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2015年 計量関係機関 年頭所感〈産総研〉

国際協力の二つの視点−相互承認と技術支援

(独)産業技術総合研究所 計量標準管理センター国際計量室長 加藤英幸

加藤英幸 2015年の新春を迎え、謹んで新年のごあいさつを申し上げます。計量標準総合センター(NMIJ)の国際活動につきまして、平素より皆様方のご理解とご協力を賜り誠にありがとうございます。
 昨年は11月に国際度量衡総会(第25回CGPM)が3年振りに開催され、すでにその内容は本紙でも伝えられている通りです。基本単位の再定義を柱とする大掛かりなSI改定を2018年に実施するべくその準備を奨励する決議1は、研究技術開発に関わる重要な決議でありました。一方、決議5は成果の普及啓発に関わる一見地味な決議ではありますが、1999年に締結されたCIPM MRA(計量標準の国際相互承認取り決め)に関して、発足15年の節目に本格的なレビューをおこなうことを決めた、これもまた重要な決議です。CIPM MRAは現在ではILAC MRA(試験所及び校正機関認定の相互承認取り決め)とともに国際間取引に欠かせない取り決めとなっています。今日では、たとえば、地球規模での温暖化対策に向け、トレーサビリティの取れた計量・計測技術に基づく正確なモニタリングの必要性が関係者の間で広く認知されており、2010年にWMO(世界気象機関)がCIPM MRAに署名したのはまさにこの観点からです。他にも、IAEA(国際原子力機関)とIRMM(欧州標準物質・計測研究所)が発足当時の1999年に、ESA(欧州宇宙機関)が2012年にそれぞれ署名しています。このように、当初は各国の計量標準機関の参加を中心に始まったCIPM MRAの取り組みも、計測の信頼性に期待を寄せる国際機関・地域国際組織にも広がりを見せていることがわかります。本年は多くのステークホルダーを抱えることになったCIPM MRAの今後を見据えた議論が各方面で活発におこなわれることになるでしょう。
 さて、このようにトップダウンで重要な取り組みが決議される一方、途上国あるいは新興国に対する計量標準の技術支援にはボトムアップの取り組みが必要です。昨年度と今年度の2年間、産総研NMIJは、東南アジア諸国の標準研究所への技術支援や現地のエンドユーザへの普及啓発の取り組みにも注力してきました。その一例が、NMIJが提供した玄米標準物質を用いた重金属元素分析の技能試験の指導です。タイ国内の標準研究所や試験校正機関を含む42機関が参加し、NIMT(タイ標準研究所)やTISTR(タイ科学技術研究所)が中心となり結果が取りまとめられました。この成果に基づき昨年11月にタイ・バンコクで開催したのが化学計量セミナーです。2日間で延べ参加人数226名を数え、日本企業を含む関連企業10社および4機関の展示による参加もあり、大変盛会でありました。食品・医薬・環境など幅広く貢献できるのが化学計量標準や標準物質の分野です。われわれの蒔いた種がタイの地を中心に実を結び東南アジア諸国へと拡がり行くことを期待します。
 化学計量に限らず計量標準分野でのわが国の技術支援への期待が高いことを実感することはしばしばです。おそらく15年〜20年以上も前のJICA(日本国際協力機構)の計量に関するグループトレーニングに参加されたのでしょう、既に各国標準研の幹部になっている方々からよく声を掛けられます。「当時は大変お世話になりました。またよろしくお願いします」と律儀にお礼を言われるのです。当時を知る由もない筆者は、われらが先達のご労苦に思いを馳せながら、ただ恐縮するばかりです。その成果は時を超えて実を結んでおり、今なお国際協力・技術支援におけるジャパンブランドは健在だと考えます。
 最後になりましたが、本年も計量標準分野における国際活動に一層のご理解とご支援をお願い申し上げます。また皆様のご多幸とご健勝を祈念しまして、新年のごあいさつといたします。

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