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計量計測データバンク「日本計量新報」特集記事寄稿・エッセー(2015年一覧)>【横田貞一】「知的財産権」とは

日本計量新報 2015年9月6日 (3071号)5面、9月13日 (3072号)5面、9月20日 (3073号)6面掲載

「知的財産権」とは

平和衡機(株)代表取締役 横田貞一


■知的資産経営は運営に欠かせないコンセプト
 組織には事業活動を遂行するプロセスが顧客に対して競争相手より、優位に立つには、優れた価値を提供できるようなコア・ケイパビリティを持つことであるとする考えがある。
 「知的財産権」とは、有体物(動産と不動産)に対して認められる所有権とは異なり、無体物(情報)を客体として与えられる財産権のことである。知的所有権とも呼ばれているが、「知的資産」という言葉もあるようだ。これらは、企業にとって「強み」であり、コア・ケイパビリティとなる資産でもある。「知的資産」とは、人材、技術、組織力、顧客とのネットワーク、ブランド等の目に見えない資産のことで、さらに、経営者の指導力および判断力も、経営者の戦略的機能として知的資産を結合するための調整能力も、さらに経営者の個人的なネットワークおよび交遊も重要な要素であり、企業の競争力の源泉となるもっともコアな経営資源といってもよいのではと考える。B/Sに計上される無形固定資産と同義ではなく、企業が保有する形のない経営資源すべてと捉え、企業の強みとなる資産を総称する幅広い考え方で捉えることに注意が必要である。古来より、戦略の本質は「強み」を活かして戦うこととされているようだ。経営戦略についてはさまざまなアプローチで紹介されているが、組織の「強み」を顧客の「価値」に変え、顧客に伝えることであり、顧客の「価値」を実現するために、組織の「強み」を使うこと・育てることであるというものとなる。「強み」とは、組織が資源を集め、それを模倣が難しく持続可能な形で組み合わせることと捉えた論も多くあるようで、資源ベースのアプローチであるといえる。さらに、このような企業固有の知的資産を認識し、有効に組み合わせて活用していくことを通じて収益につなげる経営を「知的資産経営」と呼び、これからの特に中小零細企業の運営には欠かせないコンセプトであると考える。
 企業が持続的な利益をめざす「知的資産経営」を続けていくためには、その企業の取り組みをステークホルダー(取引先、顧客、株主・投資家、従業員、地域社会など)に認知・評価してもらうことが重要であり、そのため企業は財務諸表だけでは十分に表現することができない「知的資産」や知的資産を活用した経営手法について、ステークホルダーに対して知的資産経営に関する情報開示をおこなう必要がある。
 昨今よくいわれている言葉に『知的資産を活用して業績向上をめざす!』ということがある。知的資産とは、人材、技術、知的財産(特許・ブランド等)、組織力、顧客とのネットワークなど、財務諸表にあらわれてこない目に見えにくい経営資源の総称であり、会社の強みである知的資産をしっかりと把握し活用することで、業績の向上に結びつけることが「知的資産経営」である。情報開示により、ステークホルダーからの適切な評価を得ることができるので、企業が持つ実力を正しく評価してもらえるかもしれない。
 まず、知的資産経営に関する情報開示によって、市場における過小評価が解消される過程では、いくつかの利点が出てくるかと思う。情報開示のプロセスのなかで、自社の知的資産を再認識することで、価値創造につながる経営資源(人材、資金など)への最適な配分を考えることができる。つまり、企業ごとに固有の価値創造の方法に経営資源を集中投資することが可能となり、 将来価値に対する確度や企業の信頼を高めることにより、幅広い投資家や金融機関からの評価を得て、資金調達が有利になるかもしれない。…まぁそうはいっても、われわれ零細企業では、借入れの際には個人保証を求められることに変わりがないが?
 さらに、従業員が自社の強みや知的資産経営の内容を正確に認識することで、個人の仕事が自社の将来価値にどのように寄与するかが明確になるため、社員の士気向上に役立ち、求職者に自社の強み・魅力をアピールし、優秀な人材の確保につなげることもできる。
 また、特に情報開示の機会が少ない中小・ベンチャー企業にとっては、知的資産経営報告を通じて自らの潜在力・成長性を銀行やベンチャーファンドに示すことができる。企業価値の増大や資金調達が容易になることや、さらなる取り組みで知的資産への投資が増大して、知的資産や価値創造のメカニズムの強化から次なる情報開示と経営改善への良い連鎖が始まり、結果、ステークホルダーの理解・信頼感も高まっていく。さて、経営環境は不変ではなく、さまざまに世につれ変化し、または激変している昨今であり、知的資産等経営資源を組織の変化対応能力の視点から考えてみたいと思う。B/S計上資産および知的資産等々の経営資源の保有だけでは、この激流を棹さしていけないことは明白である。
 そこで、急激な環境変化に対処するために内部と外部のコンピタンスを統合,構築,再構成することができる企業の能力が重要となってくる。
■急激な変化に対応するために
 『ダイナミック・ケイパビリティ』は,経路依存とマーケットポジションを所与として新しく,革新的な競争優位を形成する企業の能力を反映するものと捉えられている。つまり、単なる資源の保有ではなく、資源を活用する組織ルーティンやビジネスプロセスの統合的変化対応可能機能集合の有無が組織の競争優位のカギになるとの考えである。「変化対応能力」ということらしいが、菊澤教授(慶應義塾大学)は「変化対応自己組織化能力」か「変化対応自己再編能力」という言葉で表している。
