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日本計量新報 2012年11月18日 (2942号)

計量法に見えてしまう人々と別の世界の存在

計量法がつくる世界が計量の世界であり、計量法の世界が計量の世界のすべてだと思っている人は少なくない。その人が考えること、その人に意識されることのすべてに計量法がかかわっていて、すべてを計量法の枠のなかで考えているからである。計量法の世界は私の世界であり、計量法は私の全てであると考えている国家資格者の「計量士」は多い。この人は計量法の世界で仕事をしているから思考はそのように働く。
 モノをつくる分野の技術にかかわっていてそのうちの技術要素として計測技術をとらえている人の目には、計量法は別の姿をしており対応も異なる。日本という国は世界の国々に先駆けて世界の国々がつくれないモノをつくって生きていく国のようである。そうした分野は衣食住という区分のどこかに属することになり、衣食住関連のモノを生産してサービスを提供することになる。人は衣をつくり、食をつくり、住いをつくって、これらが充足する状態が望ましい。
 エンゲル係数という概念があって、人は時代を経るごとに食に割く支出の割合を減らして、娯楽などへに振り分けをするようであるから、娯楽要素あるいはサービス要素の支出増加にともなう産業がにぎわうことになる。実際には衣食住のいろんな分野にギクシャクとした状況が出現してるので物事を単純に語ることはできないが、総合的にみると日本は世界のモノの生産工場でありつづけることが、繁栄のための礎であるように思われる。他国の人々にはつくれない高機能商品などがそれであり、この先しばらくのあいだはそうした製品をつくることが日本人の仕事でありつづける。
 映りのよいテレビ、音が静かで無人でゴミを集める掃除機、微妙に温度調整をする快適な空調機器、嘘をつかない確かで精密な計測機器などが日本人がつくるべき商品である。自動車産業は世界の覇者であるように思われるが、安い費用で高機能を備えた軽自動車という規格とその概念は世界の自動車の基準になる要素十分である。そうした機器を機能性商品ととらえ、その機能性を実現するための生産要素とそのための基礎的技術としての計測技術がみえてくる。
 その視点でみると計量法の世界はどこまでも脇におかれてこれを基礎で支える社会的な仕組みになる。こうした仕組みが社会基盤であるので、計量法はこれを運用する計量制度と連結して社会基盤として機能する。計量法が計量の世界の全てに見えてしまう人々とは違う世界のほうが広く存在する。

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