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日本計量新報 2016年4月10日 (3099号)

GEだったからこそ意味があった「選択と集中」

パナソニックもソニーも日立も東芝も赤字に転落したことがある。ソニーはグループ企業のソニー損害保険が1000億円ほどの利益を出すようになり、この先の業績向上が見込まれる。日立は家電部門の低迷から社会インフラに関係した事業を強化して業績を黒字に転換した。ソニーで業績がよかった分野はスマホ向けの画像センサであった。テープレコーダーのソニーが音楽分野に進出するのは類縁であるからわかるが、自動車保険分野への進出とその成功はソニーのブランド力と<RUBY CHAR="招聘","しょうへい">した人材による。GEの金融事業を知っていた経営陣がこの分野に目を付けた。

日本の儲け頭はトヨタであるから自動車産業は順風満帆であったかといえばそうではない。トヨタの子会社になって生き残ったことなどで大きな波風は表面には見えにくかった。オートバイは小規模企業でもつくれたから戦後すぐには数多くの企業があった。これが今はホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの4社になっている。市場と技術の動きにあわせて企業が存立する。日本の計量器産業に従事する企業は、現在ある企業の10倍ではなくそれをはるかに超える。100倍というと大げさになりそうだがそのぐらいはあった。その後の企業数の減少は、小規模事業者が多かったということと技術の進歩、そして寡占の進行が要因だ。

世界一の巨大企業であるゼネラル・エレクトリック(General Electric Company、略称GE)の事業は、航空機エンジン、医療機器、産業用ソフトウェア、各種センサ、鉄道機器、発電および送電機器(火力発電用ガスタービン、モーター、原子力)、水処理機器、化学プロセス、鉱山機械、石油・ガス(油田サービス、天然ガス採掘機器、海洋掘削)、家庭用電化製品(LED照明、スマートメーター)、金融事業(法人向けファイナンス、不動産ファイナンス、各種リース、銀行、信販)などである。さきにあげたパナソニック、ソニー、日立、東芝ほか電機総合メーカーのすべての事業をGEは1社でしているのだるから、不採算部門は順次発生する。

経営者のジャック・ウェルチ(ジョン・フランシス・“ジャック”・ウェルチ・ジュニア John Francis Jack Welch Jr.)氏が、最高経営責任者として1981年から2001年にかけて、ゼネラル・エレクトリック社の経営をして業績を挙げたことから、ジャック・ウェルチ氏が述べた「選択と集中」(selection and concentration)という言葉が、経営上の要諦であるかのように日本の人々の脳にしみこんでいる。

「選択と集中」という言葉が出た背景は上のようなことであるから、その内容とあわせて理解することが大事である。「選択と集中」という言葉が経営にとってすべてとウッカリ鵜呑みにして事業をすると失敗することがある。失敗した企業はその後に世の中に言葉を吐かない、成功した企業は「選択と集中」を実行したからだと言うことができるから、成功事例として広がる。

 ソニーは損害保険という金融事業をGEにまねて取り入れた。ソニーが20151029日に発表した20159月中間連結決算(米国会計基準)は、最終損益が1159億円の黒字であり、前年同期の1091億円の赤字から一気に転換した。中間決算として最終黒字を実現したのは5年ぶりのこと。20163月期の通期決算についても、3年ぶりの最終黒字1400億円(前期は1259億円の赤字)だ。ソニー損害保険利益1000億円がこのほとんどであることをどのように判断したらよいか。

「世界の亀山」と<RUBY CHAR="","うた">ったシャープの液晶事業は象徴的である。液晶製造への投資の集中は成功したかに見えた。しかし後にそれほどの難しい技術を使わなくてもある程度のものができあがり、市場は価格の安い商品することになると、シャープの投資は足かせになった。シャープの経営陣は深い考えをせずにジャック・ウェルチ氏が述べた「選択と集中」を鵜呑みにしたのであろうか。

結果がここに至って社員は「亀山さえなければちゃんとやっていられたのに」という恨みごとを言う。シャープの経営陣の不仲説も<RUBY CHAR="","ささや">かれる。これは東芝も同じである。経営陣は少しの考えの違いはあっても互いに補い合いように行動しなければならない。シャープにはオマケがついていて現在の社長に対して「あんたが社長をしているようでは駄目なんだよ」と社員が影口を聞く。儲けない会社の社長は社員に尊敬されないどころか馬鹿にされる。

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