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4つのSI単位の定義改定に対応
計量単位令の改正
特定標準器の変更など

4つのSI単位の定義改定に対応:計量単位令の改正、特定標準器の変更など

 2018年11月開催の第26回国際度量衡総会(CGPM)で、国際単位系(SI)の4つの単位、キログラム(kg)、アンペア(A)、ケルビン(K)、モル(mol)が物理定数を用いて再定義され、それらの新しい定義は、それぞれプランク定数(h)、電荷素量(e)、ボルツマン定数(k)、アボガドロ定数(NA)の確定値にもとづくことになった。改定されたSIは、2019年5月20日(World Metrology Day)に発効した。

計量単位令を改正

 経済産業省はこれに対応するため、計量法令で単位等を定めている「計量単位令」を改正し、5月17日公布し、5月20日から施行した。

 計量法は、計量の基準となる計量単位を定めることにより、国民生活・経済社会における取引の信頼性を確保し、安全・安心の基盤として機能している。

 計量法は、「長さ」「質量」「時間」などの数値で大きさを表すことができる事象について、それぞれに計量の基準となる「計量単位」を与え、かつ、各計量単位の内容を確定するためにその「定義」を併せて定めている。

 今回、国際度量衡総会で、国際単位系(SI)における単位の定義改定が決議されたため、その決議に従い、計量単位令で定める計量単位の定義を改正した。

 たとえば、質量の単位「キログラム」の定義が、これまで「国際キログラム原器の質量」となっていたのを、国際度量衡総会での決議を反映して、「プランク定数を十の三十四乗分の六・六二六〇七〇一五ジュール秒とすることによって定まる」と改めた。他の3つの単位の定義も次のように物理定数を用いた定義に改定された。

 電流の単位「アンペア」は、「電気素量を十の十九乗分の一・六〇二一七六六三四クーロンとすることによって定まる電流」。

 温度の単位「ケルビン」は、「ボルツマン定数を十の二十三乗分の一・三八〇六四九ジュール毎ケルビンとすることによって定まる温度」。

 物質量の単位「モル」は、「六・〇二二一四〇七六に十の二十三乗を乗じた数の要素粒十二の中に存在する原子の数子又は要素粒子の集合体(組と等しい数の要素粒子又は要成が明確にされたものに限る素粒子の集合体(組成が明確。)で構成された系の物質量」に改定された。

4つのSI単位の定義改定に対応:計量単位令の改正、特定標準器の変更など

JCSSの特定標準器を変更:キログラム原器から標準分銅群に

■「標準分銅群」に変更
 計量法トレーサビリティ制度(JCSS)において、最上位の計量標準として「国家標準」の役割を果たす「特定標準器」が、計量行政審議会計量標準部会(2019年3月12日開催)の答申をへて、「質量」の特定標準器が変更され、告示された。

 これまで質量の特定標準器としては、単一の分銅である「キログラム原器」が指定されていたが、キログラムの定義改定をうけ、新たな定義に基づき値付けされた多くの分銅からなる「標準分銅群」に変更された。

 特定標準器は、計量法に基づく計量法トレーサビリティ制度(JCSS)登録事業者が保有する特定2次標準器の校正に用いられる。

■産業や社会生活への影響はない

 校正の不確かさは今回の特定標準器の変更の影響を受けず、変更されない。このため、今回の定義改定、特定標準器の変更にともなう産業活動や社会生活における一般ユーザーへの影響はない。

■高精度な計量標準の供給が可能に

 変更前は、特定標準器として白金イリジウム合金製のキログラム原器(日本国キログラム原器)、特定副標準器としてステンレス製の標準分銅群がそれぞれ指定されていた。

 今回の告示改正により、従来の特定標準器であるキログラム原器と特定副標準器を合わせた「標準分銅群」が、新たな特定標準器として指定された(図2を参照。図は2つとも産業技術総合研究所計量標準センターホームページより)。

 標準分銅の材質は白金イリジウム合金およびステンレス鋼で、質量範囲は1mgから20kg。各分銅の質量は、シリコン単結晶球体の質量を基準にして校正されており、多数の標準分銅を群管理することによって質量の基準を保持する。

 質量が1kgのキログラム原器が特定標準器であった変更前のトレーサビリティ体系では、分銅の質量が1kgから離れるほど不確かさが増すため、その質量を高精度に値づけすることが困難だった。

 群管理では標準分銅間の質量比較によって各分銅の質量の変更を高精度に検出する。1kg以外の分銅が特定標準器に含まれることで、1kg分銅同士の比較(1:1の等量比較)だけでなく、2:1+1(たとえば2kg:1kg+1kg)や5:2+2+1(たとえば5kg:2kg+2kg+1kg)などの異なる質量の分銅間の比較が特定標準器内で可能となる。

 多数の標準分銅間の関係を網の目のような形で相互に関連づけることで、等量比較のみにもとづく群管理よりも堅牢な基準の維持・管理が実現できる。

 今回、普遍的な物理定数であるプランク定数を基準とする新たなトレーサビリティ体系に移行することで、広い質量範囲において高精度な計量標準の供給が原理的に可能となる。

 日本国キログラム原器は、定義改定後も新たな特定標準器を構成する標準分銅の1つとして、定義改定後も質量の基準としての役割を担う。また、これまで特定副標準器であったステンレス鋼分銅も、新たな特定標準器である標準分銅群に含まれる。履歴が管理されている標準分銅群を特定標準器として、継続的に維持・管理する。

4つのSI単位の定義改定に対応:計量単位令の改正、特定標準器の変更など

電気標準への影響

 国際単位系(SI)の定義改定にともなって、産業技術総合研究所計量標準総合センター(NMIJ)が2019年5月20日以降に発行する、電気標準における校正証明書の値が変更になる。

 量目における校正値の相対変化は次のとおり。校正値の拡張不確かさは現状と変化はない。

▽直流電圧(V):従来より106.7nV/V大きい
▽直流抵抗(Ω):従来より18nΩ/Ω大きい
▽交流抵抗器(Ω):従来より18nΩ/Ω大きい
▽キャパシタ(F):従来より18nF/F小さい

 その結果、直流電圧ではNMIJでの拡張不確かさを超える校正値の変化が生じる一方で、直流抵抗、交流抵抗器、キャパシタでは拡張不確かさより小さな変化しか生じない。

 また、これらの量目を基準とする他の量目や、ほとんどの校正事業者による校正値の変化は、いずれも拡張不確かさより十分小さく、その影響は無視できる程度となる。

4つのSI単位の定義改定に対応:計量単位令の改正、特定標準器の変更など

 

 

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