vol.17 正月疲れの胃腸に──東洋のハーブ・七草粥


 
 年末・年始の暴飲暴食がたたってか、どうも胃腸の調子がおかしい…。会社も始まったことだし、そろそろいつものペースに戻らなければいけないのに!
 ……と思う頃にちょうど出てくるのが七草粥。胃腸にやさしく、まさにグッドタイミング。ふと、古人もお餅を食べ過ぎたりお屠蘇を飲み過ぎたりしていたのかな、という思いがよぎります。

 そもそも、一月七日は「人日」といって、中国から伝わった風習「五節句」のひとつに当たります。
 中国では正月1日から8日までに、鶏、狗、羊、猪、牛、馬、人、穀の順に創造されたと言い伝えられています。そこで、正月からの8日間にこれらを振り当て、その年1年の吉凶を占いました。7日は人を占う日に当たるので「人日」と呼ばれるのです。
 このとき邪気を払うために食べたのが「七種菜羹(ななしゅさいのかん)」という7種類の菜が入ったお吸い物。そこに、冬の初めに若菜を摘む「若菜摘み」という日本古来からの風習が結びついて、七種の若菜を入れた粥に変わったようです。早春にいち早く芽吹くことから、若菜には邪気を払う力があると信じられていたのです。

 さて、この七草粥の風習が一般に広まったのは、江戸時代だとされています。
 当時は前日の夜に、
 「七草なずな 唐土の鳥が 日本の土地に 渡らぬ先に…
  トントンバタリ トンバタリ…」
と、七草囃子を歌いながら七草をすりこぎで叩いて、翌朝、粥の中に入れたのだそう。こうすることで、七草の力をさらに引き出すことができると考えられていました。
 歌は「大陸から疫病をもたらす渡り鳥が日本に着く前に海に落してやろう」という鳥追い歌に由来するもの。害鳥を追い豊作を祈念する行事に、七草粥の風習が結びついたのでしょう。

 このような由来で始まった七草粥ですが、七草はいわば日本のハーブ。それぞれに効能があり、それをさらに消化の良い粥で食べようと言うのですから、胃腸の回復にはもってこいです。七草の効能は以下の通り。

 ◇せり:消化を助け黄疸をなくす
 ◇なずな:視力、五臓に効果
 ◇ごぎょう:吐き気、痰、解熱に効果
 ◇はこべら:歯ぐき、排尿に良い
 ◇ほとけのざ:歯痛に効く
 ◇すずな:消化促進、しもやけ、そばかす
 ◇すずしろ:胃健、咳き止め、神経痛

 もちろんビタミンも多く含まれ、冬場に不足しがちな青菜の補充という意味合いもあったのだとか。
 現代のように飽食ではない昔の人も餅腹に苦しんだのか、そこは定かではありませんが、いずれにしろ理に適い、実用に即した風習だからこそ現代でも残っているのでしょうね。


  もっと詳しく知りたい方はこちらへ

  七草(スター広報室)
  七草粥の豆知識(キッコーマン ホームクッキング)
  人日の節句(日本文化いろは事典)
  七草(Wikipedia)