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日本計量新報 2015年2月22日 (3046号)

普通に仕事に就きその仕事を極めることと平和と幸福

ある男は郵便配達員であった。夜に大学にかよって商学部を卒業してもなお配達業務をつづけていた。局はその男を事務労働に移動させる誘いをしていた。労働組合の活動を活発におこなっていたその男を当局に都合のよいようにするためである。男は誘いにのらずにずっと配達業務をしていた。あえて自ら職を変えることを潔いとしない気持ちがあったからだ。25年が経過したときその男は周囲の推しによって規模の大きな局の長になっていた。
 社会がそうであるから親もそのようになるのであり、学業を積んで成績が優秀である者には医者になれ、弁護士になれと期待し、それに応えることが責務であると思うようになる。医者になるにはどこの大学であっても医学部に入学しなければならない。弁護士は机上の学問であっても法律の内容を知って、試験に合格することが求められる。このどちらも皆が望む資格であり職業であるからその権利としての資格を得ることは容易ではない。親は期待し、それに報いるのが子の務めであるということになる。
 医者になればその勤務態勢は過酷であり、専門の医療知識を習得することは大変であり、資格の上に胡座(あぐら)をかいていては藪医者になる。法律家になるとそこで処理することはほとんどが世のならいに従うことである。決まり切ったことに決まったように対応することが仕事になる。弁護士業務はここにきて金稼ぎの様相を呈している。米国の法人の出資によって設立された法律事務所が、米国流に法律により物事を処理することが盛んにおこなわれている。悪人であってもいくつかの法律を名目にすれば善の人を脅し、陥れることができてしまう。その法律事務所に勤務する弁護士は日本の試験に通って資格を得た者たちであるがその業務のすべてが米国流になっている。ある側の者が法律を利用して物事の利益を得るというしくみがここには貫徹する。
 計量計測関係者はその子弟を医者と弁護士にする者が多い。計測は1つの規範であり、規範の遂行を業務としていると律儀さが身につき、それが子どもの学業をよいものにするようだ。世のなかには医者と弁護士がいればよいようにはできていない。病人をつくらないようにし、病人がでればそれを診て治すのが医者の務めだ。法の理想は世に争いごとが起こらない状態である。争いがあることが自分の稼ぎだと思うようになっている弁護士と法曹の世界をなげく。
 普通に生活をして、普通に学校に行って、普通に仕事に就く、というのが普通の人の人生である。普通に就いた仕事はこの世のなかで誰かがなすべき事柄であり、それに打ち込むと思いを超えた喜びをもたらす。世の人に割り振られた仕事はどれ1つとして無意味であることはない。世間と親が与えた希望と観念による仕事は医者と弁護士しかないのであるが、石の上にも3年でその仕事に打ち込んでいると面白みが湧く。医者は西洋のいつの時代かは理髪業が兼務していた。米国流のビジネスライクな法律事務所が急速に増えているいま、その言葉が実感をともなってくる。
 どのような仕事にも意味があり、そこで働く人がその仕事に打ち込んでいて、それが喜びになっている状態の広がりは平和と幸福があることだ。

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