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日本計量新報 2011年1月30日 (2855号)

GDPは豊かさのモノサシではない

モノを作る機械がある。その機械をつくるための機械もある。知恵やノウハウを生かした技術がある。モノづくりを支える総合的な知恵や技術やノウハウがあることは、すごいことだ。
 それらは、どこに存在するのか。その一端を担っているのが、品質管理や計量管理である。品質管理の確実な実施に大きな役割を果たす品質工学(Quality Engineering)は、田口玄一氏が統計学を利用した品質管理手法を確立して、道を拓いた。タグチメソッドによって内容を発展させた「エンジニアリング(工学技術)」が品質工学である、と説明すると、品質工学理論の中心にいる人は首を傾げるかもしれないが、多くの成功事例を知ると、品質工学は大いに役に立つエンジニアリングであることがわかる。

 品質工学という役に立つ技術は、目立ちはしないが静かに普及している。 品質工学の理念や理論をもとに、計測機器というハードウエアを用いてモノをつくり出す。
 品質管理を徹底すると、壊れない製品が増える。壊れない製品が増えていくことで、国内総生産(GDP)に含まれる修理費用が削減される。
 自動車を例にした場合、走っては壊れ、壊れては修理し、車検で修理と点検をしているうちにかかる費用は、その自動車が廃棄されるまでのあいだには、自動車の購入価格と同等か、それ以上になる。この間に納付するガソリン税、自動車税、重量税も少額ではない。
 壊れない自動車あるいは燃費の良いエンジンをつくれば、自動車にかかる費用はかなり削減される。そうすると自動車産業のGDPに占める割合は、現在の半分程になると予想される。


 GDP(国内総生産)とは、国内で、1年間に新しく生みだされた生産物やサービスの金額の総和であり、その国の経済活動の水準を表すのによく用いられる。経済成長率は、GDPが1年間でどのくらい伸びたか表すものである。伸び率が注目され、それによって国の豊かさがはかられがちであるが、GDP=豊かさと判断するのは間違いである。
 機械をつくるのには、品質工学ほかのエンジニアリングやテクノロジーが役立つ。品質が向上してもGDP値は大きくはならないが、暮らしやすさといった実質上の豊かさは向上する。

 GDPという経済のモノサシが、豊かさのモノサシにはならない事実を認識し、真の豊かさ−すなわち、品質の向上を目指していくべきである。

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