SIを紹介する最も権威ある文書
「SI国際文書第7版」日本語版が完成

               

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 計量研究所計測システム部長 櫻井 慧雄(2000年1月1日現在)

 

 国際単位系(SI)に関する基本文書である「国際文書SI第七版」の日本語版が完成した。「国際文書SI第七版」の原書は一九九八年、国際度量衡局(BIPM)から出版された。本文書は、SIに関して国際度量衡総会(CGPM)や同委員会(CIPM)での決議、勧告、声明などを中心に、SIを理解し利用するために必要な情報を集めた基礎資料としての国際文書であり「国際単位系(SI)を紹介する最も権威のある文書」(テリー・J・クインBIPM局長)である。本稿執筆者の櫻井慧雄計量研究所計測システム部長は、日本語版の作成に当たった計量研究所「国際単位系(SI)日本語版」刊行委員会委員長である。(編集部)
 


国際単位系(SI)第7版の日本語版刊行される

 この度、工業技術院計量研究所が訳と監修を行った国際単位系(SI)第7版が日本規格協会から刊行されました。この本は、国際度量衡局(BIPM)が1998年に発行した仏語及び英語の文書“Le Systme international d'units (The International System of Units) 7 dition”の日本語版です。国際単位系(SI)に関して国際度量衡総会(CGPM)及び同委員会(CIPM)が行った決議、勧告、声明などを中心に、SIを理解し利用するために必要な情報を集めたものです。  皆さんがよくご存じのように、「国際単位系(SI)」は、7つのSI基本単位、それをもとにして組立てたSI組立単位、さらにそれらの10進の倍量と分量を表すSI接頭語の組み合わせで作られた一貫性のある単位系です。

表1 SI基本単位


 この単位系は決して「固定」されたものではなく、時代の流れ、技術の進歩、人々の生活・関心に合わせる形で「進化」しています。そのため、国際度量衡総会においてSIの採用が決議されて以来、数年から10年ごとにSIの内容が少しずつ改訂されてきました。SIは単に科学や技術にとどまらず、政治、経済、社会において広く国際的に活用されていますし、今後も益々その範囲が拡大して行くものと考えられます。したがって、計量研究所のSI第7版日本語版刊行委員会では、「グローバル化社会の共通ルール」を副題として添えました。大まかに言うと、本書は本文、付録1,付録2の3つの部分から構成されています。

表2 基本単位を用いて表されるSI組立単位の例 表3 固有の名称とその独自の記号で表されるSI組立単位 表4 単位の中に固有の名称とその独自の記号を含むSI組立単位の例

 第6版から第7版への変更点のいくつかを挙げてみます。まず本文では、平面角「ラジアン(rad)」や立体角「ステラジアン(sr)」が次元1の組立単位とされ分類がすっきりしたこと、人の健康保護のために認められている固有の名称を持つ組立単位が今まで別扱いだったのがメインの表である表3にまとめられたこと、などがあります。後者などは健康保護のための単位が、環境問題などと関連して注目されていることを反映している証しと考えられます。表3には、最近放射線の事故でテレビや新聞紙上でよく見かけるようになった線量当量の単位「シーベルト(Sv)」も含まれています。また表6には、強度や振幅の増減を対数の比で表わしたネーパ(Np)とベル(B)が導入されました。ネーパは底が自然対数、ベルは底が10の対数比です。特にベルは10分の1を表す接頭語デシ(d)を伴ってデシベルとして使われることが多いようです。

表6 国際単位系と併用されるが、国際単位系に属さない単位


 第6版で13あったカテゴリー毎に分類した単位や接頭語の表は平面角・立体角、健康保護関連の単位などの取扱変更のために第7版では表が10になるとともに、それらの表には見直しが加えられています。一般に、世の中で使われる単位を完全にSIだけに限定することはきわめて困難です。その理由は単位というものは社会や生活に密着しているため、理論的にきれいな体系をもつSIの理念だけでは割り切れないためと考えられます。この辺の苦悩とある種の妥協をこれらの表から読みとることも、本書を眺める大変興味深い視点かもしれません。  付録1には、国際度量衡委員会などの決議、勧告、声明などが収められており、現在の国際単位系が築き上げられるまでの歴史をひもとくこともできます。その際、第6版までは、すべての項目を時系列で配置していたのを、今回から、量ごとにまとめてから時系列で整理することにより読者の便を図っています。  付録2には、主要な単位の定義の現示方法として、例えば、長さ1mを現示するレーザーの正確な波長の値が表になって載せられています。今回の第7版では、最新の成果を大幅に取り入れて大改訂された部分です。他に、時間、質量、温度、電気量、物質量、測光量など、できる限り正確に測定したい方々には、高精度測定の概要を知るよい手がかりになると思います。

表7 国際単位系と併用され、これに属さない単位で、SI単位で表される数値が実験的に得られるもの(定義の説明は省略) 表8 国際単位系に属さないが、国際単位系と併用されるその他の単位 


 国際単位系(SI)第7版の原書のドラフト作成と編集は、英国レディング大学のI・M・ミルズ教授を委員長とするメートル条約傘下・単位諮問委員会が行いました。教授の編集方針は、『読者に親切で理解しやすいこと』でした。したがって、第6版に比べ第7版の構成は分かりやすいように大幅に変更され、注釈なども大幅に充実されております。さらに、計量研究所の刊行委員会は教授の方針を受け継ぎ、日本語版には親切な訳注も付けました。  終わりにインターネットでご覧になれる方へのお知らせです。次のURLは国際度量衡局(BIPM)のホームページに繋がります。仏語、英語の原書がご覧になれます。
○ホームページアドレス http://www.bipm.fr/enus/6_Publications/si/si−brochure.html
○第7版日本語版は税込み1260円です。 (おわり)

目 次

◇序章=▽沿革▽SI単位の二つの階級▽SI接頭語▽量の体系▽一般相対性理論の枠組みでのSI単位▽単位に対する法則◇SI単位=▽SI基本単位▽定義▽基本単位の記号▽SI組立単位▽基本単位を用いて表されるSI組立単位▽固有の名称及びそれらに与えられた独自の記号をもつ単位、並びにそれらと結合して作られる単位▽無次元量の単位、次元が1である量◇SI単位の10進の倍量及び分量=▽SI接頭語▽キログラム◇SIに属さない単位=▽SIと併用される単位▽SIに属さないその他の単位◇SI単位の名称及び記号の表記に関する規則=▽一般原則▽SI単位の記号▽SI単位の代数的な表記法▽SI接頭語の使用規則◇付録1=国際度量衡総会及び国際度量衡委員会の諸決定◇付録2=主要な単位の定義の現示方法

国際単位系(SI)表紙

 


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