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第194回NMS研究会報告(2014年4月)

(3048号/2015年3月8日掲載)

アシザワ・ファインテック(株) 塩入一希

 2014年4月5日(土)に、品質工学会会議室で、第194回NMS研究会が開催された。

1、TECの熱応力耐久性評価の研究(コマツ、細井光夫)

 過酷な条件で使用されるペルチェ素子の研究である。従来の耐久性評価は、加熱と冷却を壊れるまで繰り返す試験であった。今回の研究では、逆電場を与えることでダメージを与えた素子に、通常の電場を掛けてから温度差が発生・収束するまでの過渡現象を測定した。ダメージを与えた素子の半数が壊れてしまったが、実験の結果は再現性の良いものであった。一連の実験を通して、「素子の素材や形状の研究は十分になされていて、ハンダやダイシング工程に問題がある」ことを知った。早く失敗したことにより、さらに多くの気付きを得られた良い研究と報告している。

2、歯みがきチューブ接着工程の最適化(ヱスケー石鹸(株)、安藤欣隆)

 クレーム対応に始まり技術開発に繋げた研究である。顧客から歯磨きチューブが破けたというクレームが入った。不良を起こしたロットを見ると確かに出来の悪いものを含んでいた。この問題に向き合うためにクレームによる損失額を指標にした。まずその不良を適正に見つけられたかどうかを問題にした。検査間隔の最適化を計算上で済ませると、次にチューブの接着が適正におこなわれたかを問題にした。最適な生産工程を実験で見出すと、生産から検査までの実際の量産ラインに適用した。すると最終的に、クレームによる損失額が750分の1になる結果となった。生産の上流段階での技術開発に足を踏み入れ、実際の工程で適用すると、効果が驚くほどに大きいことを体験した。部下達にもそれを感じてもらい、目先の問題を要領良く受け流すのではなく、技術開発で正面から立ち向かってもらえるように、教育に勤しんでいると報告している。

3、新製品企画と想定顧客層の適合性評価(コニカミノルタ(株)、中垣保孝)

 市場との適合性を企画段階で評価した研究である。企画が採用されてもハズレであれば損失が生まれ、採用されなかった企画がアタリであっても機会ロスとして損失が生まれる。その損失を減らすためにコンセプトをMTシステムで評価することを試みた。実験の対象となる企画を練り上げ、アンケートで1000人に49項目の質問をした。アンケートの回答者と企画の適合性を指標で表すと、グラフの形によって適合性を表すことができた。さらに、適合性の低い回答者集団に対して、その要因を計算から導き出すと、特定の地域の人に差が出ていることが明らかになった。企画の評価とともに、市場とのズレがあれば販売戦略の方向修正なども可能になると報告している。

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