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日本計量新報 2009年9月20日 (2790号)

パソコンを間にしたこちら側と向こう側の世界を理解する

営業に人を配置しないで事業をうまく回しているビジネスがある。
 人に商品を見せ、人に商品を説明し、その感触さえも伝える場面としてインターネットの世界が登場し、自動車、家電その他多くの商品がここで売買されるようになった。楽天市場、ヤフーショッピングといった大規模ショッピングモールには多くのテナントが出店し、ヤフーオークションは個人売買のための店舗として賑わっている。
 ITという言葉がある。これは英語の Information Technology の和訳であり「情報技術」と和訳されるが、一般にはITとは、コンピュータやデータ通信に関する技術を総称する語として使われている。情報技術(IT)の構成要素として、計算機科学、情報学、情報工学、コンピュータ・情報システム・情報システム監査、コンピュータネットワーク、インターネット、World Wide Web、Web 2・0、コンピュータセキュリティ、暗号理論、情報セキュリティがある。
 情報社会の現状を理解するために、「パソコンのこちら側の世界」と「パソコンの向こう側の世界」に区分けするとよい。パソコンの向こう側の世界はインターネットの世界のことである。World Wide Webとは、web(ウェブ)のことで普通の人が考えるインターネットの世界のことであり、曲げていえばホームページの世界ということもできる。グーグルやヤフーなどの検索サービスも向こう側の世界である。一方、こちら側の世界の代表は、コンピュータソフトウエアのマイクロソフト。パソコンの基本ソフトやアプリケーションソフトをつくることで発展してきた。同じこちら側のパソコンのハードウエア製造企業の巨人であったIBMは、パソコン製造のビジネスを中国企業に売却していて、主事業は経営支援サービスに移っている。
 09年7月、米国のインターネット検索市場での検索サービスの占有率は、グーグルが64・7%。検索事業などでの提携を決めたマイクロソフトとヤフー連合の合計占有率が28・2%で、前月比0・2ポイント増加した。これはマイクロソフトが6月に投入した地域情報や旅行、健康などの分野別検索を迅速に行える新検索サイト「Bing(ビング)」が有効に働いた結果で、マイクロソフト単体でのシェアは0・8ポイント増の8・9%と堅調な伸びを示したのに対してヤフーは0・3ポイント減の19・3%だった。ITの巨人マイクロソフトは、グーグルの事業をあなどって観察していたが、パソコンのこちら側よりもパソコンの向こう側の世界の無限性に気づいてからはグーグルやヤフーの事業世界に力をいれるようになった。
 マイクロソフトをハーバード大学在学中のビル・ゲイツが設立したのは、1975年4月4日である。Yahoo!(ヤフー)は、1994年、スタンフォード大学のデビッド・ファイロとジェリー・ヤンによる検索サービス「ウェブディレクトリ」として始められた。1995年3月、アメリカ合衆国カリフォルニア州にYahoo!を共同設立し、会社法人として事業を開始した。グーグルは、スタンフォード大学で博士課程に在籍していたラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンが創業した。1996年1月、Googleの原型となるバックリンクを分析する検索エンジンBackRub(バックラブ)を開発。1998年9月7日、カリフォルニア州メンロパークにある友人のアパートでスタートした。
 マイクロソフト(CEOスティーブ・バルマー)の売上高は、6兆7189億3200万円(2008年)、総資産7兆8695億1400万円(2008年)。グーグル(CEOエリック・シュミット)の売上高は218億ドル(1兆9860億円)(2008年)である。マイクロソフトの営業利益240億ドル(28%増)、純利益180億ドル(26%増)に対して、グーグルの営業利益66億ドル(30%増)、純利益42億ドル(1%増)。年を追うごとにグーグルがマイクロソフトの売り上げに迫っている。
「パソコンのこちら側の世界」と「パソコンの向こう側の世界」でそれぞれ仕事をするとしても、パソコンのハードウエアをつくったり基本ソフトをつくる仕事は、普通の企業では対象になりにくいし、インターネットの世界で大規模なポータルサイトをつくってシェアを獲得することも、普通の企業にはドン・キホーテの行動と同じになる。
 普通の企業の場合には、それぞれのビジネス分野での商品や関連技術などで専門のポータルサイト機能を獲得することである。そのためには自己の知識と技術情報と知恵を総結集した知識サイトを形成することが求められる。商品を買おうとする人は、その商品とそれに関係する技術などが説明されているホームページを作成・運営している企業に信頼を置くことになる。
 計量、計測、ハカリ、質量計、温度計、比重計などそれぞれの用語で検索順位が上位にある企業などのホームページは、それぞれの用語のポータルサイトといってよい。こうした小さな専門分野のポータルサイトになるべく努力したものが報われる。

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