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 計量計測データバンク「日本計量新報」特集記事寄稿・エッセー>首藤郁夫

日本計量新報 2011年10月30日 (2891号)掲載

盛岡、尾去沢、弘前をめぐる

日本計量史学会理事 首藤郁夫

首藤郁夫弘前大学で化学史の学会があるので、便乗して数カ所をめぐることにした。
 最初は盛岡で、近着の「地質学史懇話会会報36号」に載った紀行文から岩手県立博物館へ行く。ここには地質学史の泰斗故今井功先生の蔵書が寄贈され「今井文庫」として収蔵されている。紀行文には、この蔵書についての検分結果が簡単に載っているのでそれに譲る。

 当館のウリは、日本で初めて発掘された恐竜−モシリュウの化石が展示されていることだ。1978年、岩手県岩泉町の茂師(もし)というところで、この恐竜の左前脚、肩とひじの間の骨の一部が見つかった。このあたりには「宮古層群」とよばれる中生代前期白亜紀(1億1千万年前)にあたる。モシリュウの全身骨格はみつからないため、研究の結果近縁の「マメンキサウルス」の全身骨格を展示、参考に供している。
 なお、当館では、地質・考古・歴史・民俗・生物・現勢の資料を展示、岩手県の自然と歴史・文化の理解に役立つ構成をになう。
 博物館で昼食をすませ、ホテルに荷物を預ける。
 あらかじめ「日本洋学人名辞典」で調べた盛岡藩医で沃素の抽出を行った嶋立甫(しまりゅうほ)の菩提寺、法泉寺へタクシーで行く。数日前電話で、盛岡駅からのアクセスをたずねておいたのがよかった。来意を告げると寺の奥様が出てこられ、「先日電話のあった方ね」といわれ、小雨の中すぐ裏手の墓地へ案内して下さった。お墓は背の高い宝筐印塔(ほうきょういんとう)式のものらしいが、先の方が三月の大地震で落ちたので、修理した由だった。お参りをすませると、お茶でもめしあがれと招じ入れられ、加えて嶋章東北大学名誉教授による嶋立甫に関するエッセイのコピーを下さり、タクシーを呼んでくださった。

 ホテルで、いただいた資料を拝見すると林良重先生(故人、化学史家、科学教育者、筆者は晩年の林先生と親交があった)が1997年の化学史研究発表会で「日本のヨウ素発見者嶋立甫」と題して発表されておられた。内容は米国で偶然会われた岩手県立水沢高校の教諭の方を端緒に、次々と関連した方を通して史料の積み重ねを丹念にまとめられた。
 発表会の当日は、筆者も参加しておりながら、林先生の発表をすっかり失念しており、全くお恥ずかしい次第だった。
 翌日尾去沢鉱山を見学する。この鉱山は鉱脈型銅鉱床と呼ばれ脈状の銅鉱脈を採掘した鉱山で、その中でも最大規模の鉱脈型銅鉱床「石切沢通洞坑」を見ることができた。
 この旅の最終日は、学会2日目である。吉原先生の特別講演「原子核分裂の夜明けから−木村健二郎の足跡−」を伺う。木村先生のお墓が弘前市内の梅林寺にある由なので、弘前に来る機会はないと思えるので、午後、参詣して帰路についた。印象深い旅であった。

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