計量新報記事計量計測データバンク会社概要出版図書案内
2013年2月  3日(2951号)  10日(2952号)  17日(2953号)  24日(2954号)
社説TOP

日本計量新報 2013年2月10日 (2952号)

技術、商品、商売、産業など新しいことを考えだそう

トヨタ、ニッサン、ホンダ、ソニー、パナソニック、キヤノンといった日本ブランドは工業製品を世界に輸出し、世界を相手に稼ぐ産業である。それは大量生産であり、規格品でもある。日本の基幹をなすのはこれら規格型大量生産の工業である。第2次産業の比率が下がり第3次産業の割合が最上位になるのは経済先進国の一般則である。規格型大量生産方式は海外に工場を移しておこなわれており、ある計量器産業企業では全従業員の半分が中国工場で働いており、その数は千人を超える。
 日本の基幹をなす工業生産の分野は自動車、家電などが中心になっていてこの構造は変わっていない。大手家電業界の経営不振はテレビ事業が韓国や中国などの競争相手に負けているからであり、不振から脱するには次の新しい家電需要をつくって、競争に勝つことが必要である。1950年代に3種の神器といわれた白黒テレビ、冷蔵庫、洗濯機は、60年代になるとカラーテレビ、クーラー、自動車の「3C」に移って、これを備えることが幸福であり、このために懸命に働いてきたのが日本人と日本社会の状態であった。
 日本のアニメ文化、漫画文化がスマート・カルチャーということで輸出産業になっていることがもてはやされている。街頭テレビで見たポパイと同じことを、日本が外国向けにやっているだけのことだ。政府はこれを支援する態勢をとっているが、その支援の規模は体裁といえる。官僚主導により規格型大量生産方式の工業支援の体制に変わりはなく、新産業を少しならべて彩りを添えてはいても実効があがった試しはない。米国副大統領ゴア氏の情報スーパーハイウエイ構想になぞらえた経済産業省のそれはどのような成果をあげたか。サンシャイン計画、ムーンライト計画は打ち出されたときの華やかさはいいとしても、その結果が聞こえてこない。巨大コンピュータの開発も同じである。
 日本では人口減少が進行する。労働人口も減る。消費がこれにともなって減り、GDPの半分以上になる消費が拡大しないから、GDPを増やすことはできそうにない。賃金コストの安いアジア諸国に工場を移して生産すると、日本国内の賃金がそれに引っ張られる。解釈や分析といった順序づけの作業(左脳の仕事)を強化するために日本の学校教育がつくられてきた。状況判断、感情表現、総合処理といった作業(右脳の仕事)の分野は実際にはおきざりにされている。日本の教育は知識偏重とされているが、現在の学習指導要領では数学が必修科目から外されて選択必修科目になっている。高校進学率が9割5分というほとんどの人が高校進学する状況に、教育が水準を下げて対応しているのである。『ハイコンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代』(大前研一訳)の著者ダニエル・ピンクは、「外国人が左脳の仕事を安くできるのなら、われわれアメリカ人は右脳の仕事をもっと巧みにやろう」と説く。中国に千人以上が働く工場を稼働させる日本の企業の日本人を中心としたスタッフの仕事は、ダニエル・ピンクが述べていることそのままである。ここでの問題は日本の教育が左脳の機能を強化することに偏ってなされていることだ。

※日本計量新報の購読、見本誌の請求はこちら


記事目次社説TOP
HOME
Copyright (C)2006 株式会社日本計量新報社. All rights reserved.