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日本計量新報 2016年10月30日 (3124号)

指定定期検査機関の運営費を真っ当に工面する地方公共団体もある

計量制度における地方公共団体の役割そして「適正な計量の実施の確保」の実現のための国と地方公共団体の事務の分掌ということを書き出して、地方公共団体の計量事務の内容に立ち入るとその形態が一様でないことを知る。地方公共団体の計量事務は機関委任事務から自治事務に変換してもその基本内容は変わらない。「適正な計量の実施の確保」の実現のため行政地域を見渡してそれが良く実施されていることをもってよしとする。特定計量器のいくつかの器種の検定と再検定を実施し、ハカリについては2年に1度の定期検査をその主体となって実施する。

定期検査の実務は計量士が代検査をしている場合があり、また代検査を計量士などの団体に依頼することもある。全国の特定市を含む地方公共団体の5割ほどは計量法の指定定期検査機関制度を利用していて、当該地域の計量協会あるいは民間機関を指定して検査業務を実施している。定期検査などの実務を民間機関に委ねている分、役所の人員は減員されている。計量法の指定定期検査機関制度が運用されるようになってからは役所の人員は半分ほどになっている。計量器のメーカーが多く立地している都道府県では指定製造事業者制度ができてからは検定の業務が著しく減じたために職員数もそれにあわせて減らしている。

計量を司る地方公共団体の役所の人員が減ると計量行政にかかる知識の総量も減ることが目に見えている。そうすると、してはならないこともわからない状態になるので知識と技術力ほかの維持が課題になる。

地方の計量協会が指定定期検査機関に指定されて、ここに大勢の検査関連の人員が配置されている。若い人々が採用されて能力豊かな人は一般計量士国家試験に合格して環境計量士の国家試験をもめざして勉学している。地方計量協会には採用条件が厳しくなっている地方公務員と能力がなんら変わらない人々が採用されている。

国会では同一労働同一賃金を課題にして取り組みがなされているが、指定定期検査機関で働く人々を使い捨てにするような地方計量行政になっていることを危惧する。放っておくと指定定期検査機関の運営のための経費は削減され、この機関で働く人々にそのしわ寄せがいくという構造は悪である。

指定定期検査機関になるとそこに所属する職員の働き方はハカリの定期検査に縛り付けられる。ここからは報酬は上がらない。別の業務をしようにもそれができないのだから、業務に見合う運営費を用立てることが役所の責務である。このように述べてもやはり運営費は増えそうにないから空しさがある。とはいえ指定定期検査機関の運営費を真っ当な形で工面している東北地方の大きな市もあるのだから、これを基準にしてそれ以下になっている地方公共団体にはオンブズマン制度に似た組織などがその内容を公表して改善を求める勧告をすることがあってもいいのではないか。そうでなくても民間の関係者が組織をつくって似たような業務をしてもよいだろう。そうでもしないと指定定期検査機関制度によって指定を受ける側の組織とその職員が泣きをみることが続く。

 

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