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計量計測データバンク「日本計量新報」特集記事寄稿・エッセー(2015年一覧)>【松本栄寿】ジェームズ・スミソンと亜鉛

日本計量新報 2015年8月23日 (3069号)5面掲載

ジェームズ・スミソンと亜鉛

(一社)日本計量史学会理事 松本栄寿

松本栄寿
(1)実験化学者スミソン
 スミソンはどんな環境であったか、彼は鉱物学者から化学者へ転身することになるが、その第一歩は1784年のスタッファ島遠征であった。彼はフランス人学者フォジャの率いるスタッファ島への遠征に参加する。1カ月の旅では、スミソンはニューカッスルやエジンバラに立ちより、ブラック(物理学者)やハットン(地質学者)といった一流の学者と知人になることができた。それらが彼の土台になったと考えられる。スミソニアンのキュレータ、スティーブ・ターナーは当時(18世紀)の実験室を再現しようとした。また、どうして「カラミン」がスミソンの研究に重要であるか、1865年のスミソニアンの火災で所持品が焼けたこの人物は有名なのか、日常の仕事、生活は、遺骸はどうだったかなどと疑問をもった。スミソンの科学的な文書は現代のものではないので解明は楽でない。1903年当時、スミソンはイタリーのジェノヴァの市営墓地に葬られていた。現在は彼の遺骸と石棺はワシントンに眠っている。1903年に遺骸の引き取り役になったグラハム・べルは、隣の墓地がもう壊されると知って驚いたが、かろうじて米国にもちかえることができた。

(2)鉱物学から図1 ブローパイプ(吹管(すいかん))(スミソニアン、ターナー博士より)
 1780年代まで、鉱物は美しいもの・富の象徴として王侯貴族の珍品の陳列室に飾られていた。紳士の趣味の対象ではあっても学問の対象ではなかった。鉱物学は自然史の一部であり、スウェーデンのリンネが動植物を対象におこなった分類システムを参考に、硬さ、色、輝き、美しさといった外的特徴に基づいて分類されていた。科学的鉱物学はドイツやスカンディナビアで最初に発達した。自然資源の開発のため支配者がヨーロッパ初の鉱山アカデミーを設立したからだった。スミソン自身ドイツの鉱山アカデミーを訪れている。スミソンはスウェーデンの鉱物学者クロンステットの『鉱物学体系』を英訳し、クロンステットは化学分析用に実験用具の吹管(金属製の直角に曲がった管)を改良した。(図1)

(3)スミソンと亜鉛図2 ブローパイプの使用法(スミソニアン、ターナー博士より)
 スミソンは亜鉛の原石スミソナイトに興味をいだき、分析器具にはブローパイプと天秤を選んだ(ニューズレター63号)。しかもスミソンはそれに習熟したようである。1802年11月のロイヤル・ソサイエティの会合で、スミソンの有名な論文『カラミンの分析』(A Chemical Analysis of some Calamines)が発表された。これはのちに「スミソナイト」と呼ばれる亜鉛鉱の分析に関する論文である。この亜鉛の検出法を確立した論文は、1810年にフランスの政府機関誌『鉱山ジャーナル』に転載され、国際的注目を集めた。この前後から亜鉛の実用化が加速する。図2 ブローパイプの使用法(スミソニアン、ターナー博士より)工業化に成功したのはベルギーのジャン=ジャック・ドニー(Dony)である。1806年にドニーはナポレオンから亜鉛独占権を認められ、新種の亜鉛炉を発明し純粋亜鉛の製造を開始した。亜鉛は、銅との合金は真鍮(黄銅)となり、鉄板にメッキしたものはトタン屋根として、1830年代のパリやヨーロッパの都市で流行した。この需要をスミソンが予測したわけではないが、社会に役立つことを願っていた。その意味で、スミソンの研究は大いに目的を果たしたと考えられる。(図2)
 1815年にナポレオンが失脚し、ヨーロッパが再編へと向かった時期に、貴重な亜鉛生産という目的のため中立国モレネが誕生した。中立国モレネはベルギーとドイツ国境に1816年から1920年にかけて存続した。面積3・5km2の小さな領域で、ここには貴重な戦略物資亜鉛鉱があった。スミソンはラヴォアジエと同様に、鉱石を分解するのに、酸、アルカリを使った。多くの貴族は自分の息子が化学のような実験に興味を持つのを嫌った。液体で目を怪我するかもしれないからである。時に防御マスクをつかった。(図3)

(4)現代人としての疑問
 帰国した遺骸はスミソニアンの専門家の手で1905年に再解剖されることになった。スミソンの健康はどうだったのか、骨格に病歴が残っているかを調べることとなった。1973年10月、聖堂の棺が開けられた。人間は生命を維持するために微量元素を必要としている。特に鉄と亜鉛は重要である。亜鉛が欠乏すると、子供の成長に影響するが過剰摂取は害である。スミソンは意識していたとは思えないが、異常は認められなかった。

(5)参考文献
Material Matters, May 2008


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