2001年1月21日(2385号)

■ダイオキシンなど極微量物質の計量対応へ計量法を改正、今通常国会で改正法の成立めざす
  −事業者能力確認に試験所認定制度を適用

 政府は計量法の計量証明関連部分を全面的に見直すことにしており、改正計量法の今通常国会での成立をめざす。環境問題の高まりなどにより従来の計量制度が想定していなかったダイオキシンなど一兆分の一レベルの計量証明に対するニーズが増大していることなどに対応するため。法定計量単位にppt(質量一兆分率)を追加するほか、実情に合わせて計量証明関連制度を全面的に見直し、ISO/IES17025に準拠した試験所認定制度を事業者の能力確認の方法として採用する。法改正で昨年12月13日の計量行政審議会の答申内容を具体化する。

 環境問題などの高まりでダイオキシンなどの一兆分の一レベルの計量証明に対する需要が増大しているが、現行の計量法の計量証明事業者登録制度の適応対象は濃度では大気、水、土壌中の濃度に限定されている。しかし、現行法の対象外の製造工程中や血液中、室内等の物質濃度に関しても計量証明が求められるケースが増えている。また特に濃度の計量証明事業では現地作業、分析、計量証明の各工程の分業形態が進行しており、事業者の形態も現行制度制定時(1974年)とは大きく異なっている。昨年のダイオキシン法の施行とも関連して計量法の関連規定は見直しを迫られていた。

 政府は、昨年12月13日の計量行政審議会の答申内容を具体化し、改正計量法の今国会での成立をめざす。
 計量行政審議会答申の概要は次のとおり。

  1. 制度見直しの重点事項に関して、一兆分の一のpptレベルの単位の制度化(追加)が必要であるとしてる。
  2. 極微量物質の計量証明は、サンプリング、輸送、抽出、分析、データ処理などの多段階の複雑な処理を要することから、工程全般の厳密な精度管理の徹底をはかる制度の構築がカギになる。使用機器の国家計量標準とのトレーサビリティが確保された標準物質による校正の実施や、極微量物質の計量証明を実施する者に求められる事項として、人員の資質や技術レベルの向上が求められている。計量士がはたす役割も強調されている。
  3. 正確な計量証明結果を制度面から担保するために事業者の能力確認ではシステム全体にわたるチェックが重要であるとし、ISO/IEC17025を技術能力の認定基準とする試験所認定制度の採用が提案された。これにより高度な技術力の担保とヒューマンエラーがでないシステムができるとする。
  4. 能力確認では登録時や定期的なチェックにおける地方自治体の執行体制も問題である。検定所の規模の地域格差や、対応できる化学系職員の数が少ないなど、現状では実施困難であり、能力確認業務は独立行政法人の試験研究機関の活用が提案されている。
  5. 答申は極微量物質の計量計測方法を固定化して研究開発を阻害しないような方式の採用を求めている。
  6. 分業体制が増えている計量証明の新たな事業形態への対応が必要であるとし、分業工程における分担等の必要情報を計量証明書に記載し、依頼者に対する説明責任を明確化することが必要であるとする。分業では国外事業者が携わるケースが出現しているので、答申は国外事業者の国内事業者との同等の扱いを指摘した。
  7. 現行の計量証明書には必要十分な事項が全て記載されているとはいえないと指摘し、計測条件や分業工程の情報などを明記するよう求めている。

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