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日本計量新報 2016年9月4日 (3117号)

指定定期検査機関と問題が多い指定管理者制度を重ねて考える

ハカリの定期検査を実施するその主体ということで責任を負う者は都道府県と特定市である。計量法は指定定期検査機関制度をつくって法人格を持つ者を指定してハカリの定期検査を実施させることができるようなしくみにしている。計量協会や民間の企業の共同体などが指定を受けてハカリの定期検査をすることが多くなった。このしくみでも定期検査の実施の主体は都道府県と特定市にあり責任はここに属する。

 この計量法の指定定期検査機関制度の運営の安定を巡っては、危惧されることがいくつかある。定期検査の手数料は実務に対して極度に小さいために手数料に依拠して経費を計算できない構造になっている。ハカリの定期検査手数料は1967(昭和42)年までは無料であった。それを有料にしたのも条例で決める手数料はさまざまな事情と要因があって実際の検査費用と同一にすることは実際にはできない。検査費用と同じにすると定期検査の受検が減ずる。歴史の経緯と定期検査の実際がここにはからむ。

 国が骨格を定めて行政運営の方式の変換の一形式として制度が採用された計量法の指定定期検査機関制度はこの運営費の手当を地方公共団体が放棄かあるいはそれに近いことをしたときに崩れ去る。実際に地方公共団体の関係当事者はこの運営費の確保への意欲が低下している。このために指定を受けた計量協会などはこの事業に欠損を出すようになった。責任ある立場の者がその責任を自覚できなくなっている。

 計量法の指定定期検査機関制度と国の行政の在り方の方向と連動する地方公共団体における指定管理者制度は根を同じにし軌を一にする。議員選挙における得票を確保するための政策はできないことまでも公約することになっていて福祉や公共投資が極大になる。その費用は実際にはない。できないことを投げ捨てるしくみが地方公共団体における指定管理者制度であるという状態にある。

 悲惨な事件に巻き込まれた神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」の運営の実態が衆目のもとにさらされるようになった。この施設は神奈川県立の施設であった。それが指定管理者制度によって「神奈川県議会の議決を経て、社会福祉法人かながわ共同会を指定管理者として指定」されるようになった。指定は期限付きで期限が到来する都度公募されて管理者が指定される。

 社会福祉法人かながわ共同会はさらに下請けのような会社に管理運営をさせる。その会社に勤務する者の状態は正規の神奈川県職員の処遇と比較すると雲泥の差がある。介護の実務をする人々にはフィリピンなどの中年女性などもいる。近隣の中高年女性が勤務しても労働ほかの過酷な状況のために長くはつづかない。かつては正規職員であった人々が指定管理者制度の下での労働条件のきつさを外で口にする。県立であったころとは大きく変わったのだという。

  指定管理者制度にはこのようなことがあるので同じ概念でつくられている計量法の指定定期検査機関制度には同じ要因が内在するから同じことが出現する。経費だけで物事が考えられていて、そこに気高い理念が欠けていればそれが目的とすることが実現されない。計量法の指定定期検査機関制度の運営の現状には問題があり、その将来が危惧される。

 

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