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日本計量新報 2014年4月27日 (3008号)

数字を使って計量のように見せるまやかしを見抜け

よくわからない言葉がテレビからいくつも飛び出してきていて、わからないいくつもの言葉が日本の人々の思考にはいりこむ。「レジーム」という言葉のあたまに戦後をつけて、戦後レジーム(レジューム)といっている。どのような概念でこれが語られているかはっきりしないのであるが、メディアはこの言葉を解説なしでそのまま使う。安倍晋三首相は短い時間ですべてのことを語り尽くそうとするのか早口であり、そして「戦後レジームからの脱却」という言葉を繰り返す。アメリカと一緒になって戦闘も戦争もすることがその言葉の中身であるらしい。レジームとは体制の意味をもつフランス語である。
 シジミを煮詰めて凝縮した成分、何とかというカタカナ言葉なのか化学記号なのかわからない成分を摂取すると人は健康になると、笑顔でほほえまれるとそうなのだろうと思わされる。元気になった、膝の痛みがなくなった、と丸薬のようなものを飲まれると、自分も飲んでみたくなる。こうしたことがテレビやラジオや新聞媒体などで繰り返される。そうした養分を含んだ副食物はサプリメントと呼ばれている。ビタミンCがレモン100個分といった表現が補助食品などに使われる。計ればそのような内容になっているのだろう。人はレモン100個分の補助食品を飲むことにどれほどの意味があるか。そのようなことを言うとビタミンやいろんな健康栄養素を含んでいる、とたたみかけてくる補助食品もある。筋肉増強などの健康器具はアメリカの文化の引き写しのように日本にはいってきた。「健康」補助食品も似ている。それぞれに日本には同じような考え方があり、生活に馴染んでいる似たようなものがある。
 成分の内容をレモン100個分のビタミンCなどと数字で表現されるとそこには計量が介在するので、計量の世界に身を置く者としてはギョッとする。物事を数字を使って表現することは計量であるが、ある目的をもってそれを実現するという計量と、ただ単にレモン100個分のそれという表現をまぜこぜにするところに、まやかしがにおう。人はレモン100個分のビタミンCを毎日摂らなくてよいのだ。普通に生活してる日本人は食事を通じて、人に必要な栄養分を摂ることができているというのがこの道に通じた医者の言葉である。
 部分と全体を混同するのは間違いである。部分の論理を累々と組み立てるとそれが全体であるような錯覚に陥る。安倍首相がいう「戦後レジームからの脱却」という言葉の背景にある内容のことを考えると、この言葉に単純に賛成することに躊躇(ちゅうちょ)する。サプリメントとか健康補助食品と言っているそれらは普通の食生活をしていれば摂れているのだから、部分の論理に振り回されていることに気づかなくてはならない。整合のとれた論理に含まれる不合理や非論理を感得する理性が求められる。

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