、ドリフト、偏り、安定性、最大許容誤差、再現性、繰り返し性、操作者の技能水準など、さまざまな要素を使わなくてはなりません。その中でも、不確かさは特に注視しなさい、ということですね。
阿知波正之(司会) 計測器の校正と異なるのは、現場では、たとえば測る製品に油が付着しているとか、また真円度の測定ならば、測定する場所が決まっていなかったなど、ばらつきを大きくするさまざまな条件が付加されます。そういうものも含めて評価しなさいということです。
伊藤佳宏 不確かさを重視しなさいということですが、計測器の不確かさはわかっています。また、今は測定も自動測定がほとんどです。そうすると不確かさは決まってきます。
阿知波正之(司会) そのとおりですが、現在あるシステムの不確かさを確かめている例はほとんどありません。
伊藤佳宏 顧客によっては、Cpk(工程能力指数)で要求する場合があります。
阿知波正之(司会) 不確かさの議論をしているのは、現場で不確かさを把握している例があまりにもないからです。ですから、それをあらわす必要があるということです。
植手稔 現場での測定の不確かさはほとんど出されていません。現場における不確かさは相当に大きいと思っています。

一般的な工程でも必要か

伊藤佳宏 精度が高い作業を要求される工程では必要だと思いますが、計測器の精度も上がっているし、ほとんどが自動計測になっている一般的な工程では、そんなに神経を使う必要がないのでは。

判断するための不確かさがない

阿知波正之(司会) そうですが、不確かさを出してみなければ、神経を使う必要があるのかないのかということも、本当にはわかりません。現在は、それを判断するデータが何もないのです。
田中亀仁 たとえばマイクロメータの器差はプラスマイナス2μmであるといえば、普通の人はこれが不確かさだと思ってしまいます。しかしそうではなくて、この中には測定する人の技術とか、計測器を使う条件とか、いろいろなものが入っているので、それをちゃんと考えなさいというのが、10012が言っていることです。
 ノギスなどで目量が0・05mmだったら不確かさは0・08mmであると言っていますね。こういう、ある程度想定できるものは、それをそのまま使えばよいのです。
 このように一般化されているものはそのまま使ってよいけれども、不確かさがわからないものは一回推定しましょうというのがこの思想だと思います。
中野廣幸 扇風機の羽根の測定ですが、材質はプラスチックです。ですから、羽根のセンターは真円であるわけはないのです。それを計測器でちょっと測ってOKだと思い、扇風機に取り付けると揺れが出るのです。計測の不確かさと使う不確かさが違ってきてしまうのです。対策は、使う不確かさを再現できるようにするか、それとも、全体的に不確かさを小さくしていくか、のどちらかということになります。

不確かさを入れたくないという考えが

小松屋隆一 不確かさに関してはあまり力を入れたくないですね。われわれ品質保証を担当する部署は入れても構わないのですが、製品技術などの品質設計をする部署は、不確かさが規格を超えてしまうとまずいので、入れたくないという思いが強くあります。その辺りがなかなか難しいところで、設計と品質の折り合いをどのように進めたらよいのかという課題が多々あります。

工作部門は取り入れていない

阿久津光 当社の技術部門は不確かさを使っています。計測器の精度が、自分たちが測ろうとしている目的に対して、十分かということです。温度条件などを入れて何度も試験をします。そこでばらつきを求めて、そのばらつきの大きさが要求を満たしているかどうか確認します。
 しかし、量産をするときに、工作部門が一つのものを何度も測定して、自分たちの計測能力がどのくらいばらついているか、ということ出しているかというと、これはやっていません。
 それは計測部門がやるべきことなのか、工程の品質能力を高めるための生産技術的なものと考えるべきなのか、どうなのでしょうか。

全部やる必要はない

阿知波正之(司会) 取り入れている会社は、工程の改善計画を決めるときに評価をしています。工程改善計画の中に不確かさの改善ということを入れています。
 全部やる必要はありません。工程能力が十分にあるところはやらなくてもよいのです。不十分なときに調べると、いろいろと見えてくるのです。
小松屋隆一 当社は注文が入ると規格を先に決めてしまうことが多いので、不確かさの評価を先にすることは厳しいですね。

不確かさを使いたくないという声も

阿久津光 問い合わせを受けたのですが、計測器のばらつきが大きすぎるので何とかならないかというのです。
 当社も、エンジンの製造などでは規格が先に決まっているので、それに何とか入れ込まなければなりません。そうすると、その条件をつくるためには計測器のばらつきが大きすぎるのです。そこで、不確かさを使おうかというところまではきました。
 しかし、計測器の校正の不確かさだけでは、経年変化とか条件の変化により、1年後はどうなっているかわかりませんね。そうすると使いたくないという話になってしまうのです。
伊藤佳宏 JCSSの不確かさでも、計測器の規格と比べると、校正値の不確かさが規格の値よりも大きいものもいっぱいありますね。
阿知波正之(司会) 昨年度の調査の中での不確かさの適用事例ですが、ISO/TS16949のMSA(Measurement System Analysis)のR&Rを使ったものがあります。
 そこはガードバンドを広く取っていましたが、R&Rが小さかったので、許容差を広げて工程内不良を下げたということです。