 たとえば、組織は事業活動を遂行するプロセスが顧客に対して競争相手より、優位に立つには、優れた価値を提供できるようなコア・ケイパビリティを持つことであるとする考えがある。確かに組織が独自の資源を結合し、調整するコア・ケイパビリティが高ければ高いほど企業の競争優位性は高いといえるかもしれない。こうした基点での経営はいま多くの企業がおこなっていることだがオーディナリーケイパビリティ(現状効率的維持能力)つまり、組織の権威的存在にもとづく経営であり、それは利益最大化原理にしたがって、一方でコストを削減し、他方で今少しでも売れている製品に集中して収益を伸ばす。まさに資源ベース経営であり、その本質は利益(収益-費用)の最大化経営であるといえるのかもしれない。
 しかし、一方、企業が独自のコア・ケイパビリティを構築して競争優位を獲得しても、ある時点で優位なコア・ケイパビリティが環境変化によってかえって、有効性が阻害され、そうでなくなることも昨今の議論で明らかにされている。かつての優位なコア・ケイパビリティであった本業(権威的存在/オーディナリーケイパビリティ)から組織構造を破壊し、脱皮し、そして、この権威を否定するプロセスも脱構築され、ここから、既存の技術を再構築し、新たな技術への応用という流れが起こった組織で大きな飛躍をしている組織も出てきている。既存の知識、既存の資産、既存のノウハウを徹底的に再点検し、分析し、応用可能性はないか、再構成できないか、別の業界で新しく育てることはできないかと考えることから始まる考えもあるようだ。
 環境変化を踏まえ、急激に変化する環境に対処するために、組織の適応力として、利用できる内外の資源を統合・構築・再構成する能力についての論点であると考える。
 とにかく、消費者・顧客・利用者にとって、新たなイノベーションの結果が驚きであり新鮮で、利便性を評価する前に面白いと感じる感性で『価値あるもの』として受け入れることになると…新たなコア・ケイパビリティが生まれることになるが、いつまでも継続する保証はない。戦略として、市場を作るための戦略があり、今後,この戦略が成功し,より大きな市場になった場合は,技術・ノウハウ,販売先をオープンにし、市場のなかでさらなる次の革新を図っていくことが成長の鍵となる。つまり「革新の連続が伝統となる」という考えがそこに生きて実践されていることになる。ダイナミック・ケイパビリティが活きる組織でなければ、環境の変化、消費者の関心、興味のうつろいにも、やがて、その組織の優位性が逆機能現象を引き起こすことになるのかもしれない。
 ダイナミック・ケイパビリティのコア要素として調整・統合,学習,再構成をあげており,そのなかで経営者の戦略的機能として知的資産を結合するための調整能力の重要性を強調している。ダイナミック・ケイパビリティ論の視点からみれば、経営者が相互特化資産を有効に活用した新しい製品を創造し,そのために自社資産の調整を果たした事例もあるかと考えるし、あるいは大量生産による低価格の追求をめざすのではなく,ニッチなマーケットを対象にした無形の知的資産結合によるイノベーションを促進することによって付加価値の高く,企業にレントを生み出す製品をめざすべきであるという方向性が今ほど重要になっている時代はないように思われる。特に特定資産に投資する必要性と環境における機会を測定する経営者能力が強調され、ダイナミック・ケイパビリティはトップ・マネジメント・チームの戦略的機能によって、促進されると述べている。特に特定資産に投資する必要性と環境における機会を測定する経営者能力が強調され、ダイナミック・ケイパビリティはトップ・マネジメント・チームの戦略的機能によって、促進されるといっても過言ではないと思われる。
■Validationが今後のキィ・ワードに
 さて、『はかりは今、新しい!』…わが社を考え…どうするか?
 以前から、計測・計量業界の中で、『Validation(ヴァリデーション)』という言葉が今後のキィ・ワードとなってくると考えている。単に「はかり」を検査する、校正するということだけでなく、顧客の使用目的、仕様、要求される規格等々と設置環境および仕様手順、管理手順と評価手順、検査基準および手順と結果の成績表、評価証明書および報告書等々記録を総合的に検証し提案していくことが求められるようになってきている。特に、プラント等における検査、評価等においては、計量機器、計量設備周辺機器への知識も必要となってくる。もちろん、非計量物の物性および生産工程等に関しても十分な知識を要求されることになる。メーカーではない地域の事業者の特性を生かす道はさまざまなメーカーの取り扱いが可能な利点を生かすところにあるが、メーカーとも協議し、顧客とともに生産工程上のさまざまな管理等も理解し、知識として吸収していくことが必要となる。この考え方は、人材、技術、組織力、顧客とのネットワーク等々を洗い出し、人材育成・教育とさまざまな投資とチャレンジが必要だが、付加価値の大きな領域への挑戦となると考えており、次の世代への業態改善のテーマとして考えている。まず、知的資産の洗い出しから始めることになる。組織内の分析をおこない、組織の補完資産を一般資産,特殊資産,相互特化資産に分類し、特異性のある優れたコア・ケイパビリティを確認しなければならない。また、どのように統合・調整・再構築するのか?
 ネットワーク、異業種の集いが有効な効力となるかもしれない。経営者は、心を解き放ち、開放することから発想の転換が求められるのかもしれない!…ということで、過日は、計販連の会議で台風の最中、四国松山まで赴いたが?…
 この会のモットーは『よく遊び、よく遊び、よく遊べ!』であり、なかなか含蓄に富んだものでありました。博多のよかもんである石蔵会長らしい言い回しであり、いずれにしても良い仲間との交流・ネットワークつくりは、『よく集い、よく語り、よく遊ぶ…そして、よく学べ!』に尽きることであり、計販連のますますのご隆盛を祈念いたします。


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