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日本計量新報 2012年10月14日 (2937号)

医療機器は計測機器であり隠れた成長分野

2012年9月1日現在、日本の総人口(概算値)は1億2752万人(前年同月より25万人減)である(2012年9月20日総務省統計局発表)。2011年2月21日に国交省の国土審議会長期展望委員会が発表した「国土の長期展望」では、日本の総人口は2004年をピークに、今後100年間で100年前(明治時代後半)の水準に戻っていく可能性があり、この変化は千年単位でみても類を見ない、極めて急激な減少であると指摘している。これによると2050年には日本の総人口は3千万人も減少、高齢化そして極めて急激な人口減少社会を迎える。
 国の経営をするための収支の勘定はどこの国も支出が増大し、国の借金が大きく膨らんで財政の危機にある。EU加盟国の国家財政危機の頻発はあたかも日本国のことのように人々の目に映ったために民主党野田政権の消費税増税案が国会を通過した。現在の消費税5%が8%を経過して10%になる。増税分は福祉予算に組み入れられることになっているが、医療、年金など重要財源を人口が減少する状況下で5%の消費税増税でだけで補うことができれば幸いであるが、恐らくその他の財政措置をしない限り、やがては行き詰まることになることが、これまでの消費税増税の経緯から明らかだ。
 それにしても国とその職員が設計した医療、年金など福祉を含めた国家財政計画は歴史の試練に耐えられなかった。これはどこの国も同じで、現在の状況が未来につながって永続的に動くと推察することがなされてきたからである。増え続ける人口のもと、次世代が支える形で運営されてきた年金の在り方が破綻している状況を立て直すには構造を変えなくてはならないが、これがなされていない以上は少しばかりの消費税増税によっては不足を補うことができない。
 生産性を上げれば増えない人口の状態でも一人あたりの収入の増加をもたらすことができる。日本の特徴は自動車、家電など製造業にあるから、この方面の生産性は向上可能であるとしても、経済のなかに占める数量の要素が5割ほどになっているサービス業の生産性向上が個人収入の増大に結び付くかどうかは判然としない。人は食糧を得るに多くの労働を費やしてきた。それが何とか足りると別のことに支出を増やすようになった。サービス産業はそのような経緯で経済に占める規模を増やしてきており、今後とも増えていくことになる。
 食べることに精一杯の時代にはペニシリンを買うことができなかった。今は医療を受けるのが当たり前になっているが、医療政策の運営の仕方によってはこれが怪しくなる。医療を受けなくて済むような健康な身体をつくることが改めて重要になっていて、生活習慣病にならないための健康管理の推進が求められる。病気の診断は人の身体を調べ、身体の状態をはかったりすることでなされるが、このために使われる機器のすべてが計測機器であると思ってもよい。医療機器はすなわち計測機器であり、この分野の計測機器の需要は大きく拡大してきた。この分野はこれまで計測機器という言葉が使われていなかったために気づきにくいが、紛れもなく計測器の隠れた成長分野である。

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