リスクとの兼ね合いで

植手稔 現場では、不確かさの話があまり出てこないのです。ほとんど気にしていません。おそらく、測定の不確かさを含めても結果的には規格の中に十分収まっているからだと思います。
 安全に関わる計測とそうではない計測とは、きちんと識別されており、管理も別になっています。意識はされていませんが、測定の不確かさを加味しても充分マージンを持った管理がされています。
 私たちは、測定の不確かさが絶対にあるということはわかっているのですが。やはり、これもリスクとの兼ね合いで、不確かさの推定をしたらよいのではないかと思います。

測定方法の不安定が影響

阿知波正之(司会) 計測器そのもののばらつきの問題よりも、現場の測定のばらつきの問題が遙かに多いのです。その際、一番の原因は測定方法が不安定だということです。
田中亀仁 加工のラインは昔はゲージで測っていました。それを最近は三次元測定機で測っています。しかし、うまく測れないという問題が出てきました。それで製品に不良品が出てしまったことがあります。
 原因は、計測器自体の故障ではなく、プローブに付着した塵やアルミニウムの滓でした。そのために測定値がおかしくなっていたのです。部屋の環境(室温管理)の問題もあります。
 これも事前に不確かさをきちんと出しておけば、問題は起こらなかったのです。
植手稔 モーターのハウジングでも真円度が大切です。ところが、製造工程できちんと真円度が出ているにもかかわらず、測定のしかたによっては不良品と判定されることがあります。三次元測定機を使って測定するわけですが、やはりコツがあって、測定のやり方がまずいとちゃんと測れません。

不確かさが大きい分野への適用をどうするか

阿久津光 電気の高周波の測定は非常に気を遣わないと不確かさが大きくなってしまいます。ケーブルの取り回し方ひとつで測定値が違ってきたりします。しかし、これを不確かさに入れるとものすごいことになりますね。メーカーに言っても、配線の曲がりなどはできるだけ急峻に曲げることは避ける等のアドバイスはありますが、大雑把には「感覚です」というような答えが返ってくることが多いです。
 普通の電気の試験装置でも計測器単体で測るとOKなのですが、組み込むとダメなのです。よく見ると、工程改善などで配線を束ねているのですね。そうすると、ノイズを拾ってしまい正しい測定ができないのです。配線がぐちゃぐちゃだからノイズが出ていなかったのに、束ねたためにノイズが発生したのです。計測に関していえば、改善したつもりが改悪になっていたのです。
 電気の高周波測定のような測定の不確かさが大きくなりがちな世界にどのように不確かさを適用していくのか、ということも課題だと思います。
植手稔 EMCの計測器は、試験結果の不確かさが大きいですね。

測定技術の不確かさの問題も

阿久津光 人の測定技術の問題もあります。入社1年目の人と5年目の人では不確かさが違います。
小松屋隆一 一軸試験機において、試験所間で試験値が異なるという問題があったので、試験機の問題なのか、測定する人の問題なのか、調査したことがあります。結果は、人による測定のばらつきでした。そこで、指導に行って個人のスキルを上げることで不確かさを小さくし、試験値を同等レベルにしたことを覚えています。

海外では法定計量にも要望が

伊藤佳宏 環境関係の規制値などはかなり精度が高い厳しい値ですが、法令では不確かさは付けていませんね。
阿知波正之(司会) 海外ではだんだん法定計量にも不確かさを取り入れようという要求が出てきているそうです。環境関連では、サンプリングの問題も絡んできますから、難しい問題があります。サンプリングのばらつきもありますし、分析のばらつきもあります。

放射線量の測定も問題

渡辺雪宣 今、問題になっている放射線量の測定などもまったく同じ課題を抱えていますね。計量目的に合致する計測器を使っているかという問題がありますし、測定技術や測定方法のばらつきも大きいですね。測定する高さも決まっていないとかね。
阿知波正之(司会) 測定においては、決まっていないところを決めることによって不確かさは小さくなります。

検診における不確かさ

植手稔 健康診断の測定結果も数字で出てきますね。この測定値の不確かさは相当大きいと思います。また、測定数値がなくて見た目、感覚で判断する項目の場合の、その判断の妥当性の問題もあります。この場合の不確かさはものすごく大きいですね。
阿知波正之(司会) 検診における誤診率の問題は品質工学でも取り上げられていますが、その損失は非常に大きいのです。再検査のコストの損失が大きいのです。つまり、再検査したらどこにも異常が認められない人が数多く再検査の対象になっているのです。その分はムダなコストです。
中野廣幸 社会的コストがものすごくかかっているということです。
廣瀬幸造 安全率を見込んで再検査の判断をしているのでしょうが、この不確かさをどれだけ小さくできるかでしょうね。難しいと思いますが。

量目関係でも使える

阿知波正之(司会) 量目関係でも不確かさが使えるものがあるのではないですか。
廣瀬幸造 米、小麦粉、飼料などの計量では水分が問題になります、水分が蒸発して測定値が変わってきます。これが一番大きいですね。米には通常約13-16%の水分が含まれていますから。

不確かさの推定で改善できる

阿知波正之(司会) どんな場面でも、ばらつきを評価して改善することによって、品質を改善することができ、効果があるわけです。不確かさという言葉を使うかどうかは別にして、不確かさに注目して工程の改善を進めていって欲しいと思います。
 すべてを調べるのではなく、調査する対象を、改善を必要としているようなものに絞って不確かさを推定すると、効果が見込めます。
 本日は現場の計測管理の新しい課題である、JISQ10012と不確かさについて多くの発言をいただきありがとうございました。

計量計測データバンク>「日本計量新報」特集記事>2011現場の座談会
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