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日本計量新報 2008年7月20日 (2733号)

計量行政が死んでしまうのでこれ以上計量行政の削減をしてはならない

地方の計量協会から販売事業系統の会員の離脱が相次いでおり、首都圏のある協会の会員数は120名にまで低下している。協会の収入にハカリの検査事業などをほとんど含まないこの組織は、200万円ほどの事務局の人件費を捻出して運営することになっている。協会構成員は計量士、適正計量管理事業者、環境計測関係の証明事業者、質量の計量証明事業者、計量器製造事業者、その他の関係事業者でこれらをあわせて120名の会員である。計量法による計量器販売事業者への拘束が実際にはなくなった現状では、協会活動に直接参加する人は1名か2名という状態である。販売系の会員が協会の活動に直接的には参加しないからといって、有名無実で意味のない会員だということはできない。
 販売系の会員はこれまでハカリなどを販売する金物店、体温計や血圧計を販売する薬局などの会員が多くいて、計量協会の活動に総じて好意的であるのが普通であった。東北地方のある県の場合は、このような販売系の会員の年会費と協会からの通信費が同等か通信費の方が上回っているので、会員へのサービス事業は正確計量の意識を啓発する情報活動であったということができる。東北地方など幾つかの地域の計量協会では、こうした販売系の会員が今なお多く残っているものの、この先々まで会員数を維持することは困難だ。
 計量協会の事業目的として「計量思想の普及啓発」が掲げられているのはよいとして、計量のことが大して好きでない会員や、計量のことをほとんど知らない会員が役員となって運営しているという状況が増すにつれて、組織の事業意識は低下し、会員を集結する組織力も衰える。
 地方公共団体の計量行政機関と計量協会は「計量思想の普及啓発」を共通目的として一体不可分の関係で活動してきた。計量行政機関が行政目的を達成するために計量協会に協力を求め、そのために組織への支援もしてきていたのである。
 現在の計量行政機関は適正な計量の実施確保への意識が著しく低下してしまっている。その背景には財政の困難と、計量行政を担当する人員を真っ当に確保し教育していないことがある。計量協会と手を携えて住民の計量の安全を確保すべき地方の計量行政機関の多くが計量への志(こころざし)を失いかけているので、これと連携する計量協会の存在もまた宙に浮きかけている。
 計量行政にはそこそこのお金がかかるものであり、そのそこそこのお金によって住民の計量の安全と計量への信頼を確保することができ、生活と経済活動が成り立っていることを理解しなくてはならない。直接的な福祉活動などの新しい行政組織がふくらんだことで行政組織が大きくなりすぎ、その費用をまかなえなくなったために、社会の根幹かつ基礎である計量の安全と信頼を確保するための計量行政費用を根こそぎ削ってしまうという改革のやり方は、角を矯めて牛を殺すようなものであり、禍根を残すことになる。ここで一線を引いてこれ以上の計量行政の削減にストップをかけなくてはならない。


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