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日本計量新報 2010年2月14日 (2809号)

計量制度は重要な社会基盤である

どこかで見たことがあるアナウンサーだと思ったら、以前NHK地方局にいた人が東京でNHK総合の番組に出ていたり、その逆だったりすることがあって、意外な思いや懐かしさを覚えることがある。
 NHKの地方局は県庁などに隣接していて、その周辺には地方紙のほかに読売、朝日、毎日などの新聞社支局が軒を連ねていることが多い。県庁の周辺には、中央の役所の地方局、警察署、裁判所なども集まっている。計量行政機関も県庁の中やその周辺にあり、特定市の部署もそこから遠くない場所にある。そのように見ていくと、日本は地方の集合体ではなく、「中央とその周辺」という構造であることがわかる。
 マスコミの中でもNHKか新聞社など公共性の高いメディアを「報道機関」と呼ぶならわしがある。そうした「報道機関」の行動が、政府行政機関が発する情報の拡声機能になっている事実をみると、「報道機関」とはよく言ったものであると妙な納得をすることになる。

現在大々的に報じられている、鳩山由紀夫首相の政治資金の取り扱いや、小沢一郎民主党幹事長の政治資金疑惑に関係した報道は、「警察に取材した」と称して、警察発表をほとんどそのまま拡声しているように見える。ことの真偽以上にその報道の在り方に疑問を覚える。
 政治の中枢にいる者の不正を追及して、警察と裁判所が動く大騒動となる事件は、対立する政党や政治団体による告発が発端となるものが多い、というのはよく聞く話である。こんなことばかりしていては、日本の経済運営に支障が生じないかと大いに心配になる。
 鳩山由紀夫首相と小沢一郎民主党幹事長の政治資金の動きに疑念なしとする者はほとんどいないと思うが、国を動かす中枢の人物の足を引っ張る動きばかりが絶えず出てくる今の日本の在り方は、望ましいとは思えない。

 現在開会中の通常国会では、経済政策や税制の論議はそっちのけで政府与党の民主党と鳩山由紀夫首相の政治資金のあら探しに終始することになり、他にも報道することがあるにもかかわらず、テレビニュースなどはこれ1本の報道に終始する。結果として、与党と政府の支持率は低下する。
 テレビニュースのインタビューは報道の意に沿った発言だけを拾って更に一部の者を悪者にしてしまう。ニュース番組は短時間であるから日本のテレビ報道が取り上げる内容はほとんど1本になり、悪い立場にいる者を徹底的に追い込む。その論調に国民がみな染まってしまう。報道にまともに影響を受けるのではなく、その論調のもとがどこから発するかということを冷静にみて判断することの大事さを指摘したい。

 経済や政治、文化、教育等が総合して国民生活の基盤となり、日本を形成していることをいつでも念頭に置いておきたい。マスコミが中央機関の流すごく一部の情報にとらわれ、政治と経済、そして国民生活の基本となる事柄をほとんど考えないのは、この国の行く先を誤る大きな要因になる。

 計量計測の確かな制度とその運営、そして計量計測の技術の発展は、科学の振興の基礎となる。そうしたことの全体のつながりによって経済が機能し、文化が発展して国民生活が豊かになる。
 明治政府は、近代日本を築き上げるために計量制度が社会の基盤となると判断して、大きな費用を用意し、最高の学問の府からこの方面に人を配備した。目先の人気取りを優先する政治や行政の現状と対比させて、重要なインフラである計量制度と、関連する技術の発展の重要性を強調する。

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