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日本計量新報 2012年2月5日 (2903号)

計量制度と計量行政は産業経済と国民生活の礎である

ドイツの計量制度を視察した人の感想を語ったなかに「日本の計量制度は大丈夫なのか。計量行政に従事する人がメーカーに検定規則の実際などを聞いてくる」という言葉があった。ドイツの計量制度は今も昔のままでがっちりと構成されている。計量行政に従事する人の訓練は日本の計量教習よりも10倍以上の長時間をかけている。
 計量行政を重視するために必要なことは、計量法令知識、計量行政を実施するための心構え、計量技術とその知識、検定や検査のための実務技術などである。
 日本の計量行政は、計量教習を修了した専門職の職員を、計量検定所や計量検査所で教育し鍛え上げることで育成してきた。それでも昔は、現在と比べて遙かに充実していた。わが身を省みるには人と比較するというのが一番良い方法であるから、ドイツの計量制度、計量法令、計量行政職員の教習内容を今いちど確認することの意味は大きい。
 
 今の日本の行政は、国と地方問わず選挙対策に重点をおきがちである。見せかけの福祉など大衆迎合を繰り返すうちに、国民の暮らしの根幹となる計量行政が骨抜きになり骨粗鬆症のような状態にされてしまっている。
 計量行政が国の事務から地方公共団体の事務に移行したのに伴って、何を間違ったか計量行政を実施する計量検定所の必置義務を削除してしまったことが、さらに状況を悪化させた。
 計量行政意識の薄い地方公共団体では、職員給与や、増やし続けている新しい施し的行政需要への費用をまかなうために計量行政費用を削ってしまった。そうしたこともあって計量行政の最重要事務ともいえるハカリの定期検査の実施率は、日本全体で実質5割に届くかどうかという状態が出現している。
 
 人が生きるために必要な最低限の条件として衣食住がある。国にとって計量行政はこのどれかに相当する。
 品質工学の開祖の田口玄一氏は、機能性評価のことを述べる言葉の端で、政治や政権や政党の機能性評価として選挙があることを述べている。口当たりの良い言葉、行政からのわずかの施しなどを受け続ける選挙民は、いつの間にか政治への機能性評価を失う。あっちへ行ったりこっちへ来たりという今の日本の政権交代の在り方は良いことではない。今の日本をみると、やる気がある者が、働く場所を得られない状況が出現し、生活保護受給者は増加する一方だ。不安定な政局は、現状への不満から、新しい国、政治、行政、社会の在り方を求めての戸惑いと模索がもたらすのであろう。
 政治が乱れても国が乱れないための保証として、国の基幹制度として計量制度がある。計量制度は計量法を骨格として形成され、計量行政によって肉付けされる。地方公共団体の長、そして予算を編成する議会、予算に絡む行政職員などが計量行政の性質を良く理解し、計量行政を機能させるために良識のある判断をしなければならない。
 計量制度と計量行政は国民生活の礎であり、経済や産業や学術・文化の発展のためにも同じように機能する。

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