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日本計量新報 2017年1月29日 (3135号)

ハカリの定期検査が人の介在なしになされる技術と社会状況

宿泊料金が、正午に8000円であったのが午後1時には5500円であった。百貨店地下売り場における食品の割引と同じことがあった。時間とともに物の値段は変動する。その変動の状態はインターネットに現れスマホなどの端末に表示される。

いつでもどこでもコンピュータやネットワークにつながっていることをユビキタス(ubiquitous)といって取り上げられたのは20年もまえのことであった。

機械がインターネットにつながり物の情報がインターネットにつながる状況ができている。そのようにしてインターネットにつながっている機械や物の情報が相互にやりとりされて制御しあうことができそうである。物のインターネット化ということをInternet of Thingsといい、略してIoT。これがわかったようでへんてこなアイ・オー・ティー(IoT)である。

情報の取得、情報を転送・蓄積・分析、アクションの実施を宿泊料金のことで考えれば、ある前提を事前登録しておくと午後3時時点での最適価格としての宿泊料を選択できる。正午に8000円は次の行動をする上での最適価格であった。午後1時には5500円が同じ宿に宿泊するための最適価格であった。選択時刻を午後1時にするか正午にするかによって最適価格が決定する。午後1時の宿泊料が安かったのは仕方がないことである。

引用事例の適切さのほどは別にしてIoTとは概してそのようなことであり、このことが広く深く社会に普及している状態がIoT社会と考えればよい。

切符切りがいなくなった。入場券などを機械が判別するからである。ハカリに引っ付いて物の値段を書き込む人は少なくなった。ハカリが料金を決めるからである。このさき10から20年すると単純作業やマニュアル化しやすい仕事は減少する。

人間が少しの知能を使ってする仕事は機械に置き換えられる。人間の知能そのものをもつ機械の実現は難しいことであるから、その半分ほどの作業をする機械は増える。人工的にコンピュータ上などで人間と同様の知能を実現させようという試みやそのための基礎技術のことをAIArtificial Intelligence)つまり人工知能という。

インターネット(ネットワーク)につながることと、センサーを通じてデータを送信するというIoTによるビッグデータをAI(人工知能)と連携させることで次のようなことができる。

朝昼晩の食事の材料などの情報がインターネットにつながっていて、つまりそれは食品のIoTであると、そのデータとその食事によって変化した体重や血糖値などをAI(人工知能)が分析して、健康維持をするための食事メニューを提示することがなされる。IoTAIによって実現されることだ。農業分野における日照や気温や湿度と肥料供給などへの対応がある。さまざまな分野でこのことが推進される。大きくか小さくかということはあってもこうしたことが進む。

家庭用の積算電力量計がスマートメーターの冠詞のメーターに急激に置き換わっている状況から推測されることがある。ハカリを含めて多くの計量計測機器がその性能や精密さ正確さをIoTAIなどの組み合わせによって自己点検できるようになる。計量法によって2年に1度の定期検査を義務づけられている取引・証明用のハカリの定期検査は人が介在せずになされる。そのようになるかも知れない技術状況と社会状況がある。

